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明治維新がこなかった....  作者: yuyuko50
第二章 陰陽の力
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第二十三話 近衛元輝

あれから数日。





元輝(もとてる)様が、お着きになられました」


藤乃の声とともに




「清雅ー!」


大声で両手をひろげ、兄、元輝もとてるが清雅の部屋の前に立っていた。




「兄上!」


聞き慣れた声に、清雅は目を見開き、次の瞬間には廊下へ飛び出していた。




「久しいな。元気であったか?」




兄弟は、ひしと抱き合う。


そして元輝は清雅にほおずりを始めた。




「相変わらず、白くて柔らかい、もち肌じゃ」


ごりごりと顎があたり、清雅は首をのけぞらせた。




「兄上も、相変わらずたくましい体つきですね」


言って、体をぺたぺたとさわった。





藤乃と玄之介は、兄弟の奇行を、少し距離をとって見ていた。






「入ってよいか?」


清雅は兄を部屋へ通すと、その凛とした形の良い目をしげしげと見つめた。




そしてふと、周りを見渡す。




「お供の者は、連れておられないのですか?」




「いらぬいらぬ」


いうと、藤乃に出された茶を上品に口へ運んだ。





清雅と元輝は母違いの兄弟だ。




そのためか、顔は全く似ていない。




元輝は鼻筋がとおり、目や眉がはっきりした武士らしい顔立ちだが、清雅は涼しげな目元と、細く高い鼻が上品なやわらかい印象の面持ちだった。





「父上にはがっかりだ。まさか清雅を江戸に、しかも警察などにやるとは」




「私のことを思ってのことだと思います」




警察には休みを届け出た。




(この間、佐倉さんが休んで良いと言っておったしな)




『それでちゃっかり休みをもらうとは、精神が図太くて結構』


九曜のうんざりした声が聞こえる。





「江戸を案内してくれるか?」


元輝は肩越しに庭に目をやる。


「外は賑やかそうだ。江戸名物といえば、なんだったかな?」




「天ぷら、うなぎなどでしょうか」


藤乃が答えた。





「よし、行こう。今日は一日、私の相手をしてくれるな?」


楽しそうな元輝の声につられ、清雅も心が弾んだ。




(ここで、一ノ瀬さんが来たら終わる。早く出かけてしまおう!)






二人は仲良く家を出た。






浅草寺を見ようと言う兄と共に、境内に並ぶ露店や出店を見て回った二人は、名物の鳩の餌売りの露店も楽しんだ。




仲見世通の人の多さに、元輝は「刀がぶつかって、かなわん」と口をとがらせ、その顔を見て清雅が大笑いした。





「次は、江戸名物の両国橋へ行こう」


兄の提案に、清雅は陽が傾きかけた空を見上げ、


「花火が見られるかもしれませんね」


と、兄の袖を引いた。





隅田川は大型の荷船が何十艘も行き交う。


江戸の物流の中心となる場所だ。





だからこそ、そこには持ち込まれてはならぬ物も多く持ち込まれる。





二人が両国橋へ足を向けた頃、


警察の預かり知らぬその場所で一艘の荷船が、静かに岸へ着いた。




人夫たちは何事もないように木箱を運び始める。




その一つの箱板が、わずかにずれて中身をさらけ出す。




隙間から覗いたのは、傾きかけた陽を跳ね返す、黒く細長い何かであった。



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