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明治維新がこなかった....  作者: yuyuko50
第二章 陰陽の力
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第二十五話 銃を持つ者

「浅草寺に向かっているのだろうか?」


元輝(もとてる)は、あえて人混みに紛れるのかと首をかしげたが、清雅は違った見解を持っていた。




「おそらく、待乳山(まつちやま)あたりではないでしょうか」


両国橋から少し川を遡ったところ、浅草寺の北東あたりに小高い丘がある。


木々が生い茂り、この近辺で身を隠すには、そこがうってつけであろう。




もうじき陽が沈む。




暗闇の中、あの辺りを歩く者はほとんどいない。





清雅のよみどおり、大八車だいはちぐるまは丘の下までやってきた。


そこからは階段をのぼり、かついで荷を運び始める。




「この上、本龍院まで荷を運ぶつもりだろう」


陽もかたむき、景色は暗闇へと入れ替わりつつある。




どどんどどんと、花火の始まる音がした。





「このまま後を追う」


「兄上」




清雅は元輝の袖をひくが、元輝はそのまま荷を運ぶ者たちにみつからぬよう、ゆっくりと階段を上がり始めた。





(九曜、俺はどうも嫌な予感しかしない)


『全くだ。じゃが、主の兄を放っておくことはできまい』





本堂に近づくにつれ、幾人かの声が聞こえ始める。




二人は、木々の生い茂る暗がりの中へと身を隠した。




箱が積まれていく。


黒い外套をまとった男が周囲を見回すと、箱のふたを開けた。




「!」


(これは……)


『かなり、まずい状況じゃの』




箱には黒光を放つ銃身がぎっしりと並んでいた。




「百はあるか?」




(しかも、あれは日本では見ないものだ)




「……小銃にしては、あまりに銃身が短すぎる。」


元輝はこれらが密輸されたものであると気づいた。




「日本に、このような危険なものを大量に持ち込むなど、許し難い」


握った拳に力がこもる。






その時、背後で草をふむ音が聞こえた。


元輝は、腰を落とした状態のまま左手を鯉口に添えている。





足音はそのままこちらへ近づいてくる。




(気づかれている。しかし、それでも向かってくるとは)


『銃を持っておるな』




花火が高く上がる。


光が清雅たちの隠れている茂みを照らす。





その光を浴びて、映し出された不気味な人の形。


清雅たちのすぐ目の前、そこに天狗の仮面を被った男が立っていた。




洋装に身を包み、腰には剣をさしている。




花火の光と影が、無表情の天狗の形相を恐ろしいものに見せていた。




男は言葉を発しない。




その代わり、おもむろに下ろしていた手を清雅に向けた。


そこには銃が握られていた。




(見たことがある……あの形……)




清雅が身をよじるより早く、背後から元輝が低い姿勢のまま、相手の手首を切り落とすべく抜刀する。




天狗は後方に下がるとそれを避け、すぐに銃を構えた。





パァン――!





鋭い金属の破裂音が静かな木々の空間を切り裂き、鼓膜を貫く。





足元の石が弾け飛び、かけた石片が頬をかすめた。




(はずしたか?)


それを確認したかのように、元輝はさらに低い姿勢のまま、足を地面に滑らせ、一気に天狗との間合いを詰めた。





次の弾を詰める猶予を与えぬ――。





抜刀から低姿勢で間合いを詰める。


一撃で終わらせる!





―― しかし





ガシャッ




闇の中で機械音が無情に響く。






「兄上!!」






パァン――!!


パァン――!!!





ほぼ同時に二発。





清雅はすんでんのところで、元輝を押し倒した。


二人は絡まり合い、もんどりうちながら、急な斜面となった茂みの奥へと転がり落ちていった。





上から鋭い気配を感じた。


目を凝らしているようだ。






暗がりの中をむやみに撃ってくるほど馬鹿ではないらしい。







清雅はころがり落ちた姿勢のまま、しばらくじっと様子をうかがった。




(降りてくるか。降りてきたら、迷わず斬る)




しかし、天狗は降りては来なかった。




代わりに仲間を連れてくるはずだ。





「清雅」




下から声がする。




「兄上!大丈夫ですか?」




清雅は、兄を踏んでいることに気づいた。




「すみません、咄嗟のことで」




元輝は抜き身の刀を鞘へ戻しながら息を整えた。


髪や服が乱れ、動揺を隠しきれない。




「あれは……なぜ、弾を詰め替えずに、連続で撃てたのだ」




呆然とつぶやく。





「おそらく、マウザーC96です」




「?」


元輝は聞き取れない。





「あのサイズで、射程距離も長く殺傷能力も高い。


一発ごとに弾を込める必要がないので、連続で撃つことができるのです」


(日本の銃はもう時代遅れなのだ)






元輝は、清雅を驚きの顔で見やった。




「なぜ、そこまで知っている?」





(まんが本での知識です)


『役に立ったのぉー!』


九曜は感心した。







周りが騒がしくなる。


男たちがバラバラと階段あたりに姿をあらわし始めた。




「いかん、場所を変える。暗がりを進み、身をひそめよう」







「あれは……」


清雅は目を凝らして頭上を見る。




男たちの肩には、小銃がかけられていた。




「ボルトアクション銃」




日本の武士たちの刀では、到底かなわぬ忌むべき代物。




遠くの敵をも粉砕し、刀が届く前に全てが終わる。


人を殺すための最新式の銃である。

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