表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私立獣耳学園  作者: 御門屋運命
第02話「海へ、獣耳学園」
18/80

九時限目『ヘル&ヘブン登山』

 〜 九時限目『ヘル&ヘブン登山』 〜


 獣耳学園合宿四日目。

「じゃあ、状況を整理してみよう」

 朝食時、13クラスの面々と食事を取りながら、ハヤトはそう話を切り出した。

「一日目の夜から二日目の朝にかけてミアが女子部屋を抜け出して男子部屋に来た、この時双方の部屋には鍵がかかっており女子部屋を出るのにも男子部屋に入るのにも鍵が必要だった、そして三日目の夜に今度はミユが女子部屋から抜け出している、この時も状況はほぼ同じだ」

「ミユもミアちゃんもその際の記憶はないそうよ」

 ハヤトの説明にキユがそう付け加える。

 今朝女性陣がミユから聞き出した情報だった。

「ここでの疑問点は2つ、何故鍵が無いのに出入りができたのか、何故二人にその時の記憶がないのか」

 ハヤトは疑問をその二つに絞ろうとするが

「もう一つ疑問があるわ」

 コゥが更にそう付け加えようとする。

「これは私の憶測と勘なんだけど、この一件はハヤト君が何らかの形で絡んでるような気がするの」

「俺が?」

 コゥのその言葉にハヤトはハテナマークを浮かべた。

「ええ、先の疑問の共通点は3つよ、二人とも何らかの方法で部屋を行き来した、二人とも記憶がなかった、そして、二人ともハヤト君と会っている、よって3つ目の疑問として何故ハヤト君が二人と接触したかのか、もしくは何故二人がハヤト君と接触したかってのがあげられるわ」

「…まぁ、そう言われればそうだけど」

 それは単に確立の問題なのではないだろうかと思うハヤト。

「今の所最も疑問な点よ、記憶が無いのは二人が寝ぼけてたとか理由がつけれるし、鍵の件はあげようと思えば考えられるパターンは幾らでもあげられるわ、例えば合鍵があるとか、誰かが部屋に侵入してミアちゃんを連れ出したとか、ケンと私が共犯で部屋の鍵を開け閉めしたとか」

「…その最後の例えがやけにリアルに聞こえるんだが…」

「だから例えだってば、あげれば本当にきりがなくなるわ、それに今回は他者の介入の方が可能性高そうだし」

「どういう事?」

 コゥのその言葉にミアがそう問う。

「二人の行動があまりにも不自然なのよ、仮にミアちゃんがハヤト君の所へ行けたとして大人しく一緒に寝るだけって事は考えられないし、ミユちゃんだって夜中に一人でハヤト君に会いに行くなんて考えられないじゃない、よって本人の意思ではなく誰かがそう仕向けたと考える方が筋が通るわ」

「確かに…」

 ミアはコゥのその意見に納得する。

「そうなるとやっぱり何故ハヤト君にって疑問になっちゃうのよ」

 コゥの意見は確かに筋道がたっているように聞こえる。

 しかし、少し客観的に見ればこじ付けっぽい所が多く、断定には至らない。

「…って事はよ、ハヤトは今度からちゃんと自分の部屋の鍵を閉めて寝ないとなぁ」

 ケンはややからかい混ざりでそう言う。

「え、どうしてだ?」

「…だってお前、もし鍵が開いてたらミアはお前に絶対何かするって言ってるようなもんだろ」

 ケンのその言葉にミアは

「うん、勿論」

 はっきりとそう断言した。

「寝込みを襲うのは夜這いの常套手だ…」

 ゲシィ…

 一蹴、ハヤトの蹴りがミアを床に蹴り転がす。。

「なーに言ってんだよ、馬鹿猫は」

「だからポンポン蹴らないでよー」

 床に倒れながらミアはそう泣き言を言っていた。

「…とにかく、どうにもおかしな事が続いてるようだから一応チタ先生には連絡しておこう」

「今の所それしかないわね」

 ハヤトのその言葉に全員頷いて了解を示す。



 昼。

『本日は登山を行う』

 灼熱の太陽が照りつける中で校長はそう言った。

 生徒達は当然嫌そうな顔をする。

 それはそうだろう。

 何が悲しくてこの炎天下の中、登山などしなくてはならないのだ。

 おまけに昨日の今日だ。

 未だに耐久マラソンの疲れが抜けきっていない者だっている。

「ケン…大丈夫か?」

「…多分」

 足の腫れは引いたものの、歩く時に若干の違和感があると言うケン。

「普通に登山する分には問題ないと思う」

「そうか…」

 確かに、普通に登山するなら問題ないだろう。

 しかし、これは校長が企画した登山。

 何かある。

 そう考えるのが自然だった。

『登山とは、山を登る事だけを目的としているのではない、普段触れる事の無い山の自然を楽しむ、それこそが登山の楽しみ方だ』

 校長独自の言い回しなのだろうか、校長がこういう回りくどい言い方をする時は

「なぁ、ハヤト…」

「何だ、ケン?」

「お前じゃないが嫌な予感するよ」

「そうか…」

『よって、山の自然を満喫してもらうために、山中に隠されたある品を探し出してもらう』

 予感的中。

『ルールは単純だ、一度全員で山頂に登った後に各グループごとに下山、その途中の山道に隠されたある品を探し出して浜辺までそれを持ち帰る』

「ある品ってなんだろな?」

「だから俺に聞くなってば…」

 いい加減このやり取りにも飽きてきた。

『なお、その品を持ち帰ったグループには豪華な夕食と本日より解禁となった海を楽しむ権利を与える』

『おおおぉぉーーーーー!!』

 飴と鞭。

 どうやら校長は生徒達の扱いがお上手のようだ。

 この熱い炎天下の中の登山の後に待つ海水浴と豪華な食事。

 その褒美に釣られて意気投合するグループは少なくあるまい。

『では、これよりヘル&ヘブン登山を開始する、各グループは山頂を目指して登山せよ!!』

 その校長の言葉に生徒達は思わず敬礼し、山頂を目指して登山を開始した。

「…もーどうにでもなれ」

 一方、ハヤトは呆れ顔で愚痴を言いながらクラスの面々と登山を始めるのであった。



「…それで委員長、今回の流れは?」

 お約束のようにハヤトはコゥにそう聞いた。

 校長が組んだ計画はまず担任と委員長に言い渡される。

 よって、この場合はコゥに聞くのが一番情報を得やすい手段なのだ。

「大体は校長の説明していた通りよ、付け加える点は隠されてる品が何かって事と賞品のランクぐらいね」

「またか、校長も好きだよなぁ、そういうの」

 ハヤトはそう言うが

「委員長、何が隠されていてどういうランキングなんだよ?」

 ケンは乗り気のようだ。

 おそらく豪華な食事という言葉に釣られた一人なのだろう。

「昨日は苦汁を舐めさせられたからな、今日こそは勝つ!!」

 どうやら食欲よりも負けず嫌いな性格のほうが強いようだ。

「明確なランキングは言わなかったけど、隠されているのはこういうカプセル、中に紙が入っていてその内容でランキング分けされるらしいわ」

 コゥが取り出したのはテニスボールより一回り小さい中央で分離できるタイプの玉、ようするにガチャガチャの玉。

「中身が何なのかは解らないの?」

「うん、開けてみてからのお楽しみだって」

 ミアの言葉にコゥはそう答えた。

「あの校長のやりそうな事だな…」

「でも、そっちの方が面白そうじゃない」

 キユは楽しみだと言わんばかりにそう言った。

 どうやら彼女はこういう宝捜し系が好きなタイプのようだ。

「しかし山の中を無意味に歩き回るのは危険だろ、ヒントか何か無いのか?」

 学園側としては怪我人が出たら困るだろう。

 ならばそれ相応の事前策を検討しておくのが筋というものだ。

「ああ、それなら大丈夫よ」

「え?」

「校長が山頂からカプセルを投げるらしいから、私達はその弾道を予測して探すのよ」

「…どっかのマンガであったなぁ、そういう修行方法が」

 などとハヤトは苦悩するがそこれはそれ、校長がやる事なので一々ツッコミを入れていたら体が持たない。

「なるほど、大体の流れは承知した」

 ハヤトはとりあえずコゥにそう答え、少し考え込む。

「どうしたの?」

 そんなハヤトにミアがそう問い掛けてくる。

「んー、校長のやる事は予想できないけど、あの人が考えそうな事が大体予想できはじめてきたんだ、あの人はやる事やる事に裏を持たせようとする」

「裏?」

「ああ、隠しポイントというか、真実というか、そういったものを必ず用意しているんだ」

 そう言われてクラスの面々は頷く。

「つまり今回もそういったものがあるんじゃないかって言うわけ?」

「だと思うんだが今の所皆目見当がつかない」

 キユの言葉にハヤトはそう素直に答えた。

「何にせよとにかくはカプセルの飛ぶ方向を見たほうがいいな」

『異議なし』



 登頂後、校長はすぐにカプセルを投げ始めた。

 カプセルの数はざっと25、1グループが6人構成だから豪華な夕食をGETできる定員は生徒の約半数という計算になる。

 もっとも、カプセルを見つけられればの話だ。

 ビュン!!

 ビュン、ビュン、ビュン!!

 剛球選手顔負けの勢いで校長は次々とカプセルを投げていく。

「どこまで投げるつもりなんだよあのおっさんは」

 そう愚痴を言うのはケンだった。

「それにしても困ったわね」

「うん、どれがいいんだろ?」

 そう困っているのはコゥとキユ。

 何故困っているかと言うと

「カプセルに色付いてるなんて聞いてなかったもんねぇ」

 ミユがさらっとそう説明するように言う。

 校長が先程から投げているカプセルにはそれぞれ色がついていた。

 おそらく色と中身は何らかの形で関わりがあるのだろうと予測される。

「やっぱり豪華な色の方がランク高いのかな?」

「どうかしら、校長の考える事だし意外と地味な方が高いかも」

「でもさ、他のグループだってそれぐらいは予想するでしょ、だったら無難に普通っぽい色の奴を探して手に入れた方が…」

 ミア、コゥ、キユが互いに推理しそう意見を出し合う。

「……」

 一方、ハヤトは物静かに校長を見ていた。

 校長は四方八方にカプセルを無作為に投げている。

 そして

 ビュン!!

 最後の一球を投げ終わる。

「…ふむ」

 ハヤトはそれを見て髪を少しかきあげるとミア達の方に振り返った。

「よぉ、ハヤトはどう思う?」

「どうって?」

「どれが一番ランク高いかって話だよ、何だよ、ちゃんと聞いてなかったのか?」

「ああ、悪い悪い、聞いてなかった」

 ハヤトはあっさりとそう答えた。

「お前なぁ…」

「そんな顔するなって、じゃ、そろそろ出発しようか」

『え?』

 まだどのカプセル取りに行くか決めてないだろ、と言った顔をハヤトを除いた全員がする。

「カプセルを1グループが幾つも取っちゃいけないなんて言われてないんだ、だったら確立の高い順番に一つずつ確認して行った方が手っ取り早いよ」

「そんな事いってもみんなだってカプセル探してるんだよ」

 ハヤトの言葉にミアがそう返す。

「それにどこにカプセルがあるかも解らないんだから幾つも手に入れるなんて…」

「解るさ」

「え?」

「さっき見て全部覚えた」

 ハヤトは平然とそう言ってのける。

「弾道と風、それに山の地形を足して計算すれば大体どこらへんに落ちたかは予想できる、後は俺達の行動力しだい、まぁ、俺の予想じゃ4つぐらいは確保できると思う、その中から一番ランクの高い奴を持って降りよう」

『……』

 残りの五人が呆然とした顔をする。

「ん、どうしたんだ、早く行こうぜ、他のグループに先を越されるぞ」

「あ、うん…」

 そう言って歩き出すハヤトの後をミアは真っ先に追いかけた。

「…こういう時のハヤト君って時々ドキッとさせられるよね」

「うん、何か底知れないっていうか…」

「け、単にずる賢いだけだろ」

「…でも、すごいと思う…」

 そんな事を言いながら残りの面々も二人の後を追った。



 …パカッ

 緑色のカプセルがそんな小粋な音を立てて開く。

「…しまった、こう来るか」

 ハヤト達が一つ目のカプセルを見つけて開けるのにそれ程時間はかからなかった。

 落下地点はハヤトの予測通りだったし、面々の動きも悪くなかった。

 だが、カプセルの中身はハヤトの予想を上回っていた。

「えーっと、このカプセルを開封した時点で他のカプセルを開封する事を禁ずる、このカプセルを開封したグループは下記の地図にある場所に行き所定の物を浜辺まで持ってくるべし」

 コゥはカプセルの中の紙をそう読み上げていく。

「何が紙に書かれている内容だよ」

「まぁ、嘘は言ってないよな」

 確かに、内容は内容だ。

 それに予め山中に隠された物と校長は言っていた。

「くっそー、そういう事だったのかよ」

 ハヤトはそう地団駄を踏む。

「どういう事?」

 そんなハヤトの行動に疑問を抱いたキユがそう問い掛けてくる。

「カプセルのランクってその色で決まるとみんな思っただろ、でも校長は見た目より中身を見るタイプだ、だから俺は当然発見難易度が難しいカプセルほど高いランクになると思ったんだ」

「あ、なるほど迷彩色、それで緑のカプセルを一番にしたんだ」

 ミアはポンと手を叩いてそう言う。

「ああ、けど裏をかかれた、カプセルの中身で更に俺達を試すつもりなんだよあの校長は?」

「え?」

「つまりさ、カプセルを見つけてもその中身の条件をクリアできないと賞品が貰えない、おまけにカプセルは一個しか開けれない、一度あけたら否応無しにその紙にかかれたものを探して来ないといけないんだ」

「なるほど、予めハヤト君がこのカプセルを見つけると予測した校長が嫌がらせでそういう仕組みにしたと」

「ああ、委員長の言う通りだと思う」

 あくまで予測だが、他のカプセルには本当にランクの書かれた紙だけが入っているものもあるのだろう。

「まんまとはめられたって事か」

 ケンがそう確信を突いてくる。

「…だろうなぁ」

「じゃあ全部お前のせいって事じゃねぇか?」

「俺のせいじゃねぇよ、校長が性質悪すぎなんだよ」

 ケンの言葉にハヤトはそう返した。

「でもやっぱりお前が悪いと思うんだが…」

「あんまり責めるなよ、へこむだろ」

 そう言ってハヤトは少しうなだれる。

 同じように面々も少し疲れたような顔をするが

「んー、でもさ、もっと前向きに考えてみようよ」

 ミアがそう口を開く。

「これがハヤトに対する嫌がらせだったとしたらさ、それってこれが一番難易度高いカプセルって事だよね、だったらこれをクリアしたらランキング1位は確実なんじゃない?」

『…あー』

 なるほど確かに、ミアのその言葉に面々はそう言った顔をする。

「別に無理難題を持ちかけられてるわけじゃないんだし、もっと楽しくやろうよ」

「…ったく、こういう時にポジティブな奴はいいよなぁ」

 ハヤトはミアのその言葉に対し、そう言って笑った。

「まったくだ」

「それじゃあ、善は急げね」

「異議なーし」

「…うん」

 残りの面々もそう言って賛同する。

「よし、それじゃー出発するぞー」

『おー!!』



「…滝かぁ」

「絶景って奴だな」

 ハヤトとケンはその滝を見上げてそう感想を言う。

 目的地に向かった面々を待っていたのは大きな滝だった。

 いや、規模自体はそれほど大きくないのかもしれない、だが水の流れや広がりがその存在を大きく美しく見た。

「絶景もいいんだけど目的の品ってどれかな?」

 ミアはそういったものに興味がないのか、すぐに周囲を見回す。

 紙には地図と共に変わったマークが書かれていた。

 おそらくそれが目印なのだろう。

「ねぇ、あれじゃない?」

 声をあげ、キユが滝の脇を指差す。

 そこには小さな祠があった、戸の所に紙と同じマークが刻まれているので間違いないだろう。

「…これは」

 ハヤトはその祠を見て少し表情を変える。

「んー、これかな?」

「多分、マークもあるし間違いないんじゃない?」

「よーし、んじゃー開けてみようぜ」

 女性陣が相談しあっているのを横目にケンは祠の戸の取っ手を持ち、勢い良く開けようとするが

 グ…グッ…

「ありゃ?」

 ギューー…

 力込めて戸を引くケン。

 しかし戸は一向に開こうとしない。

「何だよこれ、開かねぇぞ」

「鍵でも掛かってるのかしら?」

 コゥがそう言って祠の取っ手の部分を調べるがこれといってそういう感じではなさそうだ。

「違うよ、委員長」

「え?」

「これはこうやって…こう」

 ハヤトはコゥの横を通り過ぎ、祠の後ろに手を回す。

 カコ…

 岩が軽く動く音がする。

「そんでもって戸を横に引くんだ」

 ズッ…

 ハヤトが戸を横に動かすように力を込めると戸は重い音を立ててスライドしていく。

「え、どうなってるの?」

「んー、単純なパズルみたいなもんかな、後ろの岩を押さないと戸がスライドするスペースができない仕掛けなんだ、だから元々引いてあける事なんてできないように出来てる、この取っ手はカモフラージュ」

 ミアの疑問にハヤトはそう答えた。

「何だよ、ハヤト知ってたのか?」

「…まぁな」

「ったく、人が悪いぜ、知ってたんならはじめに言えっての」

「悪い悪い、俺もまさかこんな所でこんな仕掛けがあるとは思わなくってな」

 ハヤトはそう言って祠の中身を見て、中から布に包まれた棒のようなものを取り出す。

「…これは」

「何なの、それ?」

 ハヤトが布を取り外すとそこには約30cm程の刃がついた金属の棒が出てきた。

「刀だ…」

「刀?」

「正式名称は日本刀って言って、昔日本の鍛治師が作った刃物だよ、これは小刀みたいだけど」

「ふーん、包丁みたいなもの?」

「…まぁ、似たようなもんかな」

 キ…

 ハヤトはそう言って刀を鞘から少し抜く。

「わぁ、キレイだね」

 そこには長年磨かれてきたかのような輝きを放つ刀身があった。

「錆すらない…かなりの業物だ」

 チン…

 ハヤトはそれを確認すると引き抜きかけていた刀身を再び鞘の中へ戻す。

「あー、もう閉まっちゃうの?」

「ああ…」

 ハヤトは刀を布で丁寧に巻いていく。

「これが目的の品なのかしら?」

「そうじゃないかな、これ以外持っていけそうな物ないし」

 コゥの言葉にキユはそう答える。

「さてと、んじゃー、目的の物は手に入れたしとっとと戻るか」

 そう言ってケンが歩き出そうとするが

「待ってくれ…」

 ハヤトがそれを止める。

「ん、何だよ?」

「これ、元の場所に戻しちゃ駄目かな?」

「はぁ?」

 ハヤトのその言葉にケンは顔を露骨に歪める。

「何言ってんだよ、それ持って帰らねぇと意味ねぇだろ」

「ああ、解ってる」

「だったら…」

「…ケン、頼む」

 ハヤトはそう言ってケンの瞳をじっと見た。

「…お前がそういう態度取る時って、決まって何か訳有りなんだよなぁ」

 ケンはそう言うと深く溜息をついて振り返る。

「ったく、好きにしろ」

「悪いな…ケン」

「け、謝るぐらいだったら今度何かおいしい物おごれよ」

 ケンはそう悪態をつきながら歩き出そうとする。

「ああ、それぐらいはしてやるよ」

 ハヤトは刀を祠に戻し、元通り戸を閉めながらそう答えるが

「え、本当?」

「ハヤト君気前いいわねぇ」

「やー、これだけの人数におごるなんてお金持ちー」

 女性陣からそんな歓喜の声があがる。

「…え?」

 一方、ハヤトの表情は暗かった。

「だって私達だってハヤト君の我が侭聞いてあげるんだしー」

「だったら当然私達にだっておごってもらう権利があるわけよねー」

「合宿終わったらさっそくどこかに予約とらなくっちゃー」

 水を得た魚、タダという言葉の前に女性陣の暴走は続く。

「えー、ちょっとー、あのー…」

 一方、うろたえて抗議しようとするハヤトだが

『何か文句ある!?』

「…いえ、ありません」

 あえなく却下された。



 夜、夕食時。

「いやー、うまいなぁ、ハヤト」

 焼肉を食いながらケンは幸せ一杯といった感じでそう言った。

「ああ、そうだな」

 下山後、カプセルを校長に見せ事の成り行きを説明すると、意外にも校長はそれでも構わないと言い、ハヤト達のグループには賞品がちゃんと出た。

 他の面々は素直にその賞品を喜び、今食事をしている訳だが

「(…どうにも腑に落ちないな、結局校長は俺達に何をさせたかったんだ?)」

 ハヤトだけ納得がいっていなかった。

「(単に宝捜しをさせたかっただけか、いや、祠の仕掛けを解かせたかったとか、それともあの刀を見つけるのが目的だった…)」

 色々推測してみるがどれも真実ではないような気がする。

「(それにしてもあの刀があるって事は…)」

 ハヤトの頭の中で段々と結論がまとまっていくが

「ハヤトー」

 例によって例の如くミアの突然の乱入が入る。

 ガバッ…

 考え事をしていて油断したのか、ハヤトはそのミアの行動に反応できず、ミアはハヤトに抱きつきながら彼の首に腕を回して

 ゴキ…

「ぐっ…」

「…ありゃ、何か鈍い音が?」

 どうやら勢いが突きすぎて見事ハヤトの首に致命的ダメージを与えてしまったようだ。

「ミーアー…」

「きゃー、ハヤト怖い、それ怖いって…」

 首を横に曲げながらハヤトは、ギギギ…といった感じにミアの方へ振り向いていく。

「てめぇはどうして何時も何時もいらん事をするぅ!!」

「あああ、痛い痛いー!!」

 こめかみを拳でグリグリと挟みながらミアを苛めるハヤト。

「えーん、だってハヤトが何か元気なかったからちょっと元気付けようとしただけだよー」

「だからっていきなり首の間接決める奴がいるかぁ」

 今なおハヤトの首は曲がっている。

「あー、ったく、うるせーから止めろっ!!」

 ゲシィ!!

 隣で飯を食っていたケンがハヤトの横っ面に蹴りを放ってくる。

 グキ…

「はぐっ…」

 その衝撃でまたも鈍い音がし、ハヤトの首が元の角度に戻る。

「ぬぉぉ、痛ってー…」

 それでも痛いものは痛いのであろう、ハヤトは首を押さえ込みながら倒れ込む。

「おー、元に戻ったじゃねぇか」

「ケン、てめぇ…」

「食事中に暴れる奴が悪い」

 どうやら彼は食事に対しても律儀な男のようだ。

「ったく、乱暴な奴だ」

「お前に言われたかねぇよ」

 ケンはそう悪態つきながら再び食事を始める。

「はぁ、せっかく考えがまとまりそうだったのに…」

「あら、何か考えてたの?」

 ケンと同じように肉をひっくり返しながらコゥがそう言ってくる。

「…そう見えなかった?」

「んー、ハヤト君黙ると何考えてるのか解んないのよねぇ」

「そうなのか?」

 コゥの言葉を聞き、ハヤトが残りの面々にそう尋ねると皆一様に首を縦に振った。

「…なんだかなぁ」

「それで、ハヤトは何考えてたの?」

「んー、どうやったら真犯人と会えるかなぁって」

『真犯人?』

 ハヤトのその言葉に皆ハテナマークを浮かべてそう聞き返す。

「真犯人ってのは言葉悪いか、んー、一連の出来事の真相を知ってる人物って言えばいいのかな?」

「それって誰なの?」

 ミアはハヤトにそう問う。

「さぁ?」

「さぁって…」

「だって実際に会わないと解らないだろ」

「ハヤトの口振りだと犯人が誰か知ってる風に聞こえるんだもん」

「そりゃ悪かった、犯人が誰かは解らないけど、犯人がどんな奴かは解った」

「どんな人なの?」

「秘密」

「何よそれ、けちー」

 ミアはそう言って機嫌を悪くしたのか食事に集中する。

「(…まぁ、嫌でも今夜はっきりするさ)」

 ハヤトはミアとミユを見ながら心の中でそうつぶやいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ