14話・孔雀石
ノアールは、お貴族さまだ。貴族は私達平民とは違い、親でも子供の面倒を直接みようとせずに、使用人に任せることがあると聞いている。私が働いていたボーモン子爵家でも、お嬢さまだったマリアナは乳母のクラリーに育てられていた。実際、あの二人は血の繋がった母娘だったけれど。ノアールは別に育児放棄されていたようではなさそうだ。でも、疑問が湧いた。
「それってお貴族さまは皆、そうなのですか? 親から離されて他人に預けられるの?」
「貴族が皆、そうなのかは分からない。私の場合はそうだったというだけで……」
「そうですか」
ノアールは言いにくそうに答えた。彼は普段から、あまり自分のことを話したがらない。もしかしたら家族仲が宜しくなかったとしたら、余計なことを言ってしまったかもしれない。話題を変えることにした。
「しかし、良く出来た道ですね。緑色の石がとても綺麗」
舗装された石の道で、このような緑色の石の道は初めて見る。敷かれた緑色の石に縞模様らしきものが入っていつ。表面が艶を帯びて居るようにも思えて、立ち止まって見ていると、ノアールが教えてくれた。
「これは、孔雀石と言われているものだ」
「孔雀石?」
「この石は縞模様が特徴的で、それが孔雀と言う鳥の羽の模様に似ていることから、そう呼ばれている」
「孔雀ってどのような鳥なのでしょうね?」
「私は見たことがないが、孔雀は雄が綺麗な飾り羽を持っていて、目玉のような紋がある羽を扇状に広げると、とても鮮やかで美しいらしい」
「雌は?」
「雌は、茶色や灰色の地味な色をしていると聞いた」
「ノアールさんは物知りですよね?」
「子供の頃、鉱石について色々と教えてもらった」
孔雀とはどのような鳥なのだろう? 段々気になってきた。ノアールは見たことがないと言ったが、孔雀石について彼に教えたロージイなら見たことがあるのかも知れない。あのハヤブサを操るくらいだから、もしかしたら孔雀にも乗ったことがある? 今度、ロージイに聞いてみようと思っていると、門扉の前に着いていた。
「やはりここは竜胆の家じゃないか? でも、以前来たときは、もう少し小さい家だった気がする」
「竜胆さまもお変わりないと良いですね。ノアールさまもお会いするのは、久しぶりではないですか?」
周囲を見渡すアコダに、カルロッタが懐かしむように言う。ノアールも中の様子が気になって仕方ないようだ。
「お──い、竜胆! 竜胆いるんだろう? 俺だ。アコダだ」
固く閉ざされた門扉を前にして、アコダが大声を上げた。すると門扉が勝手に開く。私は、門扉が誰もいないのに空いたことに対してびっくりした。それなのに他の三人は平気だった。
「凄いな。勝手に開いたぞ」
「自動式か?」
良く分からないけど、ノアールは納得しているようだ。開いた門扉を通り中へ入ると大きな木造の建築物が待ち構えていた。私達が住む王都や、以前私が働いていたボーモン子爵家の石造建築のお屋敷とは全く違う造りだ。まるで他所の国に来たみたいだった。




