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37 両親たちとの話し合い【sideフェルディナント】

 両親、侯爵夫妻、俺、ニコラウス、マティルデがエッケハルディン侯爵家屋敷の応接間に揃っていた。


 まずはエッケハルディン侯爵が口を開く。


「女子供の噂話だと今まで放っておいたが、二人の結婚式まであと1年だ。妙な言いがかりをつけられたくないから、ここでしっかり事実確認がしたい」


「噂話とは?」


 領地で暮らす両親には王都の噂話など入ってきてはいないようだった。



 そこでニコラウスが経緯を簡単に説明した。

 俺の行動と王女との仲を疑う噂。


 ところが聞くと、今はマティルデが俺と王女の仲を引き裂く悪役だと、揶揄されているというのだ。



「なんでそんな……」


 俺は王女の不遇が見ていられなくて、善意で手を貸しているつもりだった。


 そのせいでマティルデがそんな事を言われているなんて、俺は何をやっているんだ!



 両親は激高し、エッケハルディン侯爵たちに膝を折って謝罪していた。


「何故、婚約者の元にはめったに来ず、休日を返上してまで王女の側にいるんだ? しかも最近は深夜まで王女の部屋にいるそうじゃないか」


 ニコラウスの言葉に両親が絶句する。


「二人きりではありません。侍女殿も同席しています」


 そう答えるが、父上の怒号が返ってくる。


 最近は勉強に熱が入り過ぎて、深夜になることもしばしばだ。



「そういう問題じゃないだろう! 婚約者を蔑ろにして、その時間を別の女性に使っているんだ! 浮気と思われて当然だろう!」


 そう思われても仕方ない。でも……!


「浮気など…! 決してやましいことなどありません!」


「では王女の部屋で、深夜まで何をしていると言うんだ」


「……」


「フェルディナント!」


 王女は字が書けないなどと、口が裂けても言えない!


「……騎士の守秘義務として、申し上げることはできません」


「お前この期に及んでも!」


 父上の拳が見え、目を閉じたがエッケハルディン侯爵がそれを止めた。



「伯爵。その事に関してはいいんです。フェルディナント君に不貞行為がないことは調査済ですから」


 驚いて侯爵を見た。

 調査…済…?



「大事な娘をやるのです。彼の素行については調べておりましたから……彼が話せないのも理解しております。ただ…いささかやりすぎではなかったかな?」


 そう侯爵に諭された。

 全くその通りだ。

 もっと上手くやる方法はあったはずだ。



「…はい」


「君のその優しさがいつか首を絞めることになるよ。人間は万能じゃない。全ての人を救えるわけではないんだ。真に大切なものを救うため切り捨てなくてはいけない場合もあるんだ。それは領主の資質として必要なことだよ」


「……はい」


「君にとって真に大切なものはなんだ?」


「……マティルデ嬢と家族と……領民です」


 俺の手は小さい。


 大切にできるものは限られている。

 人助けをしてるんだから大目に見てもらえると、いい気になっていたのかもしれない。



「なら、今後はそれを守るために行動しなさい。いいね」


「はい」



 その後は建国記念式典の夜会の話になり、話し合いは終わった。


 今思えばこの日がターニングポイントだったのだろう。


 この日の侯爵の言葉と、その決心を忘れなければ、後の不幸は起こらなかったかもしれない。


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