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52 阿呆と初めて言われた【sideマティルデ】

「二人目の妻はアンナ。16の時に結婚した。兄上が国庫の金に手を付けて、それを黙らせるために財務大臣の24才の娘と、戦場に行っている間に知らないうちに結婚させられていた。アンナは麻薬中毒で薬とSEXにしか興味がない女でな。結婚後は別邸にたくさんの男を連れ込んでお楽しみだったが、避妊に失敗したらしく一人子どもを産んだ。俺は性病が怖いからアンナとヤッたことはないから誰の子か知らんが、俺の籍には入れてやった」


「……」


「だが、財務大臣の娘の夫になれたのは良かったぞ。俺は13から戦場に出ていたんだが、兄上は侵略したがるわりに軍事費を出し渋るから苦労していたんだ。兵士を犬死させるわけにはいかんからな。だから財務大臣を兄との癒着で脅して国庫から散々、金を引き出してやった。おかげで連戦連勝。軍事大国として諸国に恐れられるような国になったというわけだ」


「……」


 この人はいったい、どんな壮絶な人生を送ってきたのだろう。



 フェルディナントに大切にされていない、王女が~~なんて悩んでいた過去の自分がバカみたいに思える。



 それにこの男、顔に似合わず、すごく饒舌なのね。


 くすっと笑うと男は怪訝な顔をした。


「何だ」


「いえ、それを聞いて安心しました」


「ふん。なら良い。他に心配事はないか」


「私が傀儡の王になることは承知しています。ですが、実質の支配者である貴方にお願いがあります。アンデクスのためではなく、今後の治世は少しでもこの国の、この国の民のためにも心を砕いてはいただけませんか」


「阿呆。誰がお前を傀儡の王にすると言った」


「え!?」


「何のため、民の税金で作られた貴族学院で勉強できたと思っているんだ。その知識を民に還元するためだろうが。それが地位のあるものの義務だろう? 王の仕事をせずに、ぐうたらと血税で遊び暮らすつもりか」


「……」


「マックス!」


「はい」

 ドアの向こうから彼の側近が返事をし、入室してきた。


 その手には大量の紙の束。


「俺との結婚でノルトハルムはアンデクスの属国となる。そこでこの国を立て直すための復興支援金がアンデクスから出る」


 渡された紙に書かれた金額は、国家予算の半分にあたる金額だった。


「そこでお前に宿題だ。ここに俺の部下が調べた現在のノルトハルム現状を調べた資料がある。この戦争で何人死んだか、戦傷兵士は何人いるか。寡婦は、孤児は、焼けた家屋は、畑は、潰れた橋は、崩れた砦は、使用不可となった道は…とかだ。これを踏まえて、この復興金の分配を考えろ」


「え!?」


「学院の卒業試験ではトップだったんだろう? その頭をフルに使え」


「……」


「心配するな。最終決定は俺と議会がする。まずは王として国の現状を把握しろ」


 30センチはある紙の山に言葉が出ない。


「3カ月後に結婚式と戴冠式を行う。準備は全てこちらで行うから、お前はこの宿題をしながら体力をつけろ。執政者は体力勝負だ、即位したら休んでる暇はないぞ」


 目まぐるしいスピードで、外堀が埋まって行く状況に茫然とする。


 すばやく立ち上がり、ドアに向かった彼が、突然立ち止まった。


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