41話・竜王陛下の宮殿
「竜王陛下」
「何だ? ロージイ」
「お番さまにあの宮殿はお見せしたのですか?」
「まだだ。これから連れて行く予定だ」
「そうでしたか。余計なことを申し上げました」
「宮殿って?」
ノクティスと、ロージイとの会話で気になる言葉が出て来て、アーシアが隣のノクティスを伺えば、じゃあ、行くかと彼は立ち上がった。
「ノク?」
「邪魔したな。ロージイ、チム」
「また、お越しくださいませ」
彼は再び、指を鳴らした。またどこかに転移したようだ。次に連れて来られたのは、目も眩むような白亜の宮殿だった。
「ここはどこ?」
「ノースデン山にある我の宮殿だ」
「ノースデン山にこのような壮大な建物があったなんて……」
アーシアは驚いた。
「普段は結界に覆われていて人の目では見えないからな。ノースデン山の山頂にある」
「あなたと出会ってから驚くことばかりだわ」
「退屈する暇がなくて面白いだろう?」
「それはそうだけど」
おいで。と、ノクティスに手を引かれ、ある部屋へと案内された。薄絹の天蓋付きの寝室に、クローゼットルーム。応接間などあった。応接間の床はガラス張りで川が流れていて、天井は丸いガラスになっていて空が望めた。
「ここはそなたの部屋だ。我の部屋とドア一枚で繋がっている」
「素敵」
「この城を作ったのもノームだ」
「ええ。あの小人さん達が?」
「彼らは凄い能力の持ち主だからな。食べ物以外は大体の物は石から生み出せる。庭園の庭木も花も蝶や虫さえも石で出来ている」
「もう驚きしかないわ。服や靴も?」
「勿論」
ベッドに腰かけると、隣にノクティスが座ってきた。
「結婚したらここが新居になる予定だ」
「良いわね。楽しみだわ」
兄の手でアーシアは、アイオライト公爵との婚約が結ばれていた。三か月後の誕生日に挙式することも決まっていた。
「いま、ロージイ達にはあるものを頼んである」
「花嫁のドレス? 花婿の衣装かしら?」
「それはもう作らせた」
「なあに?」
「おまえのティアラだ。プレゼントすると言っていただろう?」
「覚えてくれていたのね。嬉しい。人生初のティアラね」
アーシアがノクティスの腕に自分の腕を絡ませると、彼は彼女に顔を寄せた。
「挙式は盛大に出来ないが、せめて身に纏うものくらいは最高の物で仕立てる」
「わたくしはあなたと一緒にいられるだけで幸せ。これ以上のものを望んだら不幸になりそうで怖いわ」
ノクティスは、この国ではアイオライト公爵の地位を持つ。その彼のもとへ嫁入りするので降嫁となる。ノクティスの国へ行けば、竜王陛下の妃として盛大に挙式をあげることも出来ただろう。そうなると竜人国の王と、ヴィジリタス国の王女の婚姻となり大規模なものとなる。二人はそれを望まなかった。
ノクティスもこの国では、自分の正体を知られるのを避けるように、人との関わりをあまり持とうとしてこなかったので、「人間嫌いで偏屈者」と思わせてきた。そのアイオライト公爵が実は竜人で、しかもその国の王だ等と知られれば、平穏に暮せるわけがない。
その為アーシアは、自分は王女でも、降嫁する身なのだから臣下の身に相応しい挙式をと、慎ましい形での挙式を望んだ。
それが一部の高位貴族に称賛を得たようで、王妃が面白く思っていないらしいという話も聞こえてくるが、自分は王宮を去る身なのだから、放っておいて欲しいとアーシアは思っていた。




