6話・王家が双子を厭う理由
「そもそも双子が厭われる理由を知っているか?」
「いいえ。知らないわ」
「ヴィジリタス王と、ガーゴイルは双子の兄弟だった」
「双子……!」
建国王に双子の弟がいた? アーシアはこの国の歴史を一通り学んでいた。この国ヴィジリタスの由来は、初代にしてこの国を興した王の名前からとったもの。戦争孤児だった彼に兄弟がいたとは聞いたこともなかった。
「双子の育ちが命運を分けたと言っても良いだろうな」
「育ち……?」
「ある家の当主のもとに双子が生まれた。その生まれた双子のうち、片方は当主の意向で森に捨てられた。捨てられた赤子は通りかかった傭兵に拾われて育ち、養い親から剣術を教わるとメキメキと頭角を現し、心根も良かったことから成人する頃には、皆に慕われて沢山の仲間が出来たと言う」
「どうして当主は双子のうち、片方を捨てるようにと? その時代からすでに双子を厭う習慣があったの?」
「いや。その時代は赤子が生まれると特権階級者たちは神の祝福を求めて、神託を伺いに神殿を訪れていた。そこで双子に対して神託が下りたが良くないものだったらしい。兄はこの国の守り神となり、弟は簒奪して一族郎党を死に追いやるだろうと。その為、弟の方を本当は使用人に殺すように命じたが、使用人は赤子を前にして殺すことは出来ずにそのまま森に置き捨てて帰ったらしい」
「では、ガーゴイルは傭兵として育った。そして兄から王位を奪おうとした?」
「結果としてそうなったが、きっかけはある女性だ」
彼が語った話は、アーリアが教わった歴史にはないものだ。世の中で語られる歴史や童話の中には、逸話や諸説があったりする。もしかしたらこの話もその中の一つかもしれないが、妙に惹きつけられた。
「女性?」
「ガーゴイルに惹かれて着いて行った竜人の娘だ。その娘は美しすぎた。その評判がヴィジリタスの耳に届き、彼は彼女を召し上げた」
「それでその娘が後の王妃……?」
「そうなるな」
この国を興したと言われているヴィジリタス王を、アーシアは尊敬していた。それなのにヴィジリタスは、人間としては最低な男だったようだ。
「それでガーゴイルは恋人を奪われて……?」
「獄中死したとされている」
ヴィジリタスは弟から恋人を奪っただけではなく、邪魔になった弟を牢獄に入れたようだ。恐らく建国の為に尽くしてきたのは、弟のガーゴイルの方だったのだろう。
「でもどうして、ガーゴイルは王家の守護神に?」
「ガーゴイルは、兄夫婦を恨んで自決したと言われているからな。その為、弟の呪いを恐れたヴィジリタスが、鎮魂の為に神として祭ったのではないかと言われている」
「弟のガーゴイルが、祟り神となるのを阻止した?」
「恐らくな。それから王家では双子を厭うようになった」
ヴィジリタスは意外と、狭量な男だったようだ。聞けば聞くほどヴィジリタスに対して失望の気持ちしか湧かない。何も知らずに尊敬していた自分の気持ちを返してくれと言いたくなった。
「ノクティス。あなたはヴィジリタス王家に詳しいのね?」
「色々と聞くからな」
見た目は30代の美丈夫にしか見えない彼は、事情通のようだ。このノースデン山は王都より離れた場所にある。彼にはよっぽど優秀な間諜がついているようだ。王都での様子を調べさせているに違いなかった。




