39話・ノーム
「まあ、小人さん?」
「はい。勝手に声をかけてすみません」
「自分達の作品が褒められて嬉しくなったもので……」
「竜王さまの許可なく、勝手にお番様に声をかけてしまいました」
三人の小人が三角帽子を取って、ぺこぺこと頭を下げる。アーシアはそれを可愛いと思いながら気が付いたことがあった。
「作品って、この竜胆畑が?」
「はい。僕たちは石工なのです。石で何でも作ります」
「まさかこの竜胆も石で出来ているの?」
「そうです。ノクティスさまに頼まれて制作しました」
「えっ……!」
「余計なことは言うな」
竜胆が石で出来ていると聞き、アーシアは目を疑った。その隣で耳を赤くしたノクティスが、彼らをねめつけた。
「これ、本当に石で出来ているの?」
「はい」
「嘘じゃないです」
「匂いがないので分かると思いますよ」
そう言われて鼻を寄せれば、確かに竜胆から何も匂いがしなかった。ノクティスは以前この竜胆畑に連れて来た時に、この群生の竜胆は自然発生したようなことを言っていたが、どうもノーム達に作らせていたようだ。精巧すぎてどこからどうみても本物にしか思えなかった。彼としては秘密がばれて気まずい顔をしていた。
「素晴らしいわ。素敵、最高よ」
「ありがとうございます」
「ノクティス。ありがとう。あなたがノームさん達に頼んでくれたのね?」
「ああ」
ノクティスを見れば、仕方ないなというように頭を掻いていた。きっとアーシアには秘密にしていたかったのだろう。それをノームがうっかり明かしてしまうとは思わなかったようだ。
「ノームさん達は凄い腕を持つのね。他にも作品はあるの?」
「はい。でも、爺ちゃんたちの方がもっと凄い腕を持っています。小さい物は虫や蝶。大きい物は宮殿まで何でも作れます」
「凄い、凄い。ぜひ会ってみたいわ」
「じゃあ、僕らの家に来ますか?」
「お、おい。おまえら……!」
「じゃあ、行きましょう。こっちです」
止めようとしたノクティスの声が耳に入らず、アーシアが了承すると、ノーム達は竜胆畑の端にあった岩を動かし、そこから現れた穴の中に入り顔だけ出して手招いた。
「こちらからどうぞ。爺ちゃんたちに会えますよ」
穴の中に入れと言われて躊躇う気持ちが湧いたけど、それよりも好奇心が勝ってアーシアはその穴に飛び込んでみた。その後に迷わずノクティスが続く。
「きゃあああああああああああっ」
穴の中は坂になっているのか、急に下降していく感覚に驚いたけど、その先に明かりのようなものが見えてわくわくしてきた。穴を抜けると広い空間に出たと思ったら誰かの家の中の様で、広いリビングになっていた。
「お帰り」
「おや、まあ。お客様連れなの?」
そう言って出迎えたのは小人のお爺さんと、お婆さんだったが、アーリアの後ろに立つノクティスを見て深々と頭を下げた。
「これは、これは竜王陛下。お久しぶりにございます」
「ロージイ、チム。久しいな。何も変わりはないようだな?」
この老人夫婦とノクティスは面識があるようだ。アーシアは気になった。
「こちらの方々は?」
「ノームの長のロージイと、その妻のチムだ」
アーシアがノクティスに訪ねると、ノクティスが紹介してくれた。逆にノームの長のロージイから聞かれる。
「陛下。こちらの女性の方は?」
「アーシア。我の番だ」
「ほほう。こちらの御方がお番さまですか」
「初めまして。ここは我が家ですの。ゆっくりして行ってくださいね」




