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私立獣耳学園  作者: 御門屋運命
第03話「燃えろ、獣耳学園」
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一時限目『始まりは鐘の音と共に…』

 ~ 一時限目『始まりは鐘の音と共に…』 ~


 キーンコーンカーンコーン…

 獣耳学園の校舎に学校特有の鐘の音が鳴り響く。

「なぁ、ハヤト」

「何だよ、ケン?」

 13クラスの終業の鐘を聞いた普通の少年と犬人の少年、ハヤトとケンの二人がそう会話を交わす。

「前々から思ってたんだけど、何で学校のチャイムってどこも一緒なんだ?」

「違う学校もある」

「ん、そうなのか?」

「ああ、そもそも学校のチャイムには『ウエストミンスターの鐘』というちゃんとした名称がある、作曲家でオルガニストのルイ・ヴィエルヌの作だ、元はオルガンの曲で分類上はクラシック音楽となる 別に教育委員会がこうしろと決めたわけではないが、昔の始業終業のベルがやたらとうるさかったらしく何か他に良いものはないかと言う事で自然とこの音が定着したそうだ」

「…相変わらず変な雑学あるなぁ、お前は」

「聞いてきた奴がそんな事言うのかよ…」

 二人のそういうやり取りは特に珍しいやり取りではなかった。

「ケンじゃないけどさ、私もちょっと疑問に思う所があるんだ」

 その会話を聞いて、いつものように猫人の少女、ミアが会話に割り込んでくる。

「何が?」

「この学校ってさ新設校でしょ、なのになんでチャイムがデジタルじゃなくて本物の鐘なのかな?」

 獣耳学園七不思議の一つ、本物の鐘。

 新設校である獣耳学園は全てにおいて新しい品を取り入れている。

 机、黒板、その他の備品も全てだ。

 しかし、そんな中で一つだけ古い品が使われている箇所があった。

 それが学園の鐘である。

 どこかから持って来たのかは知らないが、どうやらかなりの年代物らしく、見た目やその鐘が生み出す音はかなり重厚感のあるものであった。

 だが、年代物と言う事はそれだけ古いと言う事で、鐘の所々には錆が目立ち、今にも使えなくなりそうな雰囲気があるものの、現在に至るまで今だ現役で学園のチャイムとして使われていた。

「お前、怪談話はこの前の一件で懲りたんじゃないのか?」

「うっ…」

 ハヤトは冷ややかにミアにそう言う。

 先の夏の一件で13クラスの面々はすっかりお化け嫌いとなってしまったらしい。

「甘いわね、ハヤト君!!」

「ん?」

 ハヤトが振り返るとそこには同じ兎人が二人立っていた。

 世にも珍しい兎人族の双子、キユとミユだ。

「お化けとミステリーは似て非なるもの!!」

「……」

 キユはそう断言するが、ミユは違うと言わんばかりに涙目で首を振っている。

「…まぁ、そうかもしれんが、急にどうしたんだ?」

「私達新聞部の文化祭での出し物は獣耳学園の七不思議なのよ」

「そりゃまた新聞部らしい」

 スクープ大好きのキユが新聞部に所属している事はとても自然な成り行きだったとも言えよう。

 そしてその新聞部が文化祭の出し物として七不思議を扱うのはこれまた自然な成り行きなのかもしれない。

「そう言う訳であの鐘について詳しい事教えて頂戴」

「だから何で俺に聞きに来る、っていうかそういうのは自分の足で調べるのがリポーターだろ」

「何かハヤト君そういうの詳しそうだから、まずは聞き込みをと思って」

 とんだ言いがかりである。

「だったら、それにミユを巻き込むなよ、今にも泣き出しそうだ」

 確かに、キユの後ろでミユはもうよそうとばかりに首を振っていた。

「ふーん、ハヤトってば相変わらずミユちゃんにはやさしいんだねー」

 ハヤトの後ろで爪をチキチキと伸ばしはじめるミア。

「一々つっかかってくるなよ、ミア…」

 降参とばかりにハヤトは両手を上げる。

 ガラガラ…

 そんな中、教室の扉が音を立てて開かれる。

「あら、みんなまだ居たの?」

 そこに立っていたのは問題児ばかりの13クラスをまとめる委員長、牛人のコゥだった。

 もっとも、あまり表立った行動はしないが彼女自身もその問題児の一人なのは言うまでも無い。

「来週から前期末試験よ、大丈夫なの?」

 この言葉に対して全員口を閉じてしまう。

 流石に試験を前にして、大丈夫だと笑って退けれる者などそうそう居ないだろう。

「そ、そういうコゥちゃんだってまだ残ってるじゃない」

 話を切り替えようとばかりにミアはそうコゥに聞き返す。

「うん、運動会とか文化祭とかで各クラスの委員長は大忙しよ、最近はずっとこれぐらいに下校してるわ」

「…それでお前は大丈夫なのか、コゥ?」

 その言葉を聞いて、ケンがそうコゥに声をかける。

「ええ、次の打合せは試験後だし、土日勉強すれば何とかなるでしょう」

「そっか…」

「ケン、心配してくれてるんだ…」

「けっ、そりゃ自意識過剰ってやつだよ」

 そんなコゥの言葉にケンはそう悪態をつく。

『……』

 そんなそんなケンとコゥのそんな会話を残った面々は黙って見ていた。

 どうにも夏の一件以来、この二人は微妙な関係となったらしい。

「何か学園物のラブコメみたいだね」

 ツッコミ役のキユはとりあえずそんなツッコミを入れる。

「いいなぁ、ねぇねぇ、ハヤトー」

「却下」

「ちょっと、まだ何も言ってないよ」

「何を言おうとしたのか大体解ったから却下する」

「なるほど、愛し合う二人に言葉は不要、ああ、私達は以心伝心ってこ…」

 ミアが全ての台詞を言い終える前に

 ゲシィ!!

「ふぎゃん…」

 問答無用のハヤトキックが炸裂する。

「すまん、幻聴が聞こえたんで思わず脚が動いてしまった」

「砂浜ならともかく教室だと痛いよハヤトー」

 しくしくと泣きながらそう抗議するミア。

 確かに、ミアが吹っ飛ばされる時に机や椅子が巻き込まれ、彼女自身床に倒れこんでちょっと痛そうだった。

「む、確かにこれはちょっと悪かったかな」

「ちょっとなのー?」

「兎に角片付けるか、ケン、手伝ってくれ」

「しかも無視っすか」

 ミアのツッコミをスルーしながらハヤトはケンに手伝いを頼む。

「あーあ、ったく、片付けるの面倒くさいからやるなよなぁ…」

 そう言いながら手伝ってくれる辺りが、自称不良のケンっぽいところだ。

 そうこうして片付け終わる頃には初秋と言う事もあって辺りが暗くなり始めていた。

 キーンコーンカーンコーン…

「げ、あれって校門が閉まるチャイムじゃねぇか?」

「まだ予鈴よ、でも急ぎましょ」

 こうして13クラスの面々はギリギリ次の鐘が鳴る前に校舎を脱出する事に成功した。



 キーンコーンカーンコーン…

「ふー、ギリギリだったな」

 ゴゴゴゴ…

 重たい校門が閉められていく。

「チタ先生、担当のクラスなんですからもう少し待ってくれてもいいじゃないですか」

 どうやら今週の校門の当番は13クラスの担任である豹人のチタ先生だったらしい。

 しかし、彼は13クラスの面々が走ってきているのを知りながら持ち前の『楽しければそれでよし』理論を発揮し、鐘に合わせて校門を閉めはじめたのだ。

「ははは、まぁ、間に合ったんだから問題ないじゃないか」

 生徒にしたら実に良い迷惑である。

「みんな早く帰るんだぞー」

『はーい…』

 ここまで来たら大人しく帰るしかあるまい。

 所詮は学生。

 夜の街を歩き回れる金もないし、来週が試験だというのに遊ぶ馬鹿がどこにいる。

「仕方ない、ここで解散するか」

『おー』

 ハヤトのその言葉に全員が従う。

 普段はコゥが委員長として皆を仕切っているが、こういう場合はクラスのリーダーであるハヤトが場をまとめるという実に奇妙な主導権の切り替え方となっている。

 これらは全て夏の合宿で培われた経験を元に作り出された制度であった。

 13クラスと言わず、他のクラスでも同じような現象が起き、ある種、学校としての独自の組織図のようなものが出来上がってきていた。

 それらは全て校長が予め作為的に作り出した現象。

 そう、あの合宿の狙いの一つがこの組織作りだったのだ。

 何故校長はそんな事をしたのか。

 それは後に巻き起こる戦いに勝利するため。

 まぁ、そんな校長の思惑をよそに。

 ハヤト達にとっては目前の試験の方が後の戦いなどよりよっぽど切羽詰った状況であったのは言うまでも無いだろう。


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