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【連載版】悪役令嬢に転生したけど前世で弁護士だったので第一皇子を訴えます!  作者: 雪丸


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39条 アシュレイの暴走

 レオニスの部屋を出た後、セドリックは与えられた客室へ戻った。

 だが、休む気にはなれない。

 机の上にはラングレン地方から持ち帰った資料が並んでいた。


「間違いない」


 セドリックは静かに呟く。


「敵は最初からこの証拠を潰すつもりだった」


 ラングレン地方での襲撃も、王都への帰還を急がせるためのものではない。

 証拠が王都へ届く前に、自分を拘束するためだ。

 その時だった。

 コンコンと扉が叩かれる。

 護衛が警戒しながら扉を開くと、一人の侍女が立っていた。


「レオニス殿下からです」


 封筒を受け取った護衛が中身を確認する。

 毒物などはなかったので、セドリックが封を切る。

 そこには短い文章だけが書かれていた。


『今夜、地下牢へ来い。信頼できる者のみ連れて来ること』


 セドリックの目が細くなる。


「叔父上からか」


 護衛隊長が眉をひそめた。


「まだ、レオニス様が味方と決まったわけではありません。罠の可能性もあります」


「ああ」


 だが、レオニスほどの人物がわざわざ偽の手紙を使う必要はない。何かを掴んだのだろう。

 夜になるまでは資料の整理をしてすごすことにした。



 深夜になり、セドリックは護衛隊長と二名の護衛だけを連れ、王城の地下にある牢屋へと向かった。

 人気のない石造りの階段を降りて行く。

 最下層へと辿り着くと、レオニスの部下がいた。

 その男についていきさらに地下牢の奥を目指す。

 最悪の牢の前に着くと、既にレオニスが待っていた。

 その牢の中には縄で拘束された男がいる。


「叔父上、これは」


「捕まえた」


 レオニスが短く答える。


「王都へ入り込んでいた不審者だ」


 男は顔を腫らしていた。

 相当抵抗したのだろう。


「尋問した結果、面白い話を聞けた」


 レオニスは男の前へ立つ。


「もう一度話せ」


 男は震えながら口を開いた。


「わ、私はただの使い走りです……」


「そういうのはもういい。誰の命令だ」


「し、知りません……黒いローブの男でした……」


 セドリックが問いかける。


「何を命じられた」


「王都へ薬を届けろと……」


 その場の空気が変わる。


「薬だと?」


「は、はい……」


 男は震える声で続ける。


「意識を失わせる薬だと聞きました……」


 護衛たちが息を呑む。

 レオニスの表情も険しくなる。


「それを誰に渡したんだ?」


「わ、私は名前までは……」


 それ以上のことは本当に知らないようだった。だが、十分だった。

 国王が病気で倒れた可能性が一気に低くなった。

 誰かが意図的に薬を盛ったのだ。


「その者は?」


 セドリックが尋ねる。

 レオニスは首を振った。


「今朝、侍女の1人が自殺した」


「……」


「正確には自殺に見せかけられていた」


 沈黙が流れる。

 迅速に証拠を消している。明らかにその手のプロの仕業だ。

 

「この男も殺されそうになっているところを捕まえたんだ。暗殺者は取り逃してしまったがな」


 レオニスが悔しそうに言う。

 その時、外から慌ただしい足音が聞こえた。

 護衛が飛び込んでくる。


「殿下!」


「どうした!」


「第一皇子アシュレイ殿下が明日の朝、国王陛下の容態回復が見込めないため、正式に王位継承の儀を行うとのことです!」


 レオニスの顔が険しくなる。


「なんだと!」


 アシュレイが強硬手段に出てきた。

 だが、ここまで急な動きでは貴族の反発も予想できる。果たしてうまくいくのだろうか。


「グランディール公爵は何を考えているんだ?」


 セドリックの呟きにレオニスも首を傾げる。


「グランディール公は野心の強い男だがかなり狡猾な面も持ち合わせている。正直、黒幕ではと疑っているが、アシュレイをコントロールできていないのか?」


「明日の朝ですか」


 セドリックは静かに呟いた。

 残された時間はほとんどない。


「夜中だが致し方あるまい。今すぐアシュレイを問い詰めるぞ」

 

 レオニスが低い声で呟いた。




 そして同時刻、王城の最上階。

 豪奢な執務室の窓辺で、アシュレイが夜の王都を見下ろしていた。

 その背後には黒いローブの人物が立っている。


「セドリックが戻りました」


「知っている」


 アシュレイはワインを揺らす。


「レオニスが先に接触したようだな」


「申し訳ありません」


「構わん」


 アシュレイは不気味に笑った。


「俺が国王になれば数日以内には終わる」


 だが、黒ローブの男は首を振った。


「第二皇子を甘く見ない方がよろしいかと」


「分かっている」


 アシュレイの目が冷たく細められる。


「だからこそ――次は確実に消す」

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