第四十四話 警察所の副隊長
翌日から、一ノ瀬が指揮をとることとなった。
「黒崎くん、鬼頭くん、清雅くんに高岡くん」
一ノ瀬は正座をくずさず、その場にいる隊士の名前をよぶ。
「あとは、第二隊から丸山くんと高木くん」
そこで一息つくと
「僕を含めた七人で、交代制で大手町を見張る」
言って地図をひろげた。
「昨日、丸山くんと五芒星の中心となる場所を探ってきた」
一ノ瀬の仕事の早さに清雅は目を見張った。
「神田明神が怪しいと僕はにらんでる」
黒崎に目を向けると
「一度、そこを訪れて気配を探って欲しい」
と伝えた。
黒崎は返事をしなかった。
「妖を斬れば地面に吸い込まれる。
もし大手町に妖が現れれば、どのように対処すれば良いですか?」
鬼頭は一ノ瀬に対して、相良と同じようにかしこまった態度をとる。
(俺、一ノ瀬さんに対して、ちょっと態度が悪いかな)
陣頭指揮を執る一ノ瀬を見て、隊で二番目の長なのだと改めて痛感した。
『まあ、隊を預かる身でありながら、まんが本を読んでおるんじゃから、どうでもいいじゃろ』
(それもそうか)
「黒崎くん」
わざとらしく大きな声で呼ぶ一ノ瀬は、満面の笑みだが、目は全く笑っていない。
「妖を食べてしまえるような式とかは出せないの?」
「要は、形をなくせば良いと言うことかな」
わざわざ言い換える。
「そう言うこと。その点については任せるよ」
一ノ瀬は姿勢をただし、後方にいた高岡の顔を見た。
「あと、高岡くんには天羽あもう先生のところへ走ってもらい、刀の完成日について確認してほしい」
高岡は「はい」っと言って、くずしていた正座を元に戻す。
「新月までには揃えておかないとね」
「もし……」
鬼頭が言いにくそうに声をあげる。
「大手町が失敗に終われば、神田明神での戦になる……」
皆の息が止まったかのように部屋が静まり返った。
「その際、出動する隊士、陣形などはお考えですか?」
自分よりも、いくつも若い一ノ瀬に対し、実直で礼儀正しい鬼頭の姿に清雅は自分のだらけきった生活を振り返った。
(俺ももっと、武士らしく振る舞おう)
『今、そこを決意するお主は、なかなかのズレた感覚の持ち主じゃな』
一ノ瀬は、目を少し伏せてから鬼頭を見た。唇を軽くかむ姿は、何事かを言いたげではあったが
「そこは、相良さんが指揮を執るから」
と、言葉を濁しただけだった。




