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【連載版】悪役令嬢に転生したけど前世で弁護士だったので第一皇子を訴えます!  作者: 雪丸


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35/43

35条 火災

 セドリックたちは全速力で村へ引き返した。

 夕暮れの街道を馬が駆ける。


「急げ!」


 護衛隊長が叫ぶ。

 やがて、村の入口が見えてきた。

 しかし、予想していた光景とは違っていた。


「……これは」


 ヴィオレッタが目を見開く。

 燃えていたのは村全体ではなく、村外れにある大きな倉庫だった。

 村人たちが必死に水を運び、消火活動を続けている。


「殿下!」


 村長が駆け寄ってきた。


「ご無事でしたか!」


「状況を報告しろ」


「倉庫が襲撃されました」


「何を保管していた?」


 村長の顔が青ざめる。


「農具です」


 セドリックとヴィオレッタは顔を見合わせた。


「食料は?」


「別の場所です」


「なら問題ない」


 だが、ヴィオレッタは首を傾げた。


「いいえ、殿下」


「どうした」


「少し変です」


 ヴィオレッタは燃える倉庫を見つめる。

 農具を燃やしてセドリックの試験を邪魔するのが狙いなのだろうか。一見すると、そのように見えてしまうが何か裏を感じた。


「農具を燃やすだけなら、こんな大規模な火事にする必要がありません」


 黒装束十五人による馬車の襲撃。そして、それに合わせて倉庫襲撃にも人員を割いている。

 あまりにも人員を投入している。

 さらに、成功したとしてもリスクに見合うリターンとも言い難い。


「確かに、狙いが妨害だけならあまりにも効率が悪い」


 その時だった。

 一人の若い騎士が走ってくる。


「殿下!」


「何だ」


「焼けた倉庫の裏で怪しい穴を発見しました!」


「穴?」


 一同はすぐに現場へ向かった。

 若い棋士が案内したのは燃え残った倉庫の裏だった。そして、そこには崩れた土壁があった。さらに、その奥に暗い空間が見える。


「地下通路……」


 護衛隊長が呟く。

 村長は驚愕していた。


「そんなものがあったのか!?」


「かなり古いですね」


 ヴィオレッタは壁を観察した。


「最近掘られたものではありません」


 セドリックは松明を受け取る。


「入るぞ」


「殿下!」


「敵が何を隠そうとしたのか確認する」


 護衛隊を伴い、一行は地下へ降りていった。

 通路は思った以上に広かった。荷車すら通れそうな幅である。


「密輸路ですか……」


 ヴィオレッタが呟く。

 その言葉にセドリックも頷いた。


「ガルドが長年使っていた可能性がある」


 しばらく進むと、やがて広い空間へ出た。

 そこにあったものを見て全員が息を呑んだ。

 地下空間の中いっぱいに、大量の木箱が積み上げられている。


「開けろ」


 騎士たちが近くの木箱の蓋を剣で切った。

 特に罠などはなく、中身があらわになる。

 そして、中身を見た瞬間、一同の顔色が変わった。


「金貨です!」


「こちらも!」


「全部金貨だ!」


 山のような財宝。さらに、別の箱には宝石や貴金属まで入っていた。

 村長が震える声を漏らす。


「まさか……」


「ラングレン地方から奪った金か」


 セドリックの声は怒りを含んでいた。

 長年に渡り民から搾り取った金であり、洪水が起こっても橋も道も修理せず蓄えた財産であった。

 その様子に全員が怒りを覚える中、ヴィオレッタが一つの箱の奥にある物へ気付く。


「殿下」


「どうした」


 彼女は奥の方にあった、他と比べて小さめな木箱の中から一冊の帳面を取り出した。

 表紙にはこう書かれている。


『取引記録』


 ページを開く。

 そして数行読んだだけで顔色が変わった。


「これは……」


 セドリックもすぐに世から覗き込む。

 内容を見た瞬間、空気が凍り付いた。

 そこには賄賂の記録が並んでいた。

 地方役人、商人、貴族。そして、王都監査局。


「やはり繋がっていたか」


 護衛隊長が呟く。

 だが、次のページを見た瞬間、ヴィオレッタの手が止まる。


「……」


 そこに書かれていた名前を見て、セドリックも顔をしかめた。

 それは監査局次長などではなくもっと上の人物のものだった。


『第一皇子派支援金 受領確認』


 その下には複数の名前が並んでいる。

 そして、最後の人物が問題だった。


『アシュレイ殿下への献上分』


 部屋が静まり返る。

 誰も言葉を発せなかった。

 もしこれが本物なら、ガルドの不正は単なる地方汚職ではない。

 王位継承争いそのものに繋がる巨大な事件になる。

 セドリックは静かに帳面を閉じた。


「……これ以上失望することがあるとはな」


 その瞳には冷たい失意が宿っていた。


「ガルドはただの駒だ」


 そして、ゆっくりと告げる。


「三日後の公開審問で全て終わらせるぞ」


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