29話・ガーゴイルと妻の再会
そこまで歌ったバードは、一度歌を止め、かき鳴らしていた音を低くゆっくり奏で始めた。今後の展開が怪しくなってくるのを予想させる流れだ。
──王さまは畑仕事を楽しそうにしている美しい女性に目を止めた。
ガーゴイルの妻だった。王さまは一目で彼女を気に入り、
彼女を連れ帰ることにした。ガーゴイルと村の若者たちは、
狩りに出かけて留守にしていた。
ガーゴイルの嫁の悲鳴を聞きつけて、村に残っていた数名の年寄りや、
女性達が助けようとしたが、王さまの連れている兵には敵わず、
ガーゴイルのお嫁さんは連れ去られてしまった。
それを聞いて子供たちがどうなるの?と、不安そうにしている。バードは続けた。
──家に帰って来たガーゴイルは、村人たちから話を聞いて、
嫁を連れ帰ろうと城へ向かった。
がんばれ──と、聞いている子供から応援の声がかかる。それは物語のガーゴイルに対してだろう。
──一方、連れ去られた妻は、綺麗な格好をさせられて、
美味しいものを与えられたが、ちっとも嬉しくなかった。
勝手に好きでも無い王さまの、お妃さまにされてしまったからだ。
王さまの顔を見る度に、夫のもとへ帰らせて欲しいと
涙ながらに頼んだが許されなかった。
王は美しい妻を気に入って使用人達に命じて着飾らせ、
どこへでも連れて歩いた。
そんなある日のこと。王さまは狩猟大会を開催した。
そこには国中から狩猟自慢の者達が褒美欲しさに集まってきた。
その大会で大熊を倒したある狩人が優勝した。それを見た妻は彼を自分の護衛にして欲しいと王さまに頼んだ。
それまで妻に豪勢な食事を与えようが、豪華な衣服を与えようが、高価な宝石を与えようが見抜きもされず、冷たくされてきた。その妻からの初めての要望。王さまは妻の機嫌を損ねないように、その場で彼を妻専属の護衛にした。王さまは気が付かなかったが、実はその狩人は変装していたガーゴイルだったのだ。
「ばかだなぁ」「おうさま、きがつかないの?」と、子供たちから言葉が盛れる。その子供たちの関心を惹きつけたまま、話は続いた。
──妻は一目でガーゴイルだと気が付いていた。二人は再会を喜びあった。
ガーゴイルは今すぐ城を抜け出そうと妻に言ったが、妻が自分にいい考えがある。と、ある計画をガーゴイルに持ち掛けた。




