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第9話 9通目の手紙

 拝啓 ミスター宇宙人様


 僕は今日で20歳になった。ここの社会では成人といって大人扱いされる。でも大人ってなんだろう? 君の星では大人と子供の境界線みたいなのあるかな? 年齢とか制限とか刑罰の扱いとか税の負担とか、そういったもの。年齢は月日の数えで等しく、あなたは何歳、あなたは成人って分けられるけど、年月のように寸分狂いなく足されていくものと違うややこしい時の経り方ってあるよね。それでいけば僕は4歳から時が止まっているし、不必要な経験が4歳までの自分を侵食した後退もある。でもそれが僕を守れた部分もあると思うんだけど、そうすると20歳どころか僕は死ぬまでシェルターで暮らすことになりかねない。要するに20歳なんて数え方は僕には何の意味もないってこと。世界が変わるわけでもなし。

 君は何歳ですか? 君の星のひとたちにも寿命はありますか? 大人になるといいことありますか? 僕のイメージの中では君は若々しい1万歳の素敵な男性で、今生で起きるすべてのことを知り尽くしている達観者だ。僕の語る初期レベルなんかを、大層な大人の立場から小波も立てず遠望しているのだろうね。少しは笑えるかい? 笑ってくれた方が僕は楽だよ。

 大人が子供より優れているなら年経るほど素晴らしい社会に住めるわけだし、歳を取ることがまさしく尊敬に値する。子供は大人に憧れ大人は子供を守り養える。だが、僕の星の大人は子供より多くの要素で劣っている。生きるためだとかいって随分な不浄を正当化している。子供にはわからない論理で。だって子供は汚れていないからね。ひとつだけ大人が子供より優っているのが膂力りょりょくでしょ。でも彼らはその使い方を正しく知らないから不浄をただ大きくしているだけ。体なんて大きくならなければいいのにね。どうせ使い方知らないんだったら。

 頼みもしないのに母が誕生日のお祝いのケーキを買って、食べたくもないのに(母が食べたいだけなんだ)小分けして部屋の前に置いている。これも不浄だ。僕がこんなことで喜ぶと思っている。母のお節介は筋肉より押しが強い分なまじ汚らわしい。このまま踏みつけてやろうかと思った。でも僕の薄いデリケートな足の皮質がクリームにも汚されるのでやめた。代わりに皿ごとベランダから河に向かって投げてやった。君に食べて欲しいからじゃないよ。皿とケーキは別々に異なる放物線を描いて息もせず死んだように落下した。

 ハッピーバースデーきくっち  僕に誕生日はいらない。


きくっち



 次は僕の40歳の誕生日に彼をここに招こう。


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