表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】悪役令嬢に転生したけど前世で弁護士だったので第一皇子を訴えます!  作者: 雪丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/43

36条 隠滅

 公開審問の前日。

 ラングレン地方から離れた山中の古い狩猟小屋で、ガルドは酒瓶を握りしめながら荒々しく机を叩いた。


「馬鹿どもが!」


 机の上には報告書が散乱している。

 帳簿の奪取に失敗し、私兵十五名を拘束された。さらに地下倉庫もセドリックに発見されてしまった。

 どれも最悪の知らせだった。


「なぜこうなる!」


 額には脂汗が滲んでいる。

 もはや余裕はなかった。

 そんなガルドの向かいには、黒い外套を纏った痩せた男が座っていた。


「落ち着いてください」


「落ち着けるか!」


 ガルドが怒鳴る。


「全部終わりだ!」


「まだ終わっていません」


 男の声は妙に冷静だった。


「公開審問で証言を覆せば――」


「無理だ!」


 ガルドは遮った。


「地下倉庫まで見つかったんだぞ!」


 男は黙る。

 しばらく沈黙が続いた。

 やがてガルドが低い声で言う。


「俺は全部話す」


 男の目が細くなる。


「何をです?」


「全部だ」


 ガルドは吐き捨てるように言った。


「誰に命令されたか」


「……」


「誰が金を受け取ったか」


「……」


「誰が不作を利用したか」


 男の視線が冷たくなる。


「それは賢明ではありません」


「知るか!」


 ガルドは立ち上がった。


「俺だけが死ぬのは御免だ!お前が上手くいくというから左遷にも大人しく従い、今回も私兵を送ったんだろ!」


 男は静かに立ち上がる。


「そうですか」


 その声に感情はなかった。

 ガルドが振り返る。


「何だ、その顔は」


「残念です」


 次の瞬間だった。

 銀色の光が閃く。

 ガルドは何が起きたのか理解できなかった。

 胸が熱い。

 ゆっくりと視線を落とす。

 そこには短剣が突き刺さっていた。


「な……」


 血が溢れる。


「お前……」


 男は冷たく見下ろした。


「口の軽い者は信用されません」


 ガルドが崩れ落ちる。

 だんだんと視界が霞む。

 最後に見えたのは男の無表情な顔だった。




 翌日、公開審問の日。

 村の広場には大勢の人々が集まっていた。

 中央には大きな壇上が設けられている。

 セドリックとヴィオレッタも既に席についていた。


「ガルドはまだか」


 護衛隊長が周囲を見回す。

 約束の時間は過ぎている。しかし、現れない。

 村人たちもざわつき始めた。


「逃げたのか?」


「まさか」


「どうなっている」


 その時だった。

 一人の騎士が血相を変えて駆け込んできた。


「殿下!」


 広場が静まり返る。


「報告します!」


「何だ」


「ガルドを発見しました!」


「どこだ」


 騎士は苦しそうに答えた。


「北の山中で、死亡していました」


 広場が騒然となった。

 ヴィオレッタの顔が険しくなる。

 やはり、消されたのだ。

 セドリックも同じ結論に達していた。


「こうなってしまったか」


 護衛隊長が拳を握る。


「口封じか」


 しかし、その時だった。

 ヴィオレッタが静かに立ち上がった。


「いいえ」


 全員の視線が集まる。


「証人はいます」


「何?」


 ヴィオレッタは机の上へ一冊の帳面を置いた。

 地下倉庫で見つかった取引記録だった。


「死人は口を開きません」


 彼女は広場全体を見渡す。


「ですが、記録は嘘をつきません」


 王都から来た役人たちの表情が変わる。

 ヴィオレッタは一枚ずつ紙を広げた。


「ここに不正送金の記録があります」


 ざわめきが広がる。


「賄賂の記録があります」


 さらに大きくなる。


「そして――」


 彼女は最後の紙を掲げた。


「王都の協力者の名前もあります」


 その瞬間だった。人混みの中、一人の男の顔色が変わった。

 それをヴィオレッタは見逃さなかった。


(いた)


 男は王都から来た役人の一人であり監査局所属の男だ。だが、彼の反応は明らかに異常だった。

 そして、その男はゆっくりと後ろへ下がり始める。

 逃げる気だ。

 ヴィオレッタの口元がわずかに上がる。


「殿下」


「ああ」


 セドリックも気付いていた。

 次の瞬間、セドリックが高らかに宣言する。


「護衛隊!」


「はっ!」


「その男を捕らえろ!」


 広場が一気に混乱に包まれる。

 役人は顔面蒼白になり、逃走を図った。

 だが既に遅い。

 四方から騎士たちが飛び出した。

 男は必死に走るが、数十歩も進めなかった。

 騎士に押さえ付けられ、地面へ倒される。


「離せ!」


「黙れ!」


 その瞬間、男の懐から数枚の書簡が転がり落ちた。

 それを素早くヴィオレッタが拾い上げる。

 そして、内容を見た瞬間、彼女の表情が変わった。


「……殿下」


「何だ」


 ヴィオレッタは静かに答えた。


「黒幕の名前があります」


 広場全体が息を呑む。

 ガルドの背後で全てを操っていた人物の正体が明らかになろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ