第四話 変態警察
佐倉との面談が終わり、清雅は第一隊隊長と会うことになった。
途中、何人かの警察とすれ違ったが、普通の男たちのようだ。
(藤乃の心配は、はずれたかな。大しておかしな人はいないようだ)
『しかし、第一隊隊長となると、厳しいお方に違いない』
九曜は、意外に権力に弱い。
(厳しい人でも、可愛がってもらえるように、頑張るしかない)
頑張る場所を間違えるのが清雅だ。
「ここが、第一隊の部屋で、よくみんなで集まっておる」
佐倉が障子をスッと開け放った。
清雅は最初が肝心とキリリと顔をつくる。
「よう」
佐倉の挨拶に、上半身裸の男たち十数人が、こちらをギロリと見やった。
あぐらをかいて輪になり、睨み合っている。
「これが隊長のサリバンさんだ」
一番手前の男が手を挙げる。
「え?誰ですって?」
清雅は聞き取れない。
「サリバンだ。清雅くんか。よく来たな」
「奥が、副隊長のガルメッツ」
「おっす」
呼ばれるとすぐ頭を下げた。
清雅は耳くそをほじった。
どうも、耳の調子が悪い。
「あ、あの。すみません。西洋人ですか?」
顔は全員日本人である――。
「はっはっはっ!!
日本人だとも!西洋文化は即死罪だからの」
佐倉がバシバシと清雅の背を叩く。
「"あだな"というやつです」
ガルメッツがまた頭を下げた。
「今日だけな。あるテロ組織がこのような"いでたち"でな」
サリバンさんが、ひざをパンパンと叩いた。
「わしらも同じ格好して、敵を知ろうとしているところだ」
「なるほど……」
清雅は理解したふりをする。
「そうそう。奴ら上半身裸に、横文字の名前をつけて、鉄砲ふりまわしとるのでな」
そこにいた、十数人全員が腹をかかえて笑った。
(どういうツボ?)
『これはけっこう、頭おかしいかもしれんぞ』
九曜が声をふるわした。
―― 第一隊の顔ぶれを紹介された清雅だが、いまいち覚えきれなかった。
「清雅くんも、そろそろ帰った方がいい」
佐倉はそういうと、部屋を出て外を見る。
なるほど確かに、夕暮れ時になり、東の方はもう暗闇が近づいてきている。
(妖も動き出す。知らない町で夜に出くわすのはごめんだな)
不安げな清雅を見かねたサリバンこと隊長が、「ここの宿舎に泊まっていけばいい」と声をかけてくれた。
「この建物の裏にある。一間で全員一緒に寝るが良いか?」
(ええー!!?)
内心は完全拒否。
隊長は東の空を睨んだ。
「夜はな。出るんだよ」
「何がですか?」
清雅は声が裏返る。
「辻斬りが」
「え?」
「女ばかり斬られるが」
「じゃあ、私は関係ないですね」
「清雅くんは女に見えなくもない」
「泊まります」
よし!と言って、清雅の肩を叩いた。
「というか、隊長の本名はなんですか?」
清雅は顔をじっと眺める。
(え?めっちゃかっこいい、この人)
鼻筋がとおり、まつ毛が長い。
黒い瞳はギラギラしている。
(西洋人のように、顔立ちがハッキリしている)
西洋かぶれの清雅の心は揺さぶられてしまった。
「わし?」
アハハハハ!!!
大笑い。
「稔光だ」
(下の名前は呼べんよー)
「相良 稔光。よろしくな」
言うと、袴を揺らしながら大股で去っていった。
(かっこいい ――)
『こらこらBLはやめとけ』
「やりません」
今晩だけ、宿舎に泊まることになった清雅。
果たして、何もことが起こらねばいいが ――。




