20話 街はスルーして森へ
白魔竜ニーベルリユウム、なんかナトリウムっぽい、名前だな。
この魔竜は白く美しい古代種でなんでも二千年は生きているとかなんとか、とんでもねぇ……いやこれ以上は言うまい。
で、リザール人はこの竜の血を引く魔人で、フィージュさんは言わば神様と同等なんだとか。
まあ血を引くって言っても大昔のこの辺りを支配していた一族の長が生き血を飲み、眷属になった的な話だと、フィージュさんはいう。
「だから儂の初めてはマスターだ」
あーあー聞こえなーい。
「さて、で、これからどうするよ?」
聞かなかったことにして話を無理やり変えようと思う。
「ヘタレめ……全く昨日はあんなに……だったのに。
――――まあ良い、どうもこうもないから次の街へ行けば良い、そもそもここに立ち寄る予定はなかったのでな」
フィージュはこの街に興味はなさそうである。
「お、お待ちください!お、恐れながら申し上げます、折角人間の魔の手から逃げ出されたのですから、この街に残ってください!ニーベルリユウム様!このような下賤の輩に付き従うなど貴女にはふさわしくない!どこか別の地に行くのであれば、このガウラがお供致します!」
とフィージュに跪く蜥蜴騎士。
「この儂に指図するのか?ガウラよ?」
出たーフィージュさんのにらみつける。
心臓の悪い人間ぐらいなら簡単に殺せそうな視線を浴びて萎縮する蜥蜴騎士。
あまり長居はしないほうがいいな。
俺はゲートを展開してここよりさらに南西の方角に森を見つけ、フィージュに手を引いてすぐさま転移した。
転移の間際、蜥蜴騎士が物凄い形相でこちらを睨んでいたが、まあ悪く思うな、フィージュは今は俺の女だしな。
こうして俺たちは何も得ずにこの街を去っていった。
滞在時間わずか五分であった。
そして森についた、俺は一度ここをセーブポイント的なものにするために、地面に魔法陣を描いて、フィージュと共に異空間に帰宅した。
帰ったらみんなちゃんと服を来ていたが――――様子がおかしい、なんか惚れ直しましたって雰囲気だ、こいつらもチョロインだったのか。
俺は一切手は出していないっていうのに。
「手は出さなかったが、中々立派じゃったぞ?」
ナニがですかね。
「いや、そういう事言うなよな」
「そういえば、先ほどの森だが、あれはダルガルーグの森じゃ、だから今度は白ずきんを連れて行ってやるとよい」
「白ずきんを?」
言われた本人は何のことかわかってないようだが、ダルガルーグ……確か白ずきんの親父が主をやってる森じゃなかったか?
「え、私の森へ行ってきたんですか?」
「ああ、まあここから出たらすぐに森になってるぞ、出口を固定してきたからな」
そう言ってやると、白ずきんは立ち上がり、俺を――――持ち上げた、なんだこの馬鹿力は。
「じゃあ、行きましょうすぐに行きましょう!」
故郷に帰れて嬉しいのか、俺を持ち上げたまま飛び跳ねてやがる。
俺は白ずきんと一緒に、外に出た。
「本当に……帰って来れたんだ私……」
涙ぐむ白ずきん。
「で、案内してくれるんだろう、早くしろよ」
俺は、足で地面の魔法陣を踏み消しながら、白ずきんの手を握る。
白ずきんは顔を真っ赤に染めながらも俺の手を引き森の奥へと進んでいった。