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【連載版】悪役令嬢に転生したけど前世で弁護士だったので第一皇子を訴えます!  作者: 雪丸


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31条 復興作業Ⅲ

 セドリックの言葉に、ヴィオレッタは周囲を見回した。


「敵が動く、とお考えなのですね」


「ああ」


 セドリックは頷く。


「ラングレン地方は王位継承試験の課題だ」


「つまり――」


「私が成功すれば困る者がいる」


 その時だった。高台へ一人の騎士が駆け込んでくる。


「殿下!」


「何だ」


「北側の倉庫で問題が発生しました!」


 セドリックとヴィオレッタは顔を見合わせる。

 すぐに現場へ向かった。

 到着すると倉庫の前に人だかりができていた。


「どうした」


 セドリックが問う。

 倉庫番が青ざめた顔で答えた。


「小麦が駄目になっています」


「何?」


 一同が倉庫へ入る。

 積み上げられていた麦袋の一部が黒く変色している。さらに、異臭も放っていた。

 ヴィオレッタが眉をひそめた。


「湿気ですか?」


「違うな」


 老人の職人が首を振る。


「これは誰かが故意に水をかけた跡です」


 場の空気が凍り付く。


「故意だと?」


「ああ。この量が自然に濡れることはありえねえ」


 セドリックの表情が険しくなった。

 さらに調べると他にも異常が見つかった。

 荷馬車の車輪が切られている、橋の縄の一部が傷付けられている、工具が盗まれている。

 どれも一つ一つは小さな被害だった。

 しかし、積み重なり工事を遅らせるには十分なほどのものとなっていた。


「嫌がらせですね」


 ヴィオレッタが言う。


「いや」


 セドリックは首を振った。


「様子見だ」


「様子見?」


「相手は我々の警戒レベルを探っている」


 もし本気で破壊するつもりなら、もっと大きな被害が出ているはずだ。


「つまり敵は既に村の中にいる」


 セドリックの言葉に周囲がざわつく。村人たちの表情にも不安が広がった。

 しかし、セドリックは落ち着いていた。


「慌てるな」


 そう言うと周囲を見渡す。


「敵が動いたということは、こちらが正しい方向へ進んでいる証拠だ」


 その言葉に村人たちは少しだけ表情を取り戻した。




 そしてその夜、セドリックは密かに護衛隊長を呼び出す。


「明日から見張りを増やせ」


「倉庫ですか?」


「倉庫ではない」


「では?」


 セドリックは地図の一点を指差した。

 完成したばかりの山道だった。


「敵が本当に潰したいのはここだ」


 もし山道が再び使えなくなれば、ラングレン地方はまた孤立する。

 復興計画そのものが止まる。


「罠を張る」


 セドリックは静かに笑った。


「次に動いた時、尻尾を掴むぞ」


 その後、すぐに護衛たちは任務に動いた。

 夜が深まるにつれ、山道周辺には密かに見張りが配置されていく。

 一方、セドリックとヴィオレッタも現場近くへと訪れていた。


「お休みにならないのですか?」


 ヴィオレッタが尋ねる。


「敵が今夜動く可能性がある」


 セドリックは山道の方角を見つめた。


「なら私も残ります」


「危険だぞ」


「殿下一人を危険な場所へ向かわせる方が問題です」


 セドリックは小さく笑う。


「そうだったな」


 その時、森の奥から微かに小鳥の鳴き声が聞こえる。

 一度、二度、三度。

 不自然なほど規則正しい。

 直後、近くに潜んでいた護衛が駆け寄ってきた。


「殿下」


「見つけたか」


「はい」


 護衛は声を潜める。


「山道へ向かう者が二人います」


 セドリックの表情が引き締まった。


「案内しろ」


 一行は音を立てぬよう森へ入る。

 やがて木々の隙間から人影が見えた。

 二人の男が周囲を警戒しながら崖際へ近付いている。

 手には鉄杭と工具。

 狙いは明らかだった。


「山道を崩す気ですね」


 ヴィオレッタが小声で言う。


「ああ」


 セドリックは頷く。

 男たちは崖を支える補強材へ近付く。


「今だ」


 セドリックが命じると同時に、護衛たちが一斉に飛び出す。


「動くな!」


 男たちは驚愕した。


「罠だ!」


 一人が叫び、即座に森へ逃げ出した。

 それを護衛たちが追う。

 暗い森の中で追跡が始まった。

 もう一人は捕らえられそうになりながらも、懐から何かを取り出した。


「まずい!」


 セドリックが叫ぶ。

 次の瞬間、男は地面へ白い粉を投げつけた。

 煙が広がる。


「目を開けるな!」


 護衛隊長の声が響く。

 煙が晴れた時には、男の姿は消えていた。


「殿下、こちらを」


 護衛の一人が地面を指差す。

 そこには慌てて落としたらしい革袋が転がっていた。

 セドリックが拾い上げる。

 中を確認すると、金貨が入っていた。それも村人が一生働いても手にできない額だった。


「ただの盗賊ではないな」


 さらに袋の奥から小さな紙片が出てくる。

 そこには短くこう記されていた。


『山道を使用不能にせよ。成功時、残金を支払う』


 ヴィオレッタの表情が険しくなる。


「やはり誰かが依頼している」


「ああ」


 セドリックは紙を握り締めた。

 その後、追跡に出ていた護衛が再び駆け戻ってきた。


「殿下!」


「捕まえたか」


「いえ、それが……」


 護衛は息を切らしながら答えた。


「逃げた男が馬を使っていました」


「馬?」


「森の外に待機させていたようです」


 それを聞いたセドリックの目が細くなる。

 村人の犯行ではない。事前準備を行い、資金を用意し、逃走経路まで確保している。明らかに組織的な犯行だった。

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