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明治維新がこなかった....(上)  作者: yuyuko50
第四章 あやかし連合の総攻撃
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第五十三話 仲間の死

「相良隊長!!」


清雅は駆けつけようとした。


しかし、体がうまく動かない。




遮那(しゃな)が、呪を唱えている。


皆の動きを封じているのだ。




そんな中、妖の口から、魂を吸い取る剥き出しの刃を持つ口が二つ、ゆらりとうごめく。


首をもたげたかと思うと、すごい速さで相良の腹にめがけて飛びかかった。





―― ブシュ!!





血飛沫の上がる音がして、コトリと一つの禍々しい、化け物の口が地面に落ちる。




見ると、相良の目の前で、刀を振り下ろした体制の一ノ瀬が立っていた。




「紫苑……」


相良は呆然と呟いた。




パタ……パタパタ。




一ノ瀬の足元に大粒の血が落ちる。




パタパタ。




止まらない。




一ノ瀬の腹には、化け物のもう一つの口が食いついていた。




「あれ?あんた、確か大手町にいた……」


遮那が皆まで喋る前に、一ノ瀬は音もなく走り寄り、化け物を飛び越え、遮那の首元に刀を斬りつけた。




「え?


呪を受けたら、即死だよ。普通」


遮那は首を切られたまま、驚きに目を見開いた。


「残念。僕は死なないので」


言って、そのまま刀を斜めに差し込み、遮那の首を斬り落とした。




―― どさり。


首のない術者の体は、化け物から転げ落ちる。




一ノ瀬は刀を鞘にもどし、遮那の死体に目をやると、そのまま膝をおって倒れ込んだ。





「紫苑!!!」





相良は足を引きずり、一ノ瀬の体を抱き寄せる。


すぐさま、食いついている化け物の口を腹から引き剥がした。




「紫苑、なぜ。お前がなぜ!?」


相良はぐったりした一ノ瀬を抱きしめた。




「相良さん……ごめん。


月を見てたら……迷子になって……」




そこで苦しそうに言葉がつまる。




「もういい!喋るな!!


誰か!医者だ!!血が止まらない!」


相良が周りを振り返る。




「頼む!助けてくれ!


紫苑を……」


いつも強い光を放っている相良の目は、懇願するように歪んでいた。




もともと白い一ノ瀬の顔からは、今は完全に血の気が失せ、地面や相良の着物は一ノ瀬の血で滲んでいる。




第二隊の隊士たちは、その状況を凝視したまま、ガクリと膝をおってその場にへたり込んだ。


「一ノ瀬隊長……」


黒崎と鬼頭は目を瞑った。





多分、もう。


  助からない……





「嫌だなぁ。そんな顔しないでくださいよ。」


僕は死なないので……





―― ゴホッ





そう言おうとした一ノ瀬の口から、言葉の代わりに血が溢れた。





あれ?


血に染まった自分の手を見る。





―― 僕、


   死ぬのかな?





相良の必死に自分の名を呼ぶ顔が見える。


声は聞こえない。




そうか。




一ノ瀬の頭に、今まで斬ってきた者たちの顔が浮かんだ。





ああ。


―― 人って、死ぬんだ。





一ノ瀬の頬を涙がつたった。





  相良さん。ごめん。





涙に濡れた相良の顔が、少しずつぼやけて見えなくなる。





一ノ瀬は笑おうとしたが、うまく笑えなかった。





白い手が、パタリと地面に落ちた。


その手には、血まみれの手拭いが握られていた。

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