8話・反省してください
──竜体の伯父さんの背中に乗って移動? 聞いてないです。無理、無理──!
反論する暇も与えられず、気が付けばカルロッタに抱き上げられて一緒に乗っていた。ノアールは私の前に座っている。
「振り落とされないように、しっかり捕まっていてね」
「……!」
急浮上した動きに驚いて、慌ててカルロッタに縋りつくと、彼女はしっかり私の体を抱きしめてくれた。前方のノアールは慣れているのか平気そうだ。このような体験は初めてで恐れのような気持ちが湧いてくる。屋上から離れ竜は空へと飛び出したようだ。風が頬に当たる感覚に目を瞑る。とても怖くて目が開けられない。今まで陸で育ってきた自分には、そこから離れると言う感覚が恐ろしく感じられるものなのだと知った。楽しいことを考えようとしたら誕生祭が、今この下で行われていることを思い出した。
──いいな。陛下からの指令がなかったら今頃、ノアールと夜の王都巡りしていたはずなのに。
屋台巡りでお腹いっぱいになったので、一度部屋に帰ろうと言われて戻ったが、アコダ達がいなければ、しばらく昼寝して夜にまた夜の誕生祭に繰り出すことになっていた。それが思わぬ形で潰されて、残念に思った。
──もう少し、楽しみたかったな。
「怖い?」
「はい。ちょっと……」
「勇気を出してちょっとだけ目を開けてもらえる? 下に綺麗なものが見えるのよ」
怖くて震える私にカルロッタが聞いてくる。怖いけどちょっとだけ勇気を出して目を開けると、下を見ろと言われて恐る恐る目をやった。すると明かりが彩る街並みが見えた。
「綺麗……」
夜空から見た夜景ってこんな感じなんだと、魅入っていると、その連なった明かりが段々、数を減らしてポツポツとなって行き、寂しくなったと思えた頃に「もうじきだぞ」と、アコダの声がした。初めての飛行なので、降下の際は慎重にしてもらえるかと期待したのに、気遣いはなかった。
ガクンと降下する気配を感じで身構えると、いきなり加速する。
「きゃあああああああああっ」
悲鳴を上げる私をカルロッタがしっかり押さえてくれていた。気が抜けそうになった頃に動きが止まり、私はカルロッタに抱き上げられて竜の背から降りた。カルロッタから地面にそっと下ろされたが、まだ足元が頼りなく思える。ふらつくと「大丈夫か?」と、ノアールが体を支えてくれた。
「驚いたか? サーラ。凄い悲鳴だったな。いでっ」
「やり過ぎよ。サーラちゃんのように可憐な子は、我々と違って体の作りが華奢なのだから加減しなさい。もう、この体力馬鹿っ」
「分かったよ。そう怒るなってカルロッタ。悪かったな、サーラ」
カルロッタは竜の姿から人間の姿になったアコダのもとへ駆け寄り、拳骨をお見舞いしていた。アコダは涙目になって謝ってきたので許してあげることにした。でも、もうアコダの背に乗るのは嫌だと、ノアールに言っておくことにした。
「ノアールさん。帰りですがまた伯父さんの背に乗るの?」
「いや。いくら時間がかかろうとも馬車で帰ろう」
「その方が良いです」
ノアールも私の声音で気持ちを察してくれたのか、帰りは馬車で帰ることを約束してくれた。
「初めは低飛行から初めて慣らしていくものだけど、急過ぎたからね。済まない。私も強く止めればよかった」
「本当ですよ。もうあのような急激な移動は御免です」
でも、そう言いながら伯父さんの背から見た夜景は綺麗だったなと思った。それでも、これとそれとは別の話だ。伯父さんの荒い移動には慣れそうもない。今回のことで思ったが、アコダは行動が雑な人なのかもしれない。
私をハムスターにした時も承諾なく勝手に行って、その後のケアも怠っていたし。カルロッタに叱られているアコダを見て、可哀そうには思えなかった。




