10話・宰相が迎えに来た
「アルテミシア殿下。お捜ししました」
「宰相。これは誰?」
アルテミシア王女は、アーシアを指差した。
「殿下。その指を下げてください。失礼ですよ」
「失礼? この女がでしょう? あたくしと同じ顔をしているなんて気持ち悪い」
アルテミシアがそう言い放つと、宰相は彼女を睨みつけた。
「こちらにおられるお方は、あなたさまの姉君さまですよ。訳があってこちらで静養されてきたのです。失礼のないようにお願いします」
「あたくしのお姉さま?」
「……!」
衝撃を受けたように唖然とするアルテミシア王女の脇で、オスティック伯爵の子息オレスは凝視していた。宰相に連れて来られた護衛達は、この離宮に仕えている護衛が跪いているのをみて、それに続いた。オレスも慌ててその場に平伏した。
「申し訳ありませんでした。ご容赦下さい、アーシア殿下」
先ほどアーシアを馬鹿にした発言をしていたが、アルテミシア王女よりは、頭の切り替えは早かったようだ。
「え? でも、あたくしは第一王女として……」
「それは表向きの話です。これだけ似ているのに、まさかこちらのアーシア殿下を自分の姉妹ではないと言いたいのですか?」
「そう言う訳じゃ……。知らなかったのよ。あたくしに姉さまがいるなんて……」
宰相は怒っていた。いまの王宮は後継者問題で揺れている。王妃と寵妃も今後の自分達の行く末がかかっていることで、自分の実家や後見人達を巻き込み、お互いにけん制し合っている。そのような中で何の危機感もなく、アルテミア王女が王宮を飛び出し、何かあっては大変だという思いが先行したのだろう。顔色は険しかった。
「王宮に帰りますよ。アーシア殿下、御前を失礼致します」
自分と同じ顔をした者が実は姉だったと知り、呆けているアルテミシア王女を引き摺るようにして宰相はその場を後にした。その後をオレスは護衛達に囲まれてトボトボとついて行った。
その後、普段の穏やかな日々を過ごしていたが、それから三か月後。嵐は突然やって来た。




