2-8.出会い
1階の自室でベッドに仰向けになり、エリオスはぼんやりと天井を眺めていた。
――植物園で、初めてフィオナを見た時。決して大袈裟ではなく、エリオスはその姿を天使と見紛えたのだ。
その時フィオナは、木の枝に腰掛けて葉の手入れをしていた。木漏れ日に包まれ、透き通る肌に長髪。猫目の愛らしい顔立ちが柔らかく微笑む。それはまるで、天使が止り木で羽根を休めているかのようだった。
エリオスが植物園を訪ねると、フィオナはいつも笑顔で迎えてくれた。普段、他の人間の前では話さないような魔道具の話も、騎士になる夢の話も、フィオナの前では自然と口から零れ出ていた。
王になる道を捨て、騎士として生きることを選んだエリオスに、友人たちは驚き呆れ、中には思い留まるよう説得してきた者もいたほどだ。
しかし、フィオナは違った。正義感の強いエリオスにぴったりな仕事だと、応援すると言ってくれた。
その言葉に、どれだけ励まされたことか。
卒業以来、2年ぶりに訪れた植物園で再会したフィオナ。まさか、最後にもう一度だけフィオナの顔を見ておきたかったなんて言えるわけもなく、理由は適当にごまかした。
これから先、クラウスの隣で幸せになってくれるなら、それで良かった。しかし、久々に会ったフィオナの笑顔はどこか影が差し、か細い体躯は力なく、触れたら壊れてしまいそうなほど。
植物園を出て卒業式に向かうフィオナを、追いかけずにはいられなかった。
嫌な予感は的中し、フィオナは婚約破棄を言い渡される。しかも、自分から婚約を解消しておきながら、何故かクラウスはフィオナを支配することに拘っているようだった。
(クラウスは一体、何を考えている…?)
どんな企みがあるかは知らないが、これ以上フィオナを傷つけようとするなら許さない。
この家に来てようやく、フィオナにあの頃の笑顔が戻った。エリオスが知らない2年間は、一体どんな日々だったのだろう。
もう二度と、フィオナの笑顔が曇らないよう、俺が守ってみせる。
拳を握り、エリオスは静かに目を閉じた。




