5-1.婚約披露パーティー
フィオナが新しい仕事を始めてから2週間ほど。
フィオナとエリオスは互いに仕事をこなしながら、木組みの家で家事を分担して毎日を過ごしていた。
休みが合う時には、2人で食材を買いに出たり、一緒に畑の野菜を世話したり。どちらかが仕事の時には、もう一方が家の中のことをしながら待つ、という生活リズムが、自然と出来上がっていった。
そして今日も、孤児院での授業から帰ったフィオナを、エリオスが料理の腕を振るいながら待っていてくれた。
「――婚約披露パーティー、ですか?」
台所からかけられた言葉に、フィオナが目をぱちくりさせて聞き返す。エリオスはフライパン片手に頷いた。
「ああ。パーティーと言っても、うちと親しい家だけを招いた小さな茶会らしいが…」
そう言って火を止めると、エリオスは昼食のペペロンチーノを皿に装う。2人分のパスタをテーブルに運ぶと、エリオスもフィオナの向かいの席に着いた。
「父も母も、フィオナのことを周りに自慢したくて仕方ないみたいだな。…忙しいところすまないが、ちょっと付き合ってやってくれないか。」
「ええ、それはもちろん!…でも、パーティーなんて久しぶりだから、作法を復習しておかないと…」
真剣な表情で呟くフィオナに、エリオスはふっと笑みを零す。
「カジュアルなパーティーだから、そんなに力を入れなくてもいいよ。…そうだ、バークリー侯爵家にも、声をかけてみようか?」
「クロエにも?本当ですか?」
ぱっと瞳を輝かせるフィオナに、エリオスも安心したように微笑んだ。
「もちろん。父上に言っておくよ。…さ、冷めないうちに食べよう」
フィオナも頷き、穏やかなランチの時間が始まった。
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そしてその週末。アイゼルハイム公爵邸の庭園で、フィオナとエリオスの婚約披露パーティーが開催された。
ハインツ曰く“小さなお茶会”とのことだったが、庭園には華やかなパーティーテーブルがいくつも並び、公爵家と関わりの深い上流貴族たちが顔を揃えている。
正妃候補として王宮のパーティーに参加した経験がなければ、今頃腰を抜かしていただろうなと、フィオナは内心苦笑した。
フィオナはエリオスと並んで、来賓たち一人一人に挨拶して回る。その中には、バークリー侯爵と共に出席したクロエの姿もあった。