2-7.出会い
「でも、予想以上に雨足が早かったのと、ちょっとしたトラブルが――そうだ!」
ここでエリオスはハッとして、ジャケットのボタンを開ける。
「こいつを助けたこと、すっかり忘れてたよ」
そう言って前を開くと、そこには――
「…子猫、ですか?」
フィオナが目を丸くする。
エリオスのジャケットの内ポケットですやすやと寝息を立てる、小さな子猫。ずっと懐に入れてもらっていたためか、ふわふわの毛はほとんど濡れていなかった。
「帰り際、こいつが崖下で鳴いてたんだ。助けるのに手こずってる間に、雨が降り始めちゃってさ。」
「そうだったんですか…」
顔に冷たい空気を感じたのか、子猫がくりくりとした両目を開ける。周りを見回し、不安げにみゃあと声を上げた。
「大丈夫。ここは怖いところじゃないよ」
フィオナが優しく話しかけ、エリオスは子猫を床へ降ろしてやった。
子猫はまだ覚束ない足取りで、部屋の中を探検し始める。
壁や床をくんくんと嗅ぎまわりながら進む子猫。そんな様子をそっと見守っていた2人だったが、やがて子猫は戸棚の下から木片を見つけ出し、がじがじと嚙み砕き始めた。
「こら。それは食べ物じゃないぞ」
エリオスが慌てて子猫を拾い上げ、口の中から木片を掻き出す。
「お腹が空いてるんでしょうか…困ったなぁ、お弁当はさっき食べちゃったし…」
呟きながら、フィオナは苦肉の策で、備蓄庫の扉を開けて中を漁る。
「…この干し肉、お湯で戻して柔らかくしたら、食べられるかも…」
「やってみよう」
こうして2人はこの後、子猫の空腹を満たすために悪戦苦闘することになる。
嵐は夜まで降り続き、フィオナたちは外が明るくなるのを待って、スノウに乗って森を出た。
フィオナはそのまま学生寮の前まで送ってもらい、子猫はエリオスが引き取ることになったのだった。
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