12話・話が通じそうにない
「それぐらいのことで酷い、酷いなんて言っていたら、王族としてやっていけませんよ。殿下」
「何よ、その言い方」
「あなたは周囲にお膳立てされて暮らしてきたので、考えなしに行動するのは止めた方が良いと思います」
「それって、あたくしが馬鹿だと言いたいの?」
忠告として言えば、アルテミシアは眉根を吊り上げた。
「そこまでは言っていません」
「そうだと言っているようなものじゃない」
彼女と話していると疲れてきた。言動が幼く感じる。
「ではお聞きします。オレスさまと王宮から逃げて殿下は、その後、どうしようと思っていたのですか?」
「姉であるあなたがこの離宮で暮らしているのを思い出したから、ここでしばらく匿ってもらおうとしたのよ」
「しばらくというのは、どれぐらいですか?」
「しばらくはしばらくよ。結婚の話がなくなるまで」
「随分と頭の中がお目出度いお方ですね。あなたがわたくしと同じ双子の姉妹とは思えないほど、頭の中がお粗末にしか思えません」
「あなたね、あたくしの姉でも今の発言は許せないわ」
「では無礼打ちにでもしますか?」
「……! そんなことしないわよ。あたくしはそんな非道なことはしたくないもの」
話を聞けば聞くほど呆れてしまった。オレスは彼女の隣で黙っていた。どうして止めようとしないのか? 彼が諫めたなら惚れた弱みでアルテミシアは話を聞きそうなのに。頭が痛くなってきた。
「王家の結婚とは、政略ありきなのはご存じですよね?」
「宰相と似たようなことを言うのね。分かっているわ。でも、お父さまは言ったの。あたくしは好きな相手と結婚なさいって。兄さま達はそれぞれ高位貴族のご令嬢を妻に迎えたり、婚姻したりしているから、あたくしにはその必要はないって」
陛下が何を思って、そんなことを言ったのかは知らない。現在、まだ王太子も決められていない中、誰が後継者になるかで王宮内は揺れていると聞く。王妃や側妃たちが大貴族や古参の貴族達を子供らの後見人として取り込んでいく中、第一王子は、気難しいがこの国一番の実力者である大魔法使いのアイオライト公爵を後見人として選び、彼に妹姫を嫁がせることで絆を強くしようと考えたと思われる。
「今は王子殿下たちが次の王座に誰が座るか、争っているのではご存じですよね?」
「大丈夫よ。ワルド兄さまが次期王になることは決定しているもの。第一王子だしね」
「第一王子が後を継ぐとは限りませんよ」
「そうなの? 叔父が宰相なのに?」
アルテミシアが不安そうにオレスを見れば、彼は言った。
「問題ないですよ。第一王子殿下は優秀なお方ですから」
「そうよね。心配いらないわよね?」
オレスの言葉を、王女は鵜呑みにしているようだ。
「では結婚話が無くなったとして、その後はどうするのです?」
「オレスと結婚するの。オレスの奥さまになりたいのよ」
「光栄です。アルテミシアさま」
オレスがアルテミシアの手を口元まで運び、手の甲に口づけた。二人は見つめ合っている。頭の中がお花畑の二人には、何を言っても通じない気がした。二人にはお互いのことしか頭にない状態のようだ。これでは何を言っても無駄だろう。あとは宰相に丸投げしようと早くも放置することにした。




