25話・外から入れないのならば、中から誰かが招いた可能性は?
「伯父さんは、妖精事情に詳しいのですね」
「竜人族と妖精界は、隣り合っている世界だからな。人間から見れば、隣国の感じだ」
人間界で言うなら、隣同士の国ってことらしい。
「それにしてもおかしなことばかりだ。ノースデン山には、青金さまの結界が張られているというのに、どうやって石工達は山に入り込んだ?」
青金さまの許しがなければ、誰も入れないはずなのに。と、アコダは唸る。
「結界? 私達は入れましたよね?」
「ノアールがまじないをしてくれただろう? あれのおかげで俺たちは何ともなかったんだ」
「おまじない?」
言われてみれば、ノアールは山に入る前に、指で皆の額に触れていた。何だろうと思ったら、アコダが「おまじないのようなものだ」と、言ったのを覚えている。
「あの、指で額に触れた?」
「そうそう。それだよ。ノアールは青金さまに認められた存在だからな。不在の折には託されている」
アコダの話で、ノースデン山には許可がなくては入れない意味が分かった。つまり普段は結界が敷かれてあるので、誰もが中に入ることが出来ないという事なのだろう。そうなるとアコダも言っていたが、謎は残る。石工もそうだけど、あのブルーノも外から来た者のように思える。外からは入れなくても、もしかしたら──?
「伯父さん。中から誰かが呼んだ? いえ、招いた可能性はないですか?」
「招く?」
「ノースデン山が、外から侵入出来ないのは分かりましたが、絶対ではないですよね?」
「ああ。何かのきっかけで穴が開いたりするし、傷がつく場合もある。それを踏まえて山の管理人を置いていたはずだから……?」
山の管理人は、山の中だけではなく侵入者を防ぐ役目もあったようだ。
「サーラは、あのノースデン山に住む者が、外に住む者を招いていると言いたいのか?」
「はい」
アコダと話しているのを聞いていたノアールが、私の言いたいことに気が付いてくれたようだ。
「盲点だったな。ノースデン山に住む者は、外の者と関わり合わないのが当然だと思い込んでいた。さすがはサーラ。私が見込んだ助手だ」
「あくまでも私の憶測でしかないですけど……」
「確かに見る視点を変えてみるのも一理ある」
ノアールに感心したように言われて、恥ずかしくなった。アコダとカルロッタも頷く。
「ただ、そうなるとあの石工さん達が招かれた相手は誰かとなり、一番、怪しそうなのはリョクショウさんですけどね」
彼女にはあまりいい感情を持てないでいる。だから猶更、怪しく思えるのかも知れない。
「あの女は竜胆を食らった女だしな、怪しいのは確かだ」
「竜胆もどうしてあのような者を傍に?」
「ロージイの話では、捨て子を拾ったと言っていたな?」
「竜胆が捨て子を拾って育てることはよくあることよ。成人するまでは面倒を見てあげていたじゃない。竜胆に面倒を見てもらったあの山の子達は、母親と慕っていたわね」
「それが今回は仇になったということか?」
アコダやノアールが不思議がると、カルロッタは、面倒見が良かったからと言っていた。私は竜胆がどんな人かは知らない。それでも山の管理人として皆に頼りにされる存在だったに違いなかった。




