表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/23

第三話 佐倉という男

警察所に着くと、すぐに中へ案内され、座敷へと通される。




むさ苦しいと聞いていたものの、すみずみまで掃除が行き届いた小綺麗な場所だ。




「すぐに来られますのでお待ちください」




若い隊の者が、挨拶もそこそこに出ていった。






『ところで主、口の中のチョコレートは、もう食い終わったのか?』


九曜(くよう)は意外と気が小さい。




(あれは瞬時に溶けるから痕跡はゼロじゃ)




逆に清雅(きよまさ)は図太い。






二人が頭の中で会話をしていると、障子がスッと開いて、肩幅の広いいかつい男が入ってきた。


踏み込むなり、いきなり





「おぉ!!!!匂うぞ!!!」





清雅は思わず口元をおさえる。





「なんじゃこの匂いは、誰か大きい方をなさったな」





言いながら周りをくんくん嗅ぐこの男こそ、警察所所長の佐倉 正親(さくら まさちか)だ。





(佐倉様。まさかチョコレートの匂いを大便の匂いと間違えられるとは!)


『これが、反西洋の性というものじゃろう』





「清雅くん、お待ちしておりましたぞ。この部屋、臭くなってしまい申し訳ござらん。近くに(かわや)があるゆえ、客人が来る時は、皆に、我慢するよう申し伝えておったのじゃが……」





(本物の方か……)


確かに、匂うといえば匂う。




『それを我慢させるのは、流石に酷じゃろう』


九曜は無意味に、我慢する男たちを想像した。







「父上から聞いていると思うが、明日から早速ここで仕事をお願いしたい」


そう言うと、警察の装い一式を畳の上にバサリと置いた。





―― 佐倉という男。


   豪快かつ大雑把。





そして、恐ろしいほど空気が読めない。


太い眉と、笑うと見せる白い歯は、武道に秀でた空気を醸し出していた。






「お世話になります」


一方、腹の中はともかくとして、頭を下げる清雅は、上品で言葉じりも優しい。




光に照らされると青く光る独特の髪を、藍色のリボンで結んである。





「清雅くんは、優雅で上品だな」


その姿を見て、心配そうに顎を掻いた。





「人を斬ったことはあるかい?」


「ひ、人を?」




清雅は目を丸くした。





『こりゃあ、なかなか、末恐ろしい展開になってきたぞ』


九曜などは血が沸たぎる。





「ありません。道場での試合稽古くらいしか……」


話しながら、心臓がドクドクなるのがわかる。


(そうか……、斬らねばならぬ時があるのか……。でも可能ならば、うまく逃げたい)





「実はな!」


佐倉は両手を、膝の上にバシッとのせ、清雅の目を覗き込む。




「前任の者が人を斬れんで、返り討ちに合い、今回第一隊に空きができたということだ」




(!!?)




こりゃ困った。




なんなく、要領よく働こうと思っていた警察所は、がっつり本気の戦のような環境だった。





油断したら斬られる。


漫画やチョコがみつかれば切腹。




しかも、この警察所は変態ばかりという。





江戸一日目にして、これは清雅、人生始まって以来の大事件である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ