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明治維新がこなかった....(上)  作者: yuyuko50
第四章 あやかし連合の総攻撃
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第五十四話 暴走

清雅は呆然と相良と一ノ瀬を見ていた。


相良は一ノ瀬を抱き寄せ、今までの相良からは想像もできないほどの大声で泣き叫ぶ。




完全に取り乱していた。




一ノ瀬はもはや息をしていないようだった。




いつも、にこにこと笑顔をたやさないその顔も、今はまるで人形のように、がっくりと力なく、ただ相良に抱き寄せられている。




「俺のせいかもしれない……」




清雅は心臓を鷲掴みされたように痛みを感じた。





(きよまさくーん!)




(活動写真を見に行こう!)





あの時も





(僕にも状況を教えてもらえないかな?)





あの時も……。





「俺は一ノ瀬さんに、ひどい態度をとっていたかもしれない」




『主のせいではない』


九曜があわてたように清雅の心に呼びかけた。





「でも、あの時、一ノ瀬さんに状況を説明していたら……」


(俺が、説明することを面倒だと思ってしまったから……)





「一ノ瀬さんは、五芒星に気づいて、もっと早く手を打っていたかもしれない。


そしたら、こんなことに……」




清雅は一ノ瀬をもう一度見た。


一ノ瀬の頬には涙のあとが見えた。




(ごめん。一ノ瀬さん……ごめん……)




清雅の目に朱の色が差し込んだ。


『よせ、多くの者がいる。今、その力を出すな』




「俺が……」


(俺のせいだ)




「こんなに早く、一ノ瀬さんが死んでしまうなんて……」


(こんなに早い別れがくるなんて)




「一ノ瀬さんを殺した……」


(また、やってしまった……)




『清雅!』




遠くで見ていた高岡が清雅の異変に気づいた。


風もないのに、髪がなびいている。




「近衛?」





「まずいな」


黒崎は印を結んだ。


「近衛、ここではやめておけ」


かすかに呟くと黒崎の周りから白い煙のようなものが出た。




他の者に清雅の異変を気づかれぬよう、


白い煙で神田明神の周りを包み込む。




同時に黒崎は、あの化け物の異変にも気づいていた。


「鬼頭、術者は死んだが、あの化け物は生きておる」


「なに?」


鬼頭は急に煙が視界を隠し初めたことに違和感を感じながらも、化け物に目を凝らした。




「確かに、動き始めたようだ。


相良隊長と一ノ瀬隊長を避難させなければ」




「一ノ瀬は死んだ」


黒崎は冷たく鬼頭を見た。


鬼頭は黒崎を睨みつけた。





『清雅!正気に戻れ!』




「九曜」


清雅は低い声で呟く。




『やめろ!!制御もできずに、ワシを呼び出すな!』


「参れ!」




九曜が赤色に光る。


と同時に、人の三倍以上の鎧武者が突如現れる。




―― オォオオオオオーヨーーーーー!




その鎧武者の目は、清雅と同じ怒りに狂っていた。




隊士たちは一挙に後退りした。




「化け物だ。


  また出た」




警察隊はもはや、統制もとれず、隊士たちはバラバラと刀も構えずに散らばった。





「これは、ワシらだけでも残り、他のものは退避させるしかない」


言うと、鬼頭は相良のもとに走り寄った。




「相良隊長、どうかお気を確かに」


相良はその場にうずくまったまま動く気配もない。


目は、別の一点を見ている。


「相良隊長!!!!!」


鬼頭は相良の襟首を掴んだ。




「しっかりしてください!あなたはこの警察隊の隊長ですよ!」


相良は鬼頭を見た。




が、しかし、その目はすでに何も映していなかった。




「置いていけ」


小さく呟く。鬼頭は耳を疑った。




「ワシはここで、紫苑と一緒に死ぬ」




「……」




鬼頭は何も言わず、目を伏せた。


(まさか、ここまで……)


「ならば、ワシがここで、あなたをお守りします……」


言うと、刀を抜いて、鎧武者に向き合った。





―― グァアアアアアア





鎧武者九曜の後ろから、術者を失った化け物が口を開け、手を振り翳しながら立ち上がった。


『イノチ、タマシイ、クレ』




「こんな……化け物ばっかりを相手にするなんて、無理だろ」


高岡は木の影に隠れながら清雅を目で探す。


「あいつ、どこにいった?それにしても、この煙、なんだんだ?」





清雅はただ、化け物を見つめていた。


「九曜、あいつを殺せ」




九曜が薙刀を振りかざす。


その勢いに、風が巻き起こり、白い煙が嵐のように吹き乱れた。




化け物はどろどろの手で、勢いよく振り下ろされた薙刀をおさえ込んだ。




―― ズウゥン




風が巻き起こる。




『ヌォオオオオ』


九曜は抑え込んだ手ごと、化け物を切り裂いた。




「なんだ!


化け物同士で戦っておる」


鬼頭は目を見張った。




他の隊士たちも、驚きのあまりその場を動くものは一人もいなかった。


皆、化け物と鎧武者の戦いに釘付けだ。




「近衛」


その隙に、黒崎は清雅の側に歩み寄った。


しかし、清雅の目は朱色に光り、感情は読み取れない。




「私の声が聞こえているか?」




「殺れ」




無情に清雅が呟いた瞬間、九曜は化け物を真二つに切り裂いた。





―― オォオオオオ!





雄叫びが聞こえる。


だが九曜は止まらない。


その場にある木々を、薙刀で切り倒し始めた。




その足元で、化け物は息絶えた。





「近衛!」


黒崎は、清雅の両肩をがっしり掴み、体をゆらした。


「もういい。止めろ」




清雅は黒崎を冷たい目で見る。


しかし何も言わない。




(まずいな)




黒崎は一ノ瀬を見た。




「近衛、よく聞け。


一ノ瀬はまだ生きている」




清雅の体がビクッと震えた。




「お前なら助けられるかもしれない」


清雅の目の色が朱から深い藍色に戻った。




「どう言うことですか?」


その瞬間、薙刀を振り回していた九曜は動きを止め、一瞬で刀に吸い込まれた。




白い煙がはれた時、


そこには化け物の死骸と、切り倒された木々。


そして、一ノ瀬を抱く相良と、立ちすくむ鬼頭の姿が見えた。

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