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私立獣耳学園  作者: 御門屋運命
第02話「海へ、獣耳学園」
15/80

六時限目『逆転、覚醒の時?』

 〜 六時限目『逆転、覚醒の時?』 〜


 ハヤトにとって悪夢の一夜が過ぎ、その翌日。

「…あー」

 ハヤトの目覚めは最悪だった。

 別に体調が悪いわけではなく、気分が悪いわけでもない。

 兎に角、彼の目覚めは最悪だった。

 上半身を起こし、周囲を見渡すが何も見えない。

 太陽はまだその輝きを見せていないようで、部屋の中は薄暗かった。

 もし、何かを見るならば目が慣れるのに数分を要しただろうが

「(…まだ、早いか)」

 早起きは三文の得などと言う言葉は現役学生のハヤトにとってあまり意味は無く。

「(寝よ…)」

 目先の欲に身を任せる快感の方がよっぽど有意義であった。

 大きすぎる布団に身を沈め、その温もりと肌触りを堪能しようとするハヤトだったが。

 モゾ…。

「(…ん?)」

 違和感。

 いや、異物感と言うべきだろうか。

 布団という自分のテリトリー内に、自分以外の何かがあるのを感じる。

「…んー」

 ガサゴソ…

 そんな状況で黙って寝れるほどハヤトは無警戒な性格をしておらず、寝ぼけながらも布団の中に手を伸ばして探る。

 すると

「…尻尾?」

 ハヤトの手には見覚えのある尻尾が握られていた。

 それを辿るように手探りでその正体を探る。

 それは意外と身近にいた。

 ハヤトが眠っている真横に並ぶようにそれは眠っていたのだ。

「…何だ」

 蓋を開けてみれば何てことは無い。

 見知った人物がハヤトの横に眠っていただけだった。

「ふぁ…」

 ポフ…

 正体が解って安心したのか、ハヤトはそのまま横になって眠りに落ちてしまう。

『すぅ…、すぅ…』

 二人とも、実に穏やかな寝息を立てていた。

 さて、文章に誤字があったので訂正しておこう。

 ハヤトの目覚めは最悪ではなく。

 ハヤトは寝起きが最悪と呼べる程に悪かった。



 ケンにとって実に愉快な一夜が過ぎ、その翌日。

 自称不良らしからず、ケンの寝起きは良い。

 日常の生活からそうなのか彼は日の出と共に目覚め、自称不良らしく、まだ隣の布団で眠っているはずのハヤトにちょっとした過激な目覚めをプレゼントしようとするが

「っ!!」

 逆に過激な目覚めをプレゼントされたのはケンの方だった。

「(こ、これはぁ!!)」

 そこに広がる光景は彼の想像を絶するものだった。

 声を上げなかったのを自分で誉めてやりたいぐらいだった。

「(な、何てこった…)」

 よもや自分の眠っていたすぐ隣でこのような光景が広がっていようとは誰も想像しなかっただろう。

「(こーゆー時は…)」

 カコン…

 ハヤトを起こさぬよう、扉の鍵を開けてこっそりと部屋を出て行くケン。



 コゥ、キユ、ミユにとっては中々波乱に満ちた一夜が過ぎ、その翌日。

「ふぁー」

「あら、大きな欠伸ね」

 そう、大きな欠伸をするキユにコゥが言う。

「うーん、私もミユも寝起き弱くってさぁ」

 キユの言葉は正しく、ミユは未だに布団の中で寝息を立てている。

「おーい、ミ…」

「まだ少し時間あるから寝かせておいてあげましょう」

「…そうね」

 確かにその通りだとコゥの言葉を受け入れるキユ、そこへ。

 コンコン…

 戸をノックする音が聞こえた。

「はーい、どなたですか?」

 コゥはそう扉越しに答える。

 女子部屋であるからして警戒するのは当たり前である。

「おー、委員長俺だ」

「俺だ何て人知りませんけど」

 明らかにケンの声だと解っていながら、コゥは笑ってそう答える。

「解ってやってるだろ」

「ええ、もちろん」

「…いいから開けてくれ」

「あら、夜這いをするにはちょっと遅いわよ」

「馬鹿言ってないで開けてくれよ、じゃないとせっかくの面白い場面を見逃す事になるぜ」

 流石にこれ以上の問答は無用だと思ったのか

 カコン、ガチャ…

 コゥは鍵を外して扉を開ける。

「どういう事?」

「まぁ、論より証拠、百聞は一見になんとやら、俺らの部屋見たら一発で解るぜ」

「何かあるの?」

 その会話を聞いていたキユが面白い事と聞いて参加してくる。

「それは見てのお楽しみ」

「へぇ、じゃあミアちゃんとミユも起こしてくるね」

 そう言ってキユが再び部屋の方へ行こうとするが

「あー、いやいや、ちょっと待った」

「ん?」

「ミユにはちょいと刺激が強いかもしれんからな、寝てる方が都合良い、それにミアはそこにゃいねぇだろ」

「…あ、本当だ」

 ケンのその言葉を聞いてキユが部屋を確認すると、確かにそこに居るべき猫人の姿が無かった。

「ケン、まさか…」

「へへへ…」

 コゥの言葉にケンは愉快愉快とばかりにニヤニヤと笑う。



 ミアにとっては非常に残念な一夜が過ぎ、その翌日。

 布団の中で丸くなりながら眠るミアは幸せだった。

 どんな夢を見ているのかは定かではないが、その顔には微笑みが浮かんでおり、とにかく本人にとって幸せな夢を見ているのは間違いないようだ。

 もっとも、その幸せも来訪者が来るまでの短い間だった。



『こ、これは…』

 見事にコゥとキユ、二人の声がステレオとなる。

 二人とも中々のつわものでちっとやそっとの出来事ではそれ程驚きの表情を見せないが、今回ばかりは違った。

「どうだ、面白いだろ」

 最初の発見者、ケンが二人の後ろからそう言う。

 今、三人の前に広がっている光景はそうそう見られる光景ではなかった。

 何故なら

『すぅ…、すぅ…』

 着衣の乱れのある男女が一つの布団で眠っているのだ。

 もちろん、その男女とは他でもない、ハヤトとミアの二人。

 二人は仲睦まじく、お互い抱き合って暖めあうような格好で眠っていた。

「ちょっと、ケン、これまずいって…」

「いくら公認でもこれはねぇ…」

 その状況から余りある程の出来事が想像される。

「おいおい、あんまり騒ぐと…」

 ケンが指摘をしようとするが

『ん…』

 やはりキユとコゥの声が大きかったのか、唸り声をあげながら二人が目を覚ます。

 先に目を開いたのはハヤトだった。

「…あれ」

 布団の中から眠たそうに三人の方へ視線を向ける。

「…何だ、委員長か」

 その視線が弱々しくコゥに固定される。

「え、あ、うん…」

「んー…」

「……」

 何故自分が男部屋に居るのか疑問に思わないのかとツッコミを入れたくなるコゥだが

「…んにゃ」

 コゥが喋る前にミアがハヤトの隣でそう寝ぼけ声で言う。

「ミ、ミアちゃん…」

 キユがゆっくりとそう話し掛けるが

「んー、もう起きなきゃいけない時間?」

「え、ううん、朝の集合にはまだ少し時間があるけど…」

「…あー、そうなんだ」

 どうにも会話が噛み合わない。

「じゃー、もう少し寝かせといてくれ」

 キユのその返答を聞いて再び目を閉じ眠ろうとするハヤト。

「…じゃー、私も寝る」

 同じく、ミアも目を閉じて眠ろうとする。

『……』

 そんな二人を見て三人は更に沈黙する。

 どう見てもそう見えるのだから仕方があるまい。

 だが…

「…待て」

 ハヤトが眠りに落ちる前にそう言う。

「にゃ?」

「ミア、何でお前がそこにいる?」

「何でって言われても、…何でだろ?」

「……」

 一瞬の間が空き。

 チッチッチ…、カチッ

 と、まぁ、マンガだったらそんなタイマーの音がしただろう。

「だあぁぁぁ!!」

 ガバッ!!

 同時にハヤトは布団から飛び起きた。

 文字通り布団を跳ね除けて

「何で一緒に寝てるんだ!!」

 どうやらようやく脳内目覚ましのスイッチがオンになったようだ。

 一気に状況を把握して慌てふためく。

 先程まで一緒の布団で仲良く眠っていたのが嘘のような慌て方だ。

「…あれー、そう言えば何で私ここに居るの?」

 一方こちらはまだスイッチが入っていないようで、現状を把握できないでいた。

「ミ、ミアちゃん、前!!」

「えー?」

 着崩れた浴衣から、張りのある肌が姿を表そうとしていた。

「おー」

 ようやく目覚めてきたのか状況を把握しはじめる。

「…おー?」

 自分の姿を確認してハヤトの姿を確認する。

 ハヤトもミア同様に着崩れた格好をしていた。

「…えーっと」

 そして出した結論は。

「そっかぁ、私達とうとう禁断の一線を…」

「洒落にならん事言うなぁ!!」

 ドフッ!!

 ハヤトは足元に転がっている枕をミアに投げつける。

「…はっ!!」

 そんなハヤトにキユとコゥの視線が突き刺さる。

「ま、待て、俺は何もしていない、そんな眼差しで俺を見るな」

 キユは何かの期待の眼差しを、コゥは多少軽蔑するような眼差しをしていた。

「…とは言っても、何も無いとは思えないんだけど」

「そうよねぇ…」

 二人の言葉は最もであった。

「観念すりゃいいのによぉ」

「ケン、てめぇ…」

 ケンの言葉をそこまで聞いてハヤトは思いつく。

「待ったぁ!!」

 どこぞのゲームで言ってそうな台詞とツッコミでハヤトが叫ぶ。

「いる、俺が何もしていない事を証言してくれる証人がそこにいるじゃないか」

「誰?」

 ハヤトの言葉にキユが聞き返す。

「ケンだよ」

「俺かよ」

「仮に俺とミアの間に何かあったとすれば、隣で寝ていたケンが気づかない訳が無い」

 証人の証言によってこの状況を打開しようとするハヤト。

「どうなの、ケン?」

「うーん、とは言っても俺熟睡してたからなぁ」

「ってことは何も見てないの?」

「まぁな」

 その言葉を聞いてハヤトは好機を見つける。

「どうだ、何も見てない、つまり何もなかったって事だろ」

 強引な理論である。

「でもよ、こういうのは本人に聞いた方が一番早いんじゃねぇか」

 ケンの視線の先には浴衣の着崩れを直しているミアがいた。

「どうなのミアちゃん」

「んー、それが覚えてないのよねぇ」

「ほれ見ろ、俺とミアはただ一緒の布団に寝てただけなんだ」

 ハヤトはそう言うが

『……』

 場に沈黙が流れる。

 それはそうだろう。

 何と言っても年頃の男女が同じ布団に寝ていたという事実だけは言い訳のしようが無いのだ。

「俺はそれだけでも十分問題だと思うけどな」

「うん、ちょっと不純異性交遊だよねぇ」

「ハヤト君、大人しく自首したほ方が…」

「俺が悪いのかよ!!」

 ケン、キユ、コゥの言葉にそういい返すハヤト。

「大体、まずは何でミアが男部屋にいるかの方が問題だろ!!」

「…ああ、そういやそうだな」

「何かあまりにも自然だったから気づかなかったや」

 確かに普段の彼女の行動から考えれば無理のない行動である。

「どうなのミアちゃん?」

 コゥの問いに

「それが覚えてないのよねぇ」

 ミアはまたもそう答える。

「お前は夢遊病者か…」

 いい加減うんざりしてきたハヤト。

「あー、でもハヤトの温もりは覚えてるよ」

「…何?」

「こう、ハヤトの腕に抱きしめられてぇ…」

「なっ!!」

 ミアがリアルなアクションをしながら解説を始める。

「ハヤトってばまるで子供みたいに私をずっと抱きしめて離さなくて、ハヤトって抱き癖でもあるのかな、それはもうぎゅっと抱きしめられてた、その時の気分と言ったらもう…」

 ミアのその実体験を食い入るように聞き込むキユとコゥ。

 ケンはニヤニヤ笑っている。

 一方ハヤトは

 カアァァ…

 顔を真っ赤にして震えている。

 覚えていない事ならいくらでもごまかせるし、知らない事なら幾らでも言い訳できる。

 だが、当人がその行為を覚えていてみんながそれを見ていた状況では打つ手が無い。

 ただただ、その行為を目の前で解説される恥ずかしさは並ではなかった。

「お・ま・え・らぁ…」

 よって

「ここは男部屋だ、出て行けぇぇぇーーー!!」

 この辺りの横暴な言動しか出来ないのであった。


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