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41 王室病の宣告と半年の余命【sideフェルディナント】

 その2日後、王女の血を取って帰った医師が重い足取りで戻ってきた。

 王女も起きていたので3人で医師の話を聞くことにした。


「ゾフィー王女は王室病です」


「…王室病?」

 聞きなれない病名に思わず聞き返した。


「ずいぶん前から発症した方がいないので、私も過去の記録でしか存じ上げないのですが」

 と前置きをした上で話し出した。


 王室病はその名の通り、王族だけが発症する伝染病だそうだ。


 一般の人には抗体があって感染しても発症しないが、まれに王族にはその抗体がない者が生まれていたらしい。

 だが現在、婚姻により王族たちの血は薄まり、ここ50年ほどは発症したものがいないため、我が国では撲滅されたと思われていた病気だった。


 そして、この病は恐ろしい事に治療法・治療薬がなく、発症してしまうと100%死に至ってしまうというのだ。

 かつては多数の王族がこの病で亡くなっていたらしい。



「紫の瞳を持つ殿下は先祖返りで、王族の血が濃かったのでしょう」


「……間違いないのか」


「…はい。血液にその病原がおりましたので確かです」


 わっとグレタ嬢が泣き伏した。


「今も治療法はないのか?」


「罹患する者がいないため、この国では誰も研究していないんです。外国なら可能性があるかもしれませんが…」


 そこで王女が初めて声をあげた。

「お父様が私のために、外国に治療法を尋ねる訳がないわ……先生、私はあとどれくらい生きられるの?」


「文献によれば……半年ほどかと」


「…そう」


「これから徐々に内臓の機能が失われていき、痛みを伴います。鎮痛剤をお出しいたしますから辛くなったらお飲みください」


 そう言って医師は退出して行った。




 王女として生まれながらも冷遇され、辛い日々を耐えてきたのに…!


 紫の瞳でなければ、母方の男爵家に引き取られ、令嬢として幸せに暮らせただろう。

 紫の瞳でなければ、こんな病にもかからず……!


 まだ17才だぞ!

 なぜ王女だけがこんなめに…!



「良かった。半年あるならフェルの結婚式は見れるね」


 ベッドの上で微笑む王女。


 俺とマティルデの幸せな姿を見て、貴女はどうするんだ。

 貴女自身は幸せを知らないまま、死んでしまうのに。



「…しっかり食事を取って体力をつけましょう。起きられるようになったら、私がどこへでも連れて行って差し上げます」


「フェル、ほんとに? じゃあまた市井に行きたい! あとね…馬に乗ったことがないから乗ってみたいの」


「いいですよ。私がお乗せいたしますから、丘の神殿まで遠出しましょう」


 微笑んで答えながら決心する。

 この状態の王女を、アデラィーデ王女に危害を加えさせてなるものか!



 その日から俺は1日中王女の側を離れないようにした。

 夜も王女の部屋の床で眠り、近衛の寮にも戻らない。

 きっとまた噂になるだろう。


 だがもう、なりふり構っていられない。


 このまま死んでしまうなんて、あまりにも悲しすぎるじゃないか。

 この不幸ばかりだった少女に、少しでも幸せを感じて欲しい。


 ただ、それだけだった。


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