第六話 おまえはクビだ
次の日の朝、清雅は何事もなかったように、朝飯を食べていた。
そこへ、昨晩隣で寝ていた高岡が走り込んでくる。
「近衛くん、相良隊長がすぐに来るよう言っている」
「今ですか?」
「今すぐの方が、良いだろな」
言いながら、鼻の横を掻いて目を逸らす。
清雅はすでに、警官の服装をしていた。
全身黒の袴と羽織。袖と裾に、藍色の線が二本入っている。
それが、清雅の髪とよく合っていた。
「失礼します」
丁寧に障子を開け相良の部屋へ入る。
顔を見るなり
「おまえはクビじゃー!!!」
怒鳴られ、座布団を投げつけられた。
「え?なんでです?」
後ろにひっくり返り、なさけない声。
「誰が、夜に泣きべそかく臭ガキを第一隊に入れると思うかーっ!!!」
すごい形相で立ち上がる相良は、イケメンやった。
「誰も泣いてません」
清雅は本気で驚く。
「高岡から聞いたぞ」
清雅は思わず、入ってきてた障子の方を見やると、盗み聞きしていた高岡と目があった。
「高岡さん!
なんでそんな嘘を言うんですか?」
本気で泣きそうになる清雅を見て、「おまえどんだけ嘘つきなん?」と、高岡は清雅を睨みつけた。
「だいたい、相良さんがおまえを気に入ってるのも、俺は気に入らない」
高岡は捻れた理論をぶつけてきた。
「佐倉さんが、ワシになんも相談もせず、おまえを入隊させたこともワシは許せん」
相良も捻れている。
「じゃあ、誰も私の入隊を快く思ってないじゃないですか」
清雅はもう京に帰りたくなった。
「他の奴らにも裏はとった。お前の泣き声と、女みたいな足音とで、夜中に目が覚めたと」
相良の言葉に清雅の目が宙を彷徨う。
「あしおと?」
―― トトト
振り向いた。
清雅の後ろに、女の気配がする。
「ここだと、女が言ってました」
急に脱力したように立ち上がる清雅を、相良と高岡は訝しげに見た。
『清雅!!清雅!!正気に戻れい!!』
九曜が必死に呼びかけるも、清雅の目は焦点が合ってない。
「相良さん、ヤバいですよ。
近衛くん、絶対おかしいです」
高岡の忠告を、相良は片手で制した。
「清雅、おまえ。見えてるだろ?」
「え?」
急に清雅の焦点があい、相良を見た。
「近衛家は陰陽師の血筋をひいてたな」
言って、顎に手を当てる。
「お前のその不安定な力、第一隊のために使え」
「じゃあ、辞めなくて良いんですか?」
「ワシらがフォローする」
相良の言葉に高岡は嫌な顔をした。
―― 九曜は相良の言葉に深く感動していた。
『長らくのワシの責務ではあるが、体を持つものが、清雅を支える方が良いかもしれん』
九曜の置かれる部屋には誰もいない。
刀が怪しく、赤く光ったかと思うと、戦国武将の出立をした武者が現れた。
そして、相良のいる部屋の方向に体を向け、ふかぶかと頭を下げた。




