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【連載版】悪役令嬢に転生したけど前世で弁護士だったので第一皇子を訴えます!  作者: 雪丸


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29条 復興作業I

 翌朝、ラングレン地方は早朝から慌ただしかった。

 まだ朝霧の残る中、多くの人々が川辺へ集まっている。

 大工職人、石工、荷運びの労働者、そして村人たち。

 さっそく、セドリックが命じた仮設橋の建設が始まった。


「資材を運べ!」


「丸太をこっちへ!」


「杭を打つぞ!」


 現場には威勢の良い声が響く。

 川は決して大きくない。だが、流れが早く工事は難航していた。それでも多くの人が働いてくれている。

 セドリックは工事現場を見渡しながら頷いた。


「思ったより人が集まったな」


「皆、この地方を立て直したいのでしょう」


 隣に立つヴィオレッタが答える。

 実際、多くの村人たちが自発的に手伝いへ来ていた。

 飢饉で苦しんでいるからこそ、状況を変えたいという思いは強い。

 

「危ない!」


 突如、職人の叫び声が響く。

 運んでいた丸太が手から滑り落ちたのだ。

 そして、丸太は近くにいた少年へ向かって転がる。 瞬間、セドリックが飛び出した。

 間一髪、少年にぶつかる直前に丸太を強引に受け止める。

 周囲は騒然となった。


「殿下!」


「大丈夫ですか!」


 重い丸太だったが、鍛えられた身体で何とか支える。

 少年は青ざめながら頭を下げた。


「ご、ごめんなさい……」


「怪我はないな?」


「はい……」


 丸太を横に投げ捨てると、セドリックは少年の肩を軽く叩いた。


「なら良い」


 その様子を見ていた職人たちから感嘆の声が漏れる。


「本当に皇子様かよ……」


「普通なら護衛にやらせるぞ」


 セドリックは聞こえていないふりをした。

 ヴィオレッタだけが小さく笑う。


「殿下らしいですね」


「何がだ?」


「放っておけないのでしょう」


「当然だ」


 「ですが、危ないので次からは必ず護衛に任せてくださいね」


 そして、一応怪我をしていないか確認するためセドリックは橋の視察を急遽中止することとなった。




 医師によってセドリックに怪我がないことが確認されると、予定通り午後には旧街道の補修工事の視察を行うことができた。

 旧街道は長年使われていなかったため、草木が生い茂り、所々崩れている。

 だが、こちらも多くの近隣の村人が集まり工事を行っていた。


「こちらも順調ですね」


 ヴィオレッタは地図を片手に現場を確認する。

 現場で指揮を取る近隣の村の村長が頷いた。


「予想以上です」


「そうですか?」


「ええ。若者たちが積極的に参加してくれています」


 視線の先では十数人の若者が汗だくになりながら作業していた。

 道を塞ぐ岩をどかし、土を固める。

 決して楽な仕事ではない。

 それでも誰も文句を言わなかった。

 皆が未来のためだと理解しているからだ。


「あと三日もあれば荷車が通れるようになるでしょう」


 村長の言葉にヴィオレッタは安堵する。

 物流が回復すれば状況は大きく改善する。


「村長!」


 その時、一人の青年が駆け寄ってきた。


「どうした?」


「街道の先で崖崩れが見つかりました!」


 その場の空気が変わる。


「規模は?」


「かなり大きいです」


 それを聞いたセドリックはすぐに直接見ることを決める。


「案内してください」


 しばらくして、青年の案内で現場へ到着したヴィオレッタとセドリックは崖を見上げた。

 確かにかなり大規模だった。

 崩れてきた土砂が道を完全に埋め尽くしている。


「思った以上ですね」


「ああ」


 セドリックも険しい顔になる。

 普通なら数週間はかかる規模だ。しかし、三か月という制限時間がある以上、時間をかけることはできない。

 周囲が重苦しい空気に包まれる中――


 ヴィオレッタはふと遠くを見た。


「……あちらは何ですか?」


 彼女が指差した先。

 崖の上に細い獣道のようなものが見える。

 村長が目を細めた。


「あれは昔の山道ですな」


「使えるのですか?」


「昔は使われていましたが……」


 ヴィオレッタは微笑む。


「なら調べてみる価値があります」


 セドリックも同じ考えだった。


「崖崩れを片付けるだけが方法じゃない」


 むしろ別ルートを確保できれば復旧は早い。

 その言葉に職人たちの目が輝く。

 絶望的に見えた問題にも、まだ打つ手はある。

 セドリックの指揮する東ラングレン地方は少しずつ、しかし確実に前へ進み始めていた。

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