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明治維新がこなかった....  作者: yuyuko50
第三章 隊長たちの心の闇
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第三十九話 組織の求めるもの

「で、俺に指南役になれってことか」

警察所にある道場で、竹刀を片手に藤堂は清雅と高岡を楽しげに見やった。


「妖を討つには、集中力が必要だからな」

言って、ヒュンという音ともに、竹刀をふるう。


「剣先に意識をのせる」

「できていると思います」


丹田に力を込めて剣先まで意識を通す。

基本だと清雅は思った。


「がしかし、できていないのだよ」

藤堂は再度、竹刀をふるう。


清雅と高岡も同じように振るってみた。

音の切れ味が違う。


「君たちの剣技は、道場稽古だ。実戦での緊張感がない」


「場数が足りないんでしょうか」

高岡はがっかりしたようにつぶやいた。



「といっても、上達せんまま実戦をふんで死なれても困るからな」

藤堂は顎に手をやり天井を見上げた。


「普段から、すべての動作。

その動作のみに集中して取り組んでみるといい」


「集中して取り組んでますけど」

言いながら高岡は脇の下をかいた。


「食べる時は箸先。歩く時はつま先。お前たちは何も考えんと、ぼーっと暮らしとるだろ」


藤堂は汗を拭くと竹刀を戻し、呆れた顔で二人を交互に見た。

「脇の下をかきながら、集中してるとか言うな」


「ところで」

清雅は、周りに誰もいないか確認して、小声で藤堂に話しかけた。


「藤堂さん、相良隊長は最近、どちらにいらっしゃいますか?」

唐突な清雅の質問に、思わず藤堂の汗を拭く手が止まる。


「どちらって、ずっと所にいらっしゃるよ」

「全然、お会いしないのです」

高岡も清雅の隣に来て真剣な顔つきで詰め寄った。


「あぁ。ずっと外におられるし、戻ってくるのも遅いからな」

藤堂はため息をつきながら「今日は終わりだ」と背を向ける。


そのままの姿勢で

「ほら、一ノ瀬隊長の件があるから、第二隊の仕事もしておられるんだ」

ぼそりとつぶやいた。


「藤堂さん、知っておられたんですか?」

「俺は副隊長だぞ」

振り返った顔は、不機嫌そのものだった。


(まずいことを言ってしまったかな)


「だいたい」

藤堂は続ける。

「相良さんが、一ノ瀬隊長を縛りすぎるのが問題だ」

言って、余計なことを言ってしまったとばかりに顔をしかめ、「忘れろ」と一言いうと、道場から出ていってしまった。


「聞いたか」

「ああ聞いた」


「そっち派だったな」

「だったな」


高岡と清雅は道場を出ると、こそこそ話しながら廊下を歩いた。



最近では、第一隊の間でも、目に見えて相良に対する不満の態度をとるものがいる。

それもこれも、相良が留守にすることが増えているからだろう。


「このままじゃ、相良派と一ノ瀬派で、戦争がおこりそうじゃ」

高岡は、ちょっと面白そうに清雅の顔を見た。


「そんなこと言ってたら、とばっちりくいますよ」

「ゲヘヘヘヘ」

悪代官のように目を細めて笑う高岡を冷たい目であしらった。




と、その時、警察所の入り口あたりで女の人の声がした。

「放しなさいよ」

続いて「怪しい奴!」という男の声。


清雅と高岡は廊下を走り入り口へ出た。


そこには、警察二人に手首をつかまれた見知った顔。


「レイさん!」

「清雅くん!助かったー。

この人たち、なんとかしてよ!」



美しい着物と、何とも言えない香り。上品な仕草。

レイは手首をふりほどくと、清雅の後ろにぱっと隠れた。


「近衛の知り合い?」

警察の二人は顔を見合わせ

「入り口をうろついていたぞ」

と忠告すると、その場を去っていった。


「おい、清雅ー。お前もすみにおけないなー」

高岡がニヤニヤ顔で寄ってくる。


「レイさんは一ノ瀬隊長のお知り合いです。

でも、こんなところで、どうしたんですか?」

「紫苑が心配なのよ」

レイは隠れた清雅の背後から、眉をひそめて清雅を見上げた。

その仕草も美しい。

「最近、全然顔を見ないの。元気にしているの?」


「それが……」


清雅は、相良と一ノ瀬のことを、簡単にレイに説明した。

ちょうど三人が話している時、珍しく警察の装いをした相良が外出から戻ってきた。


「相良さん!」

高岡が呼び止めるより早く、レイが走った。


「え?」


そして、鋭い一撃を相良の腹にめがけて放つ。


ドスッ!


「いってぇなぁ。

お前、なんなんだ」


「すみません!相良隊長、この人は……」

清雅が割って入り説明しようとしたが、レイは清雅をおしのけ


「あんた、まだそんなことして、何にも変わってないじゃない。

この、(とし)の馬鹿者!」

相良の胸を両手で思いっきり突き飛ばした。


「稔!!!?」

(呼び捨て??)


「うっせぇなぁ。

お前こそ、亭主持ちになっても、その暴力はかわんねぇんだな」

相良は叩かれた腹あたりを、軽くはたいた。


「女が男のすることに、口出しすんじゃねえ」

不愉快そうに睨み返す。


「紫苑を外に出してあげなさいよ!」

再度レイがつかみかかったが、その拍子に相良の袖がめくれあがり、腕に生なましい傷跡が見えた。


「なにこれ……怪我してるじゃない」

そのままもう一方の袖もめくると、そちらにも刀傷が見えた。


「あちこちで問題が起きてる。

処理が間に合わない所を回すのが、ワシの仕事だ」

言うと、不愉快そうに襟袖をただした。


(相良隊長、だいぶ無理しているのでは……)

『目の下にクマができとる。ほとんど寝てないんじゃろ』


皆が相良の不満を言っている間、相良は人の倍、仕事をしていたのだ。


「バッカじゃない!」

そんな清雅のしんみりした気持ちをレイは一言で打ち破った。


「誰もあんたに、そんな無理して働いてほしいと思っていないし、ましてや紫苑に配膳や庭掃除して欲しいとも思っていないわよ」


レイは腰に手をやり相良を睨む。


「ここの人間があんたにしてほしいのは、"組織を健全に回す"ただそれだけ!

早く気づけ!馬鹿!」

それだけ言うと、レイは相良を両手で押しやり、さっさとその場から去っていった。



「強烈だなぁーあの人。美人なのに」

高岡がレイの去っていった方角を見ながら「でも好きかも」と、目を細めた。


「知り合いなんですか?」

まさか、相良とレイも顔見知りだったとは



「ああ」



相良は口をへの字に曲げている。



「昔の女だ」




「…………」




『えぇー!!!!!!!!!』

清雅と高岡は思わず抱き合った。



『強い女が好みか』

九曜がなぜか満足げに言葉を漏らした。

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