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【連載版】悪役令嬢に転生したけど前世で弁護士だったので第一皇子を訴えます!  作者: 雪丸


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40/43

40条 近衛騎士

 地下牢を出たセドリックたちは、そのままアシュレイの執務室へ向かっていた。

 深夜にもかかわらず王城内は騒然としている。

 近衛騎士たちが慌ただしく行き来し、貴族たちも寝巻きのまま呼び出されていた。

 明らかに異常事態だった。

 王位継承の儀を第一皇子の独断で行うなど前代未聞である。


「強引すぎるな」


 レオニスが吐き捨てる。


「いくら第一継承者でも、兄上がまだ生きている状態で決めていい話ではない」


「アシュレイは暴走しているのでしょう」


 セドリックが答える。


「俺が資料を持ち帰ったことを知って、自分がやられる前に王になろうとしているのでしょう」


「兄上の息子と思えない程愚かだな」


 そう話していた時だった。

 前方の曲がり角から十数名の近衛騎士が現れる。

 全員が武装していた。

 護衛隊長が即座に前へ出る。


「止まれ!」


 だが、近衛騎士たちは止まらない。

 先頭の男が前へ出た。


「レオニス殿下、セドリック殿下」


「何だ」


「第一皇子殿下の命令です」


 男は一枚の書状を差し出す。


「第二皇子セドリックを王命違反および反逆容疑で拘束する」


 その場の空気が凍った。

 護衛たちが一斉に剣へ手を伸ばす。

 レオニスの目が険しくなる。


「反逆だと?」


「命令です」


「証拠はあるのか」


「我々は命令を実行するのみでございます」


 男は淡々と答えた。

 セドリックは書状を受け取る。

 一目見ただけで分かった。


「偽物だな」


 近衛騎士たちの顔色が変わる。


「国王印が違う」


 王家の人間だからこそ分かる微妙な違いだった。

 レオニスも確認し、鼻で笑う。


「アシュレイは国王印を持ってないのか」


 国王は自分の身に何か起こることを予想していたのだろう。国王印を隠しておいたようだ。


「我々には真偽がわかりません。処分は後で受けますので、ご同行を願います」


 近衛騎士の隊長が寄ってくる。その前にセドリックの護衛たちが立ち塞がった。


「護衛として、我々も譲れない立場でね」


 護衛隊長がそう告げると同時に両者は一斉に剣を抜いた。


 ガキィィン!!


 剣と剣が激突した。

 護衛隊長が前へ飛び出し、相手の剣を弾く。


「殿下方に近づくな!」


 廊下に金属音が響き渡る。


「待て!」


 セドリックが叫んだ。

 全員の動きが止まる。


「殿下?」


「ここで戦えば奴らの思う壺だ」


 セドリックは冷静だった。

 もし王城内で流血沙汰になれば、明日には『第二皇子が反乱を起こした』と噂が広まる。それこそ敵の狙いである。


「叔父上」


「ああ」


 レオニスも理解した。

 そして、近衛騎士たちへ向き直る。


「この書状は偽造文書だ。私は王族として、国王陛下が意識不明となった事件について独自調査を行っている」


 レオニスは一歩前へ出た。


「その妨害をする者は誰であろうと容赦せん」


 圧倒的な威圧感を放つ。軍部を束ねてきた男の迫力だった。

 近衛騎士たちが動揺する。

 その隙だった。

 廊下の奥から別の足音が響いた。


「何事だ!」


 現れたのは数十名の騎士たち。

 レオニス直属の王国軍だった。

 先頭の将軍が片膝をつく。


「レオニス殿下、ご命令通り部隊を集結させました」


 近衛騎士たちの顔色が変わる。

 数で完全に負けていた。


「武器を下ろせ」


 レオニスが命じる。


「従うなら罪は問わん」


 長い沈黙。

 やがて、近衛騎士たちはゆっくり剣を収めた。

 隊長も悔しそうに歯を食いしばる。


「……撤収だ」


 近衛騎士たちは去っていった。

 その背中を見送りながらセドリックが呟く。


「もう隠す気もないようですね」


「ああ」


 レオニスの表情は険しい。


「だが妙だ」


「妙?」


 これまでの敵は用意周到だった。

 ガルドの暗殺をし侍女の口封じまでして証拠の隠滅を図っていた。どれも巧妙に行われていた。それなのに今夜の拘束命令はあまりにも拙い。


「時間を稼いでいる……?」


 セドリックが呟く。

 その瞬間だった。

 遠くから鐘の音が鳴り響いた。


 ゴォォォォン――!


 王城全体に響く警鐘。

 全員が顔を上げる。

 そして、次の報告が飛び込んできた。


「大変です!」


 伝令の騎士が血相を変えて駆け込む。


「国王陛下の寝室が襲撃されました!」


 一同の顔色が変わった。


「何だと!?」


 セドリックとレオニスは同時に走り出した。

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