表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
34/79

32 はずれ王女の事情【sideフェルディナント】

 ゾフィー王女の護衛騎士になって1カ月。

 色々知ったことがある。


 王女なのに、専属侍女は一人しかつけられていない。

 だから侍女のグレタ嬢は、休みを返上して王女の世話をしている。


「こう言ってはおこがましいですが、王女は私の妹みたいな存在なのです。元々王女の母君であるユーリヒ男爵令嬢と私の母は幼馴染で、姉妹のように育ったのです」


 その後、大人になったユーリヒ男爵令嬢は王宮で働く事になったそうだ。


 王宮で働くことは行儀見習いのようなもので、下級貴族の令嬢には一種のステータスとなり、好条件の結婚相手を見つけるのに有利になるからだった。



「でもそこで……王にむりやり関係させられ…」

 グレタ嬢の声が小さく低くなった。


「…強姦されたと?」


「…はい。綺麗な方でしたから」


 足元から崩れるようなショックを受けた。




 俺は幼少から王を守る近衛騎士に憧れていた。

 大人になり実際に近衛騎士になると、イジメがはびこる内情に絶望したが、忠誠を誓う王までもがそんな低俗な人物とは……!



「王女を産み落とした男爵令嬢は冷遇され、王女が2才の時に亡くなられました。私が侍女として王宮に上がった時には、乳母すらろくに付けられていない状態で……。母も王女の事を心配しておりましたし、強引に王女の専属侍女になったのです。

 でもたった一人でお世話するのは大変で……今回フェルディナント卿が専属騎士になって下さって助かります。」


 嫌がらせで『はずれ王女』に配属されたことに憤っていたが、王女なのにこんな境遇とは……。



 どうせ5年で領地に帰る身、嫌がらせで出世も望めない身だ。

 それまではできる限り彼女たちの力になりたい、そう思った。



「護衛が付けば外にも出られます」

 グレタ嬢が弾んだ声で王女を見た。


「護衛がいないので、王女様はこの部屋からほとんど出たことがないのです。夜会の出席は強要されているので、その往復だけ……王女様、どこに行きたいですか?」


「……お庭に…お庭にお花を見に行ける?」


 王女の言葉にグレタ嬢が俺を見てきたので、頷いて言った。


「お供いたします」




 それからは王宮内の色んなところに出かけた。



 庭園の木々や花、廊下に並ぶ絵画、美術品。

 あらゆる物に驚き、目を見開く小柄な王女。


「まるで子どもだな」


 だが俺にはまだ、警戒心丸出しで近づいて来ない。


「いや、子猫だな」


 今にもシャーっと声を出して後ずさりしそうだ。




 こうして外に出歩くと無表情だった王女の顔に、少しずつ笑顔が浮かぶようになってきた。


 そんな王女をもっと驚かして、笑顔にしてやりたい。



 そう思って俺は許可を取り、王女たちを市井にも連れて出してやった。


 行きかう馬車、市場、屋台、洋服店、菓子店。

 平民たちの生き生きとした姿に、活気ある街並み。


 目を丸くして、ふだん無口なその唇から、たくさんの感嘆の言葉が紡がれる。

 はじける笑顔に、せわしなく動くその身体。


 楽しそうにグレタ嬢とおしゃべりする王女を、俺は微笑ましく眺めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ