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35 マティルデと初めてのキス【sideフェルディナント】

 今まで彼女の誕生日プレゼントを用意してくれていた母上に、成人したんだから今年から自分でしなさいと言われていたんだった。


 いくら気の毒な王女を守ることに忙殺されていたとはいえ、婚約者の誕生日を忘れるなんて、紳士にあるまじき事だ。


 マティルデには、本当に申し訳ないことをした。




 ここは挽回しなければと、貯めていた小遣いとまだ数カ月分しか貰っていない近衛騎士の給料全額を使って、ブルーダイヤモンドのイヤリングを贈った。


「正直に話す。今までのプレゼントも全て母上が整えて下さっていたんだ」


「……知っていました」



 ……だろうな。


 もうここはマティルデに全て話して懺悔するしかないと、面倒くさくて親まかせにしていたこともぶちまけた。

 正直に白状し過ぎだと彼女には笑われたけど。


 でもその笑顔が綺麗で、可愛くて……。



 思わずキスしてしまった!



 こんなに優しくて綺麗な子が、俺の奥さんになるなんて現実なのか。


 マティルデとグリフ領に帰って、俺が伯爵になる未来なんて、なんだか想像ができなかった。





 アデラィーデ王女の手の者が近くで監視しているのか、俺のちょっとした隙にゾフィー王女に危害を加えてくる。


 本当にこの執拗さ異常だ。



 それほど『王家の色』とは王族にとって重要なのか、それほどその色を持つ王女が羨ましく、そして憎いのか……。


 だがそんな色で生まれたばかりに、なんて不幸なんだとゾフィー王女に同情していたが、彼女自身はそうは思っていないようだった。



 今夜は王宮で夜会が開かれる。


 月に一度行われる王家主催の夜会は、王族の出席が義務付けられている。

 本来、夜会は18才以上の成人しか参加できないが、王族は16才から出席しなくてはならない。

 そのため1週間前に16才になったゾフィー王女は、今夜が社交界デビューだ。


 だが、彼女の足にはいたぶられた傷の血がにじんだまま、まともに歩くことはできなかった。



「王女様。今日の夜会は欠席いたしましょう」

 王女の包帯を巻きなおしながらグレタ嬢が言った。


「……嫌よ。あ、あたしは王族なのよ。出る義務があるの」


「しかし…」


「あたしは『王家の色』を持った王女なのよ。誰よりも正統な血を持ってるの」



 そう、王女にとってその色は厄介なものではなく、唯一の誇りだったのだ。


「フェルディナント卿。あたしをささえて歩いて」



 なかなか気骨があるじゃないか。


「仰せのままに」




 こうして俺は毎回、王女を支えて夜会に参加した。

 支えるため身体が近くなるのは仕方がない。

 だがそれを揶揄するヤツがいる。


 アデラィーデ王女とゲオルグ王太子だ。



「婚約者のいる男に媚を売って見苦しい。恋仲なのか? お前は婚約者から奪うつもりなのか?」


 俺とゾフィー王女の噂を、増長させるような事をわざと言ってくる。

 誰のせいだと思っているんだ!


 しかし相手は王太子。

 何も言わずに無視するしかない。



 だがこの行為が周囲には肯定と取られ、王女との噂は俺の知らないところで、どんどん一人歩きしていった。


 だから少し王女と距離を取るべきかと思っていたら、彼女には大きな欠点があることを知った。


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