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第4章 8話
「慣れると、普通だった」
優弥は続ける。
「最初からいたみたいに、自然に馴染んでた」
「朝起きて、三人で飯食って」
「学校行って」
「帰ってきて」
「たまに三人で出かけたりもした」
特別なことは何もない。
だからこそ、重い。
「夏海、意外とよく笑うやつでさ」
少しだけ肩をすくめる。
「くだらないことでツボるし」
「変なとこで意地張るし」
「……面倒くさいやつだった」
その言い方に、わずかな温度が混じる。
「でもまあ」
「普通に楽しかった」
短く言い切る。
伸也は何も言えない。
「母親も、楽しそうだったな」
一拍。
「忙しいのは変わらなかったけど」
「前より、家にいる時間増えてた気がする」
「無理してたんだろうな」
ぽつりと落とす。
「俺もバイト続けてたし」
「できることはやってたつもりだった」
「……つもり、だけどな」
少しだけ、自嘲が混じる。
「夏海も、気づいてなかったと思う」
「少なくとも、あの頃は」
風が止む。
静寂が落ちる。
「ずっと続くもんだと思ってた」
優弥はそう言って、目を細めた。
「何も変わらずに」
その言葉が、わずかに空気を重くする。
「……でも」
短く区切る。
「そんなわけ、なかった」




