EP.59
流星と共に、時間も過ぎていく。矢のように流れる流星と時間に、彼らは身を任せた。
不意に、叶奈が涙を流した。その涙は、流星のように流れた。
涼太は、そんな叶奈を気遣った。
「大丈夫ですか?」
「ごめんなさい。なんか感動しちゃって……」
二人の会話を聞いたツナグが、会話に入った。
「流れ星で涙を流せるという事は、叶奈さんの心はきちんと感情で動いているという事だよ。とても、尊い事だよ」
ツナグの言葉に、林太郎と悟も言葉を発した。
「そうだね。心が豊かな証拠だね」
「そうですね。小説家に必要なものかもしれませんね。叶奈さんには、感情豊かな小説を書く才能があるのかもしれませんね」
三人の言葉に、叶奈は指で涙を拭って、笑みを浮かべる。
「なれるでしょうか? 人の心を動かす小説家に」
叶奈の言葉に、剛が言葉を返す。
「なれるさ。あんたのような人間なら、きっとなれる」
不意の言葉に、叶奈は少し驚いた後、もう一度笑みを浮かべた。
流星の雨は一際強くなった。
「わ! 大きな光!」
ツナグの言葉に、悟が笑顔で解説する。
「あれは、きっと火球でしょう。一際大きい流星を火の球と書いて、火球と言うそうです。今日は、本当にラッキーですね」
「へー!」
ツナグは、また火球が流れないかとそわそわしながら、悟の言葉に反応した。
ルイは、ただひたすら流星を見ている。誰も言葉をかけない。
ルイは、夫と見た流星を思い出しながら、今流れている流星を見ていた。
林太郎も、先ほどの会話の後、すぐにハナへと想いを馳せた。いつも笑顔の彼女が、流星のように一筋の涙を流したのは二度。一度目は、プロポーズをした時。二度目は、林太郎が悟達のいる世界に別れを告げる時だった。
「ハナが笑顔でいられますように」
林太郎は、もう一度ハナが笑顔でいられる事を願った。その瞬間、一際大きな火球が流れた。
各々が、それぞれの願いを思いながら、流星を見つめる。
矢のように流れた流星と共に、月も流れていく。気付くと、明け方になっていた。流星も見えにくくなり始めていた。
「そろそろ帰りましょうか」
悟の言葉に、全員がハッとする。
「つい見惚れてしまいました。とても、綺麗でした」
叶奈は、正直に感想を述べた。涼太とルイも同意するように頷く。
「皆と見たから、流星がいつもより綺麗に見えたよ」
「そうだな、皆と見たからこそ、より綺麗に見えたんだろうな」
ツナグが、にこりと笑う。林太郎もツナグの言葉に同意する。
「良かった」
剛の言葉に、他の全員が大きく頷いた。
「そうですね。私も感動しました。では、戻りましょうか」
悟はそう言うと、涼太の店に向かって歩き出した。それに続いて、皆がついて歩く。
その様子は、ベンケイソウのような静かな美しさを醸し出していた。
彼らの後方の空で、火球が一筋流れた。
読んでいただき、ありがとうございます。
林太郎が、ハナさんを大事に思っているんだなという事を再認識させられるシーンになりました。
叶奈が願うように、人の心を動かせる小説を書きたいものです。
このシーンを文章にしながら、改めて作品に誠実に向き合おうと思いました。
余談ですが、ベンケイソウには、静寂・穏やか・優しい心などの花言葉があるそうです。
さて、次回はいよいよ最終回となります。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
最後もお楽しみいただけますと幸いです。




