14 友人たちの忠告【sideマティルデ】
今日は休日で、王都のカフェに来ていた。
ご一緒するのは私の王都での数少ない友人たち、ハーゼ伯爵家のジュリアーネ様、ブルノン伯爵家のリューディア様、シーボルト男爵家のエリーゼ様だ。
「大丈夫なのティルデ」
そう心配そうにまず声をかけてきたのは、2才年上のジュリアーネ様だ。
「うん。大丈夫。信じるって決めたの」
「貴女がそう言うならいいけど……王女と婚約者の噂、落ち着くどころかますます大きくなってるわよ」
あれからもフェルディナント様は忙しいとかで、数カ月に1度しか会う事がない。
「どこへいくのにも四六時中一緒。王女の部屋に日が暮れるまで入り浸って、休日も返上してずっと側にいるって話よ。」
「……」
「いくらやましいことはないって言っても、やってる事は婚約者のいる男がすることじゃないし、貴女とエッケハルディン侯爵家に、泥を塗ったとも同じよ。それに…」
ジュリアーネ様が一旦口ごもり、言いにくそうに言葉を吐き出す。
「貴女は社交界デビューしていないから、夜会で二人の姿を見ていないでしょうけど……いつもべったりくっついて、見ているこっちが気分が悪くなるほどなのよ」
王族特権で私と同い年であるゾフィー王女は、未成年でも夜会に出席している。
「アデラィーデ王女殿下やゲオルグ王太子殿下に『婚約者のいる男に媚を売って見苦しい。恋仲なのか? お前は婚約者から奪うつもりなのか?』と言われても二人共否定もしないでくっついたまんま。頭がおかしいとしか思えないわ」
「学院の『淑女科』でもずいぶんと噂になっているわ。その…その…」
次に声を上げたリューディア様の言葉が詰まる。
「……リューディア様が言えないなら私が言うわ。知っていた方がいいと思うから」
真剣な表情でエリーゼ様が私を見据える。
「フェルディナント様とゾフィー王女は愛し合っていて、それを引き裂いているのはティルデだって。幼いフェルディナント様に侯爵家の権力で無理やり婚約を強要して、真実の愛を知った彼を今も縛り付けている悪女だって」
その噂の出所に想像がついた。
警告はしたのに懲りない方だ。
「私たちは悔しいのよ! ティルデはこんなに美人で、頭もよくて、優しい娘で…私たちの自慢の友達なのに、こんな酷いことを言われて……! 腹が立って仕方ないのよ!」
「王女も王女だけど、フェルディナント様はいったい何をしているの? 次期伯爵としてあまりにも軽率で脇が甘すぎるわ!」
「……ありがとう。心配してくれて。でも、大丈夫よ」
そう言って私は笑った。
笑うしかなかった。
彼女たちの婚約者はみな評判の良い青年ばかりで、3人とも大事にされている。
そんな彼女たちに、愚痴をこぼすことはできなかった。
それは侯爵令嬢としてのプライドなのか。
それとも現実から逃避したいだけなのか。




