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30話・リュート引きの正体は?



 その晩、ガーゴイルは狩猟大会で優勝した彼を労う為に、王さまと妻との晩餐に招かれた。王さまは妻がじっとガーゴイルばかり見ているので気になった。妻は言った。

狩人と王さまは似ている。服装を入れ替えてみてはどうかと。


 入れ替わった姿を見てみたいと。


 王さまは妻が狩人ばかり見ているのが気に食わなかった。

妻は王さまが狩人と入れ替わったら、どんなに素晴らしいかと語った。

一日中、側にいられますねと。

それを聞いた王さまは、ガーゴイルにすぐさま服を脱ぐように命じ、自分も服を脱ぐとそれを彼に渡してその場で入れ替わった。狩人の姿になった王さまを褒めたたえた。


『素敵ですわ。よくお似合いです。さすがは王さま、何を着てもよく似合いますね』


 気を良くした王さまに妻はお願いをした。


『今から森へ行って、私の為に何か狩ってきてくださらない? 王さまならこの彼よりも素晴らしいものを私の為に狩ってきてくださいますよね? そしたら結婚しましょう』


 それを聞いた王さまは大喜びで城から出て行った。妻はガーゴイルに言った。


『これからはあなたが王さまよ』と。


  実は変装を解いたガーゴイルは、王さまにそっくりだったのだ。その為、身だしなみを整えれば、城の者達は誰も気が付かなかった。それからガーゴイルはこの国の王さまとなり、その妻と仲良く暮らしましたとさ。



 えっ、王さまはどうなったかって?


 森へ行き何も狩れずに疲れ果てて帰って来た王さまは、みすぼらしい恰好をしていたから門前で「王の帰還だ。門を開けよ!」と、何度怒鳴っても門番に相手にされなかった。そればかりか相手にされなかった。


 門番から見た男はあまりにも汚かったからだ。

転んだのか服には泥が付いていたし、頭にも沢山の枝葉が付いていた。

自分が王さまだと言うなんて頭のおかしな男にしか思えなかった。


 それに城の中には王さまやお妃さまがいた。門番に追い払われた王さまはしばらく呆然としていたが、いつしかどこかへ行ってしまったそうだ。もしかしたら再び、森に戻って今もなお、狩りをしているのかも知れないね。お妃さまの言葉を信じて……。


 リュートを引く手が止まると、一斉に子供たちが拍手をした。



「おもしろかった」

「ばかなおうさま」

「ガーゴイル、しあわせになってよかった」

「おうさまは、ばちがあたったんだね」

「なかよしふうふをじゃましたらいけないよね」



 思い思いに感想を述べる子供たちに交じって、彼の歌を聞き入っていたアーシアはあることに気がついた。バードの恰好から『吟遊詩人』かと思っていたが、どうも見識違いだったようだ。彼は伝承や昔話を語って聞かせる『語り部』のようだ。


 この後は子供たちのおやつの時間のようで、建物内から子供たちを呼ぶシスターの声がすると、子供たちはわらわらとそちらに走って行った。アーシアの手を引いてここまで連れて来てくれた子供たちもおやつに気を取られて走って行く。その場には吟遊詩人の恰好をした語り部の彼とアーシア、護衛の姿をして付き添っているノクティスだけが残された。



「見事な物語でした。楽しかったですわ」

「楽しんでもらえて光栄です。アルテミシア姉上」



 アーシアが語り部の彼に声をかけると、思わぬ反応が返ってきた。彼は帽子を取って優雅に一礼した。ピンクブロンドの頭髪が現れた。姉と呼ばれて心当たりのある者はふたりだけ。そのうちの一人には、この間の寵妃の一件で会っている。残るは正妃が次期王にしようと目論んでいる第四王子のはずで──、その人物が語り部として目の前にいるのが信じられなかった。


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