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明治維新がこなかった....  作者: yuyuko50
第三章 隊長たちの心の闇
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第三十八話 動き出した歯車

「複数の妖が出ておる」

清雅と高岡が着くより早く現場に着いていた黒崎が、妖の潜むあたりを指さして伝えた。


「ざっと二十程度」

「そんなにですか?」

高岡が思わず背筋を伸ばす。


「雑魚だ。このレベルは、ある程度の剣客なら、気合を込めれば普通の刀でもかき消すことができる」


(九曜で斬っても良いのか?)

清雅は念の為、おうかがいをたてた。


『あまり使ってほしくはないが、仕方がないのぉ』

(使えないなら捨てるぞ)

『お主!最近、ワシに対して礼儀がなっとらん!』


清雅と九曜の頭の中での論争を知る由もなく、高岡が清雅に耳打ちしてきた。

「俺は気合で妖を斬れる気がしないのだが」



高岡の声が聞こえたのか、黒崎は刀を抜き放つと目の前、一直線に構えた。

「意識を全てここに集中させる。迷いを消す。純粋に鍛え上げられた精神力だけが、一矢乱れぬ刃となる」


言うと、黒光する刀を上から下へと薙ぎ払う。

すると、少し先で見え隠れしていた、小鬼の形をした妖が真っ二つになり斬り裂かれた。


「気で殺せ。出来ぬのなら、剣と精神を磨きなおせ」


黒崎は冷たく二人を見やると、妖が複数固まっている小道の方へと姿を消した。




「意識を集中させる」

刀を構える。

(斬れるかな)


「迷いを消す」

(そもそも九曜で斬れるのか?)


「呼吸を整え」

(先に吸えばいい?吐けばいい?)


刀を振るった。

風だけがヒュンとなり、妖は別段なんの支障もない。




『えぇい!!!精神を鍛え直してこい!!!!』

キレたのは九曜だ。



高岡と清雅は、雑魚を相手に何度も刀をふるった。

「えぇえい!」

びくともしない。


「とおぉりゃ!」

風がなびいて、妖がゆれた。


「てぇい!」

妖を斬るが、下の石ころが吹き飛んだにすぎない。



「お前たち糞だな」

黒崎が舌打ちしたのが聞こえ、二人同時に肩を落とした。



「もう良い。相良隊長に報告しておく」

残りは黒崎が全て屠った。

楓が現れ、黒崎を労う。


(あの式は、ああいう役どころか)

清雅は少し羨ましくなった。



「帰るぞ」

黒崎は周囲を見回したが、他に妖の出る気配もないため早々に引き上げた。

顎に手をやり、しきりに首をひねる。

(なんのために、雑魚を二十もここへよこした)

歩く足元には、妖を斬り捨てた際に残った残骸らしきものが、地面に吸い込まれるのが見えた。


(少しばかり嫌な予感がする。

今後の動向を注視しなければ)


「黒崎隊長、私たちの精神を一から鍛え直してください」

前を歩く黒崎を追い越し、清雅は黒崎の前で頭を下げた。


高岡もあわてて後ろから頭を下げる。


「否!

藤堂に頼め」



(第一隊副隊長……確かに、頼むならこの人か……)




警察所に戻ると、庭をほうきではく音が聞こえた。

廊下を歩いていた黒崎は立ち止まり、庭を見やる。

その目の先には、一ノ瀬が立っていた。


「あの男が、ああやってサボっておるため、今警察所は人手不足だ」

黒崎の目が冷たく一ノ瀬を睨む。


「黒崎隊長はご存知ですよね……。そもそも相良隊長が……」

黒崎は清雅の目を睨みつけた。

その目は暗く冷たく、そのまま一ノ瀬を斬ってしまいそうな殺意があった。



その背後で、同じように一ノ瀬を睨む数人の隊士の姿がある。

黒崎の部下、第三隊の隊士たちだ。


(一ノ瀬さんは悪くない)

『しかし、今は他の隊士たちの気持ちもわからんでもない』


自室へ戻っていく黒崎と部下たちに、清雅はなんとも言えない腹正しさを感じていた。





「高岡さんと近衛さん、こんなところで何をしてるんですか』

ふいに後ろから、第二隊の丸山、田村、高木、山村の仲良し四人組が現れた。


小梅下村の一件以来、この六人は、顔を合わせるとよく話をするようになっていた。

「第二隊、大変だろ?」

高岡の心配げな顔に、

「今はふんばりどきです。

一番大変なのは一ノ瀬隊長なので、私たちは泣き言は言いません」

と、気丈に笑顔を見せた。


第二隊は仲が良い。

清雅は思った。


(それに比べ第四隊は性格が悪いのが多い)

『これこれ、決めつけは良くない』



もうすぐ夕暮れ時、職務も終わりにさしかかる。

皆それぞれ思いをかかえ、今日という日を締めくくる。

その小さなズレが、少しずつ、警察隊の中に亀裂を作っていた。


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