EP.54
ツナグは、小鳥の鳴き声で目を覚ました。
「おはよう! 小鳥さん!」
小鳥は、「ピチチッ」と返事をした。
朝日が、ツナグの部屋に優しく差し込む。
ツナグは、大きなあくびをした。
トイレを済ませ、手と顔を洗うと、その足で林太郎の部屋へ向かった。
コンコンと、扉をノックする。すぐに扉が開き、林太郎が顔を出した。
「おはよう!」
ツナグは、満面の笑みで林太郎を見る。大好きな人の顔を見て、思わず頬が綻ぶ。
林太郎は、ツナグにとって大事な人間だった。ツナグは、林太郎のことを大事な友人だと思っている。
初めて出会った時、彗星が流れる時だけ会える一期一会の人間だと思っていた。
しかし、ほんの少しの間一緒に過ごして、大事な友人だと思うようになった。
出会った当初のことを思い出す。
いきなりこの世界に迷い込んだのに、「こんな世界があるのか!」と、太陽のように笑った林太郎の表情を、ツナグは鮮明に覚えている。
ある日、林太郎はツナグに茶色のブーツと深縹色の鉱石のペンダントを渡した。
「ツナグに似合うと思ったんだ。このペンダントはね、私が住む山で採れる鉱石のペンダントなんだ。光にかざすとたくさんの星が入っているように見えることから、星雫石と言うんだ」
そう言ってツナグを見る林太郎は、『にかっ』という言葉がぴったりの笑顔だった。
「ありがとう! 大切にするよ」
ツナグは、ブーツを履いた。ブーツはぴったりだった。
そして、鉱石を光にかざした。鉱石の中で、無数の光がキラキラと輝いていた。
「綺麗……」
「綺麗だろう? 特産品なんだ。皆は、お守りとして持っていたりもする。この石がツナグを守ってくれることを願うよ」
そんなことを話す林太郎を見て、ツナグは自分も何かしたいと思うようになった。
しかし、運命とは残酷なもので、別れは突然訪れた。
だからこそツナグは、もう会えないと思っていた林太郎が、あの時と同じ姿で自分の前にいることが本当に嬉しかった。
「夢じゃないんだなぁ……」
林太郎と言葉を交わし、剛を起こしに向かいながら、一人呟いた。
「悟さんは、林太郎に似ている。ちゃんと林太郎の血は受け継がれているんだなぁ……嬉しいなぁ……」
ツナグは剛の部屋をノックした。返事はない。
「剛さん! もし起きたら、降りてきてね! 今日の朝ごはんは、トーストとホットコーヒーだよ!」
ツナグは、扉に向かってそう声をかけると、大好きな林太郎がいるであろうキッチンへ向かう。
林太郎がいた。ツナグが声をかけようと近付くと、林太郎が寂しそうな顔で俯いていた。
その表情を見て、ツナグは胸がキュッとなった。
「大丈夫かい?」
ツナグは、林太郎に声をかける。
少し妻が恋しくなったと言う林太郎を見て、ツナグの眉尻も下がる。大好きな友が愛する妻と離れ離れであることが苦しくなった。
それと同時に、ハナというその女性とツナグも話をしてみたくなった。
花のように笑うという彼女に、林太郎のこの世界での様子を知らせたくなった。
そして、自分も仲良くなりたいという思いを抱いた。
「もしハナさんと会えたら、フリージアをプレゼントしよう。仲良くなりたい気持ちを花に乗せよう」
「どうかしたのかい?」
林太郎がツナグの言葉に反応した。ツナグは何も言わず、にっこり笑った。
ツナグは、まだ見ぬハナとの出会いを楽しみにしながら、トーストを一口齧った。
読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、ツナグ視点での林太郎との時間でした。
妻を想う林太郎と、林太郎を想うツナグのほんの少しのすれ違いが、ツナグの心を切なくさせました。
それでも、ツナグにとって林太郎は大切な友人で、笑顔でいてほしい存在なわけです。
そして、林太郎が切なそうに、それでいて幸せそうに話すハナという女性と仲良くなりたいと思うわけです。
ほんのり切ないこの時間が、これから先に幸せな未来になれば良いなと思います。
ぜひ、続きもお楽しみいただけますと幸いです。




