第10話 10通目の手紙
拝啓 ミスター宇宙人様
待っていても仕方がないので、やっぱり僕は宇宙船を作ることにした。以前書いたけど僕にはその知識も技量もない。だけど作りたいんだ。わかってくれるかい、作りたいんだよ。せめて何を用意すればいいかだけでも教えてくれないか? 作るのは僕だから、君に作ってくれなんて言わない。この星にあるものでできるかい? 他の惑星の物質が必要ならその物質を作る方法か、調達する方法か、或いは代替できる物質を教えて欲しい。君はただ必要なパーツと作り方だけ教えてくれさえすればいい。
わかってるさ、それってプラモデルを作るような素人考えだ。それでは無理だって言いたいんだろ。部品と設計図があったらできるほど単純なものではないって言いたいんだろ。君の乗る宇宙船はモーターや接着剤や塗装なんて要らないんだろうからね。
だったらさ、僕に他どんな方法があるか教えてくれるかい? 超高速の宇宙船を自分でこさえて君の元に行く方法以外にさ。君が乗るのと同じ宇宙船ができなくても要はそこへたどり着く乗り物を作りたいんだよ。もし紙ひこうきで行けるのなら僕は明日、勇気を出して何年かぶりに商店街に向かい、あるだけの画用紙を買い集め糊でつなぎ合わせ巨大な紙ひこうきを作る。自分が乗るために。紙がだめならブリキ板を買いに金物屋にも行く覚悟だよ。僕が投げた紙ひこうきは絶対に君の元に届いている。だってさ紙ひこうきは行ったきり戻ってきてないからね。未着なら差出人に返されるのが手紙ってもんだろ? だから全部届いている。僕が書いた手紙はいま君の手元にある。僕の意図が伝わっているかどうかはわからないけど。文字が届くんだったら、僕のふにゃけた体も紙ひこうきに乗せれば届くんじゃないかい。命があるかないかほど軽いから。どうかな?
以前にさ、実体を飛ばせないなら僕の心か想いだけでもって君にねだったけど、それも君は実現してくれていない。その方法もきっとあるはずなんだ。だからさ、僕は初歩的なところに帰らざるを得ないんだよ。つまり実体を運ぶ宇宙船を作るという段階にさ。
もう一度尋ねるよ。僕は何を用意すればいい? 今手元にあるのは余ったルーズリーフと濃いめの黒鉛筆と使い古しのボールペンとスティック糊と切れの悪いハサミと30cm定規、そしてふにゃけた肉体くらいだ。この他に揃えるべき必要なものをまず教えてくれ。作り方はその次でもいい。なんならそこから自分で考えてみるし。
この手紙も紙ひこうきにして君に届けるけど、今回は返信欄を用意するからね。きっと返してくれよ。
きくっち
……………………キリトリ線……………………
−返信欄−
宇宙船を作るために必要なもの
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必要に応じて欄はいくらでも増やしてくれ。




