表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
68/79

エピローグ 女王マティルデと漆黒の犬

 僕の名前はエーリッヒ・ハーゼ。

 グリフ小学校に通う3年生だ。


 ここはノルトハルムの首都エッケハルディン。


 僕はあんまり勉強が得意じゃないけれど、歴史は好きだ。

 教室では今、その大好きな歴史の授業の真っ最中。


「それでは今日は昨日の続きから……マティルデ女王が農業改革に成功したところまでいきましたね。

 その農業改革で爆発的な収入を得、経済力と軍事力を蓄えた我が国はアンデクス帝国の属国から抜け出すべく独立宣言をしました。するとそれに激怒したアンデクスが軍を送り、戦争が始まりました。

 これが西方戦争です。ここはテストに出ますからきちんと覚えるように」


「そこでマティルデ女王の王配クロノス将軍が自ら軍を率い、アンデクス軍を撃破。兄であったアンデクス王を殺し、ノルトハルム王国の勝利で戦争が終わりました。

 そしてアンデクスはノルトハルム王国に併合され、大ノルトハルム帝国となりました。そして首都をマティルデ女王の生まれ故郷であるここエッケハルディンに移したのです。

 ここからが大ノルトハルム帝国の黄金時代とされ……」



 僕はマティルデ女王の話が好きだ。


 ノルトハルムの小学校の玄関には、必ずマティルデ女王の肖像画が飾られている。

 絵はなんだかイマイチだけど、本当はものすごい美人だったんだって!


 マティルデ女王の肖像画には、いつも黒い大きな犬が描かれているんだ。

 その犬の背に腰かけて女王が微笑んでいる姿が有名なんだけど……



 この犬って女王の旦那さんのクロノス将軍なんだって!


 クロノス将軍は大の肖像画嫌いで、1枚も絵が残ってないらしいんだけど、すごいイケメンだったらしい。



 アンデクスとノルトハルムが戦争になった時に、実の兄だったアンデクス王に『女王の犬に成り下がりおって!』って罵られたらしい。


 そうしたら将軍は『犬は犬でも俺は東方の猟犬でな。主人の命令を聞くだけではなく、自分で考えて獲物を追い詰めて狩りをする犬なんだ。そして一生に主人は一人だけなんだ』って返したんだって。


 この逸話大好き!



 この言葉で実の兄と祖国を敵にまわして将軍は戦えるのかと、不安に思っていたノルトハルム軍の兵士の士気が一気に爆あがり!

 アンデクス軍を完全撃破。


 この勝利がノルトハルム軍、躍進の切っ掛けになったんだよ。




 僕、調べたんだ。

 東方にはハポンという国があってそこのカキタ犬っていう犬種がいて、その犬のことを将軍は言ったってされているんだけど、その犬種はこのあたりの犬とは違うんだって。


 普通猟犬は主人の命令で動くものなんだ。

 例えば「穴熊を追い出せ」「噛みついて足止めしろ」「撃ち落とした鳥を拾ってこい」みたいにね。


 でもこのカキタ犬は自分で考えて獲物を探し当てて、襲って弱らせて、主人の前まで誘導して、はいご主人撃って下さいってするんだって。


 すごくない?


 しかも主人は、忠誠を誓うのは、一生一人だけ。


 だから毎日主人を駅まで送っていたカキタ犬が、主人が死んでもずっと主人を駅で待ち続けたって悲しい話もあるんだよ。



 すごく賢くて強いのに、大人しくて優しいから、こっちの国で警察犬にしようとしたんだけど、基本自分で判断しちゃうし、主人と決めた警察官以外の命令は聞かないから失敗したんだって!




 で、話は戻すけど、それで肖像画嫌いのクロノス将軍はそれから『俺のことは大きな黒い犬として描け』って命令したんだって。


 それを真に受けた画家が背中にマティルデ女王を乗せた姿で描いたら、将軍は大笑いして大いに気に入ったんだって。


 それ以来マティルデ女王の肖像画の定番は、この姿になったそうなんだ。




 あ、下校のチャイムが鳴った。

 おじいちゃんが迎えにきたから早く行かなくちゃ。


 おじいちゃんのおじいちゃん。のおじいちゃん…どの位昔の人か知らないけれど、僕のご先祖さまのジュリアーネ・ハーゼ伯爵令嬢が、マティルデ女王の親友だったんだって。


 マティルデ女王直筆の手紙も何枚か残っていて、うちの家宝になってる。


 父さんがそれを売って家を買おうとしてるけど、おじいちゃんが元気なうちは、絶対売らせてくれないと思うよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ