30話・隠されていた月華真珠
光と聞いて、ポケットから顔を出すと、アコダの開けた穴から輝く光が見えた。そこからこちらに訴えかけてくるような声を聞いた気がした。その声は脳裏に蘇ってきた。泣き声のようでもあり、子守歌のような儚くも澄んだ歌声。
──メーラさま!
私は光の下に駆け寄りたくなった。メーラさまが生きていた?! この目で見て確認したい。
──おい、こら。待て!
アコダの制止を無視してポケットから飛び出した。月光に輝く先へと近づく為に。ところが体に異変を感じた。急に目線が高くなる。
「サーラ!?」
「サーラ。どうしてここに?」
「すまん。俺が連れてきた」
ノアールと子爵が驚いていた。アコダが謝る。皆の態度で自分の姿が戻ったことを知った。突然、この場に姿を現した私を訝るどころか、子爵はアコダに向かって怒り出した。
「貴様、サーラとはどのような関係だ?」
「俺か? 俺はサーラの父親の兄だ」
「そんなこと聞いた覚えはないぞ」
「最近、分かったことだからな」
私の背後でそのようなやり取りがあったが、気にしていられなかった。光が漏れる拳一個分の穴に私は手を入れた。
「サーラ!」
その穴の先には何か隠されていそうだった。私は10年前の記憶を探った。父と二人でここを訪れていた私は、ここの塔の管理人を名乗るメーラさまから色々な歌を教わった。その中でもこの歌はもの悲しく、歌っているうちに皆が涙したものだ。
──皆?
何かが引っ掛かる。その想いに突き動かされるようにして、その穴へと手を入れるが何も掴めない。何かが思い出せそうなのに、出来ないようなもどかしい思いがする。
「伯父さん」
「どうした?」
「ここを壊せる?」
「壊せないこともないが……」
私の願いにちらりとアコダは、子爵やノアールを伺った。ノアールは頷く。許可が下りたようだ。ノアールは女王陛下直属の捜査官。この場では国王の次に権威がある。子爵は黙っていた。
「少し下がっていろ」
アコダに言われて彼の背後へと下がると、アコダは拳を穴に向かって叩きつけた。するとレンガで出来た壁がバラバラと崩れ落ちていく。それと同時に私は忘れていたことを思い出した。
「これは──!?」
ノアールか、アコダのどちらかが感嘆の声を漏らす。壊された壁の向こう側にはうず高く積み重ねられた月華真珠の山があった。そしてそれを取り囲むように円形に組んだ牢があり、その牢には石の床が一部しかなく、海水に浸っていた。




