EP.58
夜が更けてきた。月の位置が高くなってきている。涼太が、立ち上がって場の空気を切った。
「さて、そろそろ流星群を見にいきましょうか」
涼太の言葉に、それぞれ頷く。
「そうですね、行きましょうか」
叶奈の言葉が合図になったかのように、全員が立ち上がった。
「楽しみだね」
ツナグが、待ちきれない様子で出入り口へ向かう。先に出入り口に辿り着いた叶奈が扉を開ける。
「叶奈さん、ありがとう」
「どういたしまして」
ツナグが礼を言うと、叶奈はにっこりと笑った。
最後に扉から出た涼太が、扉の鍵を閉める。鍵が閉まったことを確認すると、皆に声をかけた。
「お待たせしました。では、行きましょうか」
各々頷くと、涼太を先頭にして明かりの少ない河原に向かって歩き出した。
「今から行く河原は、星がよく見えるんです」
涼太のその言葉に、悟が反応する。
「確か、広い河原は周囲の明かりが減るので、天体観測がしやすいというのを聞いたことがあります」
そんな悟の言葉に、ルイが感心する。
「悟さん、貴方は本当に物知りね」
ルイの言葉に、悟は照れながら言葉を返した。
「いろいろなことを知るのが楽しくて、気付くと今の知識量になりました。でも、まだまだです」
「そうなのね。でも、今でも十分すごいわ」
「たくさん知りたくなったのは、林太郎さんの小説がきっかけです。小説を読んで、いろいろな世界を見てみたくなりました。そのために、たくさんのことを知りたいと思うようになりました。今の私があるのは、林太郎さんのおかげです」
悟の言葉に、林太郎は大きく目を見開いて驚いた。そして、すぐに微笑んだ。
「私の小説で、そんなことを思ってくれたのかい? 嬉しいねぇ。ありがとう」
「いえ、こちらこそありがとうございます」
二人の会話を聞いて、ツナグは嬉しそうに笑った。
「二人は、本を通して繋がっていたんだね」
ツナグの言葉に、林太郎が言葉を返した。
「そうだね。遺伝子だけではなく、想いも繋がっていたようだ。嬉しいねぇ」
「そうですね。私も、嬉しいです」
十分程歩くと、河原が見えてきた。河原では、天体観測に来た青年達が和気藹々と天体望遠鏡の準備をしている。
ツナグ達も、彼らから少し離れた場所で、天体望遠鏡の準備をする。
天体望遠鏡は涼太と悟が持っており、二台準備された。
「流星群なので、肉眼でも見えると思うのですが、念の為持ってきました」
悟は、そう言いながらてきぱきと準備する。
すると、叶奈と剛が声を上げた。
「あ! 流れ星!」
「あ……!」
二人の言葉に、ツナグがキョロキョロと空を見渡す。
「あ!」
流星を見つけたツナグも声を上げる。
流星が次々と流れる。まるで花火のように、パッと流れては消えていく。
「たくさんの人に愛される小説が書けますように」
不意に叶奈が、願いを口にした。続いて、ツナグも願いを口にする。
「皆の願いが叶いますように」
ツナグの願い事に、その場にいた全員が微笑む。
「ツナグは、相変わらず優しいわね。私は、そうね……。あの人が、いつまでも幸せでありますように」
ルイは、少し切なそうな表情を浮かべた。
流星はまだまだ流れていく。
「たくさんの人に愛される喫茶店になりますように」
「私は……。そうですね、ツナグさんの願いが叶いますように」
涼太と悟も願いを口にする。そして、林太郎と剛も願いを口にした。
「ハナが、いつまでも笑顔でいられますように」
「今の幸せが続きますように」
流星が、それぞれの願いを運んでいく。花火のような一瞬の光は、雨のように降り注ぐ。
「綺麗……」
叶奈が、思わず呟く。
「今年は、たくさん見られる当たりの年のようですね」
悟が、にこりと叶奈に笑いかける。叶奈は、嬉しそうに頷く。
涼太は、少し興奮した様子で言葉を発した。その言葉に対して、剛が反応する。
「今回は、水瓶座δ流星群と同じ日に山羊座α流星群も見られるとはニュースで見ていましたが、こんなにたくさん見られるとは思いませんでした」
「そうなのか」
「そうなんです。皆さんとこんなにたくさんの流星が見られて、幸せです」
「そうか……」
ルイと林太郎は、願い事を言ったきり何も言わなかった。ただただ、切なそうに夜空を見上げていた。
読んでいただき、ありがとうございます。
とうとう流れ星を見るシーンに辿り着きました。
自分の願いを言葉にする者、人の幸せを願う者、他人の願いが叶う事を願う者……。
それぞれの願いが叶うといいなぁと作者としては思います。
本来なら、願い事は流れ星が流れている間に三回言わないといけないらしいのですが、ここでは一回にしました。
物語仕様という事でご容赦ください。
続きもお楽しみいただけますと幸いです。




