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明治維新がこなかった....(上)  作者: yuyuko50
第四章 あやかし連合の総攻撃
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第四十六話 遮那との戦い

「あんた、名はなんと言う?」


名前を聞かれて一ノ瀬は眉をひそめたが、源平合戦の真似事かと思い、答えない。




「私は遮那(しゃな)。覚えておくといい」


言うと、遮那は高下駄を履いているとは思えないスピードで右側へ走る。


手に握る太刀は、武士のそれとは違い、太く鎧をも切り裂く威力を持つ。




一ノ瀬は身を低くした状態で、後を追う。




遮那(しゃな)は素早く土塀に飛び乗った。


一ノ瀬より数段上から攻撃をするためだろう。




鬼頭はその俊敏な動きを目で追い、助け立ちする頃合いを推し量る。


鬼頭は、他の隊の人間とは違い、集団攻撃を念頭におく戦い方をする。




「速すぎて、加わる隙がない」


しかし、二人の間には割って入れず、見守りに徹していた。






―― カンカンカン






高下駄を打ち鳴らす音が響き渡った。


上部からの攻撃が来る。





しかし、遮那が上から一ノ瀬に太刀を振り下ろすより早く、一ノ瀬は壁を足場に遮那の後ろへ一気にに上り詰めた。





背後をとられた遮那は、左手をまっすぐ一ノ瀬に突き出した。





「一ノ瀬!術が出る!」


黒崎のとっさの一言に、一ノ瀬は瞬時に身を屈める。





その上を、蝶の群れらしきものが鋭い速さで通り過ぎた。





「危ない危ない。


飛び道具も使うなんて予想外」




言いながら一ノ瀬は、その一瞬で間合いを詰め刀を翻した。




その打ち込みを、遮那は体制を崩しながら太刀で受け止め、すぐさま、さらに上の屋根瓦へと身を翻した。





「やっと喋ってくれた。あんた、本当に強いね。


で、名をなんと言う?」


不安定な高下駄と足場をもろともしない、十五、六の若武者の顔に、奇異の目がはりついていた。





一ノ瀬は上を睨んだまま答えなかった。


術者に名をなのるほど愚かではない。





「お前、見た目はおなごのようだな」


遮那は一ノ瀬を見て唇を歪めた。




「しかし、速さと力が桁違い」


カンカンと下駄で足元の瓦を崩し始めた。





「あやかし連合においでよ」





その場にいた全員が遮那を見た。





誘っているのだ。一ノ瀬を。





一ノ瀬はわずかに刀をおろし、遮那を見上げた。




「うぅーん」


急に一ノ瀬の表情がいつものものとなり、小首をかしげ目を細める。





「それは無理かなぁ」


言って、にっこりと笑った。


「今の仕事、気に入ってるんだ」





「へえぇ」


遮那の目が冷たく光った。


下を見下ろすように、顎を軽く上にあげ、わずかに片足を上げる。


「じゃあ、死んでくれ」




言うと、砕いた瓦を下駄で一ノ瀬めがけて弾き飛ばした。




一ノ瀬は刃を一閃させてそれらを撃ち払い、自分も屋根瓦へと飛ぶ。


が、瓦の一部が頬をかすめ視界を遮った。




足がわずかに屋根瓦へ届かない。




そのまま落ちる!


「一ノ瀬さん!!」


思わず叫ぶ清雅の声を、遮那は嬉しそうに聞きながら太刀を上へと掲げた。




―― ガクン!




遮那の体が下に引っ張られた。




屋根瓦へ届かなかった一ノ瀬が、遮那の足元……紐で絞り上げた野袴をぐいっと掴んだのだ。




「えぇ??」


たまらず遮那の口から、子供のような悲鳴がもれた。





バランスを崩した二人は、そのまま下の庭へと落ちていく。




「一ノ瀬隊長!」


鬼頭は想像もしなかった出来事に、その場に走り寄った。





清雅も鬼頭に続く。





塀を乗り越えた清雅と鬼頭は、うつ伏せになり庭に突っ伏している遮那と、その上に馬乗りになり、遮那の首に刀をつきつけている一ノ瀬を見つけた。





「一ノ瀬隊長、お見事です」


額に汗を滲ませた鬼頭は、ため息混じりに言葉を吐き出した。





後から追いついた高木と丸山は、誇らしげに顔を見合わせた。






「降りてくれよ」


話す言葉は子供のようだ。


しかし、剣捌きや術などから、年齢はもっと上のはず。




一ノ瀬に上から乗られた遮那は、両手を放り出し、降参の合図をしている。




「両手を縛っておいた方がいい」


黒崎が言ったため、丸山が紐を用いて硬く縛り上げた。




「お前たちさ」


遮那は一人一人の目を順番に見る。


そして、一ノ瀬の顔をじっくり見やった。




『絶対、殺すからな』


次の言葉は頭に直接響いた。

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