39話・あなたは王子さまなの?
「懐かしいわ。何もかも変わっていない」
「あの日が昨日のことのように思い出されます」
「そうね。初めてあなた方と会って、わたくし興奮したものよ」
チムと話をしていた陛下は、私が起きたことに気が付いたようだ。話を止めて影のように従う公爵を連れて側にやってきた。その姿を見て思った。誕生祭で陛下の護衛官であるカルロッタらが離れて大丈夫なのか? と、ノアールに聞いた時に、最強の護衛がやってくるから大丈夫と言っていた。
その最強の護衛とは、アイオライト公爵のことだったらしい。確かに竜人の王である公爵相手ならば、不穏な者は誰一人陛下に近づけなさそうだ。
「気が付いたのね?」
「陛下」
「驚かせてしまったみたいね。ごめんなさい」
「と、とんでもありません。私が勝手に倒れた次第で……」
私の前で陛下が頭を下げて来たので驚いた。
「娘。そんなことで驚いていたら体がもたないぞ」
「ノク。そういう言い方は良くない。サーラ嬢は何も知らなかったのだから驚くのは当然よ」
アイオライト公爵の指摘はもっともだった。クリュサオルであるノアールの助手をしていく上で、これからも色々な真実と向き合うことになるだろう。その度に倒れていては仕事にならないと忠告されたように感じた。
視線は鋭かったが、そこに悪意のようなものは感じられなかった。陛下は執り成してくれたが、公爵には「ご忠告痛み入ります」と、言えば、頷かれた。やはり忠告だったようだ。
「そなたは人魚と、竜人の血を引く。いつの日かそのことでけりをつけなくてはならないことがあるだろう。しっかり生きよ」
「はい」
アイオライト公爵は、私を一目見ただけで人魚と竜人の間に生まれた子だと分かったようだ。もしかしたらアコダ達から何か報告が上がっていたかも知れないが、リョクショウをヤモリだと見て取ったように、私のことも見ただけで察したのかも知れなかった。
私は皆が揃ったところで、ノアールに聞いた。
「さっきの話だけど……、あなたは王子さまだったの?」
「王子ではないが、あのふたりの息子だ」
ノアールは、陛下と公爵を見て言った。女王陛下は表向きには独身とされている。そうなると未婚でノアールを産み、彼を認知していないことになる? でも、アイオライト公爵ならば、陛下の配偶者となっても問題はなさそうなのに、どうして二人は婚姻していないのだろう?
「私はアイオライト公爵の息子として、認知はされている」
私の疑問が伝わったかのように、ノアールが答えた。それについてはロージイが教えてくれた。
「坊ちゃんは、生まれた時が特殊でしたからな」
「……?」
「卵で産まれたのじゃ。その生まれた卵を青金さまは孵された」
「じゃあ、ノアールさんはアイオライト公爵さまに育てられた?」
「その通りじゃ。しかし、青金さまにとって初めてのお子。卵から孵ったのは竜の幼体だった為、養育に手を焼いていてのう、見るに見かねてわしらが協力を申し出たのじゃ」
「ロージイ達は、私にとって半分育ての親みたいなものだ」
ノアールがロージイ達に気を許しているのは、幼い頃に彼らに育てられたことが理由だったようだ。彼らがノアールを「坊ちゃん」と、呼んで、実の子のように気にかけているのにも納得した。ノアールは育児放棄されていたのではなく、手がかかって仕方なく、ロージイ達が協力していたらしい。そこで疑問が湧いた。




