8話・察しが悪いのでは?
「へぇ。こんな山中に古臭い宮殿があったとはね」
「私の言った通りでしょう? アルテミシアさま」
「もう。最悪だわ。あたくしのお気に入りの靴が……」
今日もガーゴイルの森へ出かけようとしていたアーシアは、滅多に人が訪れない離宮の玄関を出たところで一組の男女と出くわした。静養に訪れるには派手過ぎる格好で、女性の方は靴が汚れたと愚痴っていた。
「アルテミシアさまと同じ顔?」
「おまえ、誰なの?」
男はアーシアと目が合い、驚いたように言う。女性は目を丸くした。アーシアは自分と同じ顔をした女性を前にして察しがついたが、惚けることにした。
「他人の名前を聞くより前に、自分から名乗るのが礼儀では?」
「あたくしはアルテミシアよ。ヴィジリタス国王の第一王女よ」
アルテミシアは胸を張って言う。その隣にいる男も言った。
「僕はオレス・オスティック。オスティック伯爵の息子だ」
「わたくしはアーシアです」
「おまえ、何故、あたくしと同じ顔をしているの?」
頭が高い、控えろとでも言いたげな彼らの様子にため息が漏れた。本来ならば自分は第二王女。たかが伯爵家の子息に蔑まれるような眼で見られる筋合いはない。どうして自分と同じ顔をしているのかって? 普通はそこから考えられそうなものだけど。
「気味が悪いわ。あたくしと同じ顔だなんて」
「本当です。高貴な姫さまを似せた者がいるとは……」
宰相が言っていた通り、アルテミシアはあまり賢くはないようだ。勉強嫌いで、着飾ることや、演劇が大好きだと聞く。劇を見るのも好きだが、自分で演じるのも好きなようで、小さな劇団を買い取り、自分を主人公にした演劇を王宮で披露しているとか。それも歌劇で音痴。演技も下手くそ。それなのに、貴族たちは送られてくる招待状を前に断ることも出来ずに、本人の自己満足の為に付き合わされていると聞いた。
オスティック伯爵の息子と名乗ったオレスは、細身で顔立ちが良いことから、きっとアルテミシアの作った劇団員の一人なのかもしれない。




